英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

リオデジャネイロ五輪  「気持ちで挙がるものなんだな」(ウエイトリフティング・三宅宏美)

2016-09-04 12:35:26 | スポーツ
 ボクシングや柔道などの格闘技は、痛いから嫌だな(柔道なんて、最初に“受け身”から始めるし…)。
 ラグビーは身体が壊れそうだ。ホッケーはボールが固すぎるし、いつも腰を曲げてプレーするのはきつそうだ。サッカーは、走る距離の割にはボールに触れる時間が短すぎる……

 ……などと、ケチをつけるが、その競技の面白さは理解できる。
 私も「なぜ、陸上競技を?」と尋ねられたことがよくあったが、100mなら他の選手より前で走る快感、長距離ならスパート(ロングスパート、ラストスパート)が決まった瞬間の快感は忘れられない。記録を短縮する喜びもあるが、何より、走ることが好きだった。


 しかし、面白さを想像しにくい競技もある。その筆頭に位置するのが、ウエイトリフティングだ。
 腰は痛めそうだし、持ち上げる(差し上げる)瞬間は、こめかみの血管が切れそうだ。鎖骨も痛そう。
 特に、女性の場合、足(腿)や腕は太くなるし、≪いったい、何故、ウエイトリフティングを?≫と思ってしまう。

 でも、五輪中継で、彼女らの試技を見ていると、何となく、理解できる。
 筋力、技、タイミング、気力などが、すべて合致しないと、バーベルを差し上げられない。
 そして、それらが合致して、差し上げられた瞬間は、バーベルの重さが半減したように感じられるのではないだろうか。成功試技の彼女らの顔は笑みがこぼれる。達成感や記録(成績)の喜びもあるが、すべてが合致してバーベルがスッと上がっていくのが、とてつもなく気持ちよいのだろう。あるいは、心技体が一致した無我の境地へ到達した快感かもしれない。

【競技メモ】Wikipediaより
 種目は「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」の二つがあり、それぞれ3回ずつの試技を行い、各種目の最高挙上重量の合計(トータル重量)で順位を決める。ただし、いずれかの種目、もしくはどちらの種目でも3回連続で失敗するとトータル記録は0kgとなり、失格となる。

 「スナッチ」……両手による引き上げ競技。地面に置いたバーベルを頭上へ一気に引き上げ、立ち上がる。
 「クリーン&ジャーク」……両手による差し上げ競技。地面に置いたバーベルを第1動作(クリーン)で肩まで引き上げて立ち上がり、第2動作(ジャーク)で全身の反動を使って一挙動で頭上へ差し上げる。略してジャークとも呼ばれる。


 このリオ五輪は、三宅選手は苦しんだ。
 腰のヘルニアで思ったような練習ができなかったうえ、五輪間近になっても回復せず、当日は痛み止めを打って試合に臨んだ。
 最初の「スナッチ」では、2回失敗し、3回目も失敗すると記録なしの「失格」となってしまい、次のジャークに進めない。

(PCにキャプチャー機能がないため、テレビ画像をスマホで撮ったものをデータ圧縮しています。画像が荒いのはご容赦ください)

 バーベルを一気にに引き上げ、それを支えるため腰が沈む。引き上げが不完全なため、重心が前寄りとなり膝が下がる。


 最大に膝が下がった瞬間。向こう脛から膝が床に付きそうになり、腰も下がり臀部も接地寸前。


 踏みとどまり、体勢を立て直し、



 立ち上がっていく。


 普通、何も持たない状態で、あそこまで腰が落ち、膝が下がったら、そのまま前に倒れ膝をついてしまう。
 それを81kgのバーベルを支えながら立て直すとは!……信じられない現象を見た。

 「気力だけで成し遂げられるなら、苦労はしない(肉体や技が伴ってこその高レベルの試技)」という理論が揺らいだ瞬間だった。 
 …………≪気持ちで挙がるものなんだ≫

 と言っても、推測だが、「思いバーベルを支えていたから重心が体の軸付近にあり、踏みとどまることができた」のかもしれない。綱渡りの時に、長い竿を持つのと物理の応用で、これと共通するものがあると考えられる。
 ウエイトリフティングには、引き上げる筋力、支える筋力が必要だが、最も大事なのは、“如何にバーベルの下にしっかり体の軸を持っていくか”なのではないだろうか?
 バーベルを差し上げたまま立ち上がるのは至難の業だと思うが、その途中で笑みを浮かべる選手が多かった(画像の三宅選手もそう)。やはり、最初の動作(バーベルを引き上げ頭上で支える)が肝心なのかもしれない。


 スナッチを終え、81kgで5位。
 ジャークは1回目、105kgを成功。しかし、2回目の107kgは試技の途中で、ファールを取られ失敗(肘に関するファールと思われる)。
 3回目の107kgに挑む時点で、これを成功しないと銅メダルに届かないという状況だった。2回目にファールを取られたという不安もある。


 見事にクリア! 銅メダル!

 ちなみに、父の三宅義行氏(メキシコ五輪の重量挙げフェザー級で銅メダリスト。伯父の三宅義信はローマで銀、東京・メキシコで共に金メダルを獲得)は、スナッチの時は黄色のTシャツだったが、ジャークの時は“勝負服”の赤のTシャツに着替えていた。
 練習場所が台所の親子鷹。4度目の五輪、ロンドンの銀メダル獲得後の故障続きの娘の苦しむ姿。すべてが心に浮かんだのかもしれない。嬉しそうだった。


【実況・解説の不満】(ダイジェスト放送しか見ていないので、生中継時と違うかもしれません)
・三宅選手の過去(五輪や世界選手権)の記録、最近の記録を紹介してほしかった。スナッチの81kgというのは想定内の記録だったのか?いつも、ジャークで挽回していたのか?などの説明がほしい。
 他の選手の実績、タイプについての情報も欲しかった。
・三宅選手のジャーク2回目の試技のファールについての情報が欲しかった。
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