英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

不滅のあなたへ

2021-09-01 14:33:39 | アニメ
「それは、初め、球だった。
ただの球ではない。ありとあらゆるものの姿を写し取り、変化することができる。
私はそれをこの地に投げ入れ、観察することにした」


 訳の分からないナレーション(言っている言葉は理解できるが、どういうことなのかよくわからない)から始まった。このナレーターは、後に"観察者”として主人公フシに助言(補助的説明や問いかけや今後の行動の指針を示唆)を与える

 この球体は石を姿を写し取り石に姿を変える。その後、苔となったが、そのまましばらくはその状態で時が経つ……そして、瀕死の狼が近づき、力尽きたところで、主人公の物語が動き始める。
 最初のナレーション通り、主人公は姿を写し取り、そのもの成ることができるらしい。生物(せいぶつ)の狼となって、主人公は自我を持った。
 オオカミとなった主人公は、オオカミの飼い主(友達?)の少年の元にたどり着き、少年と過ごす。少年と過ごし、人の感情や温かみを感じるようになったが、その少年も死に(ケガによる感染症の悪化)、少年の姿を写し取り、少年のあこがれた広い世界へと旅立ち、いろいろな者と関わり、成長していく……


【主人公の特性】
・他の者の姿をコピーし、そのものに変身できる
・コピーできるのは、自分と関わった者で、命を落とした者に限る。その死に対面したり感じ取った時の限定だと思ったが、パロナ(ニナンナ地方の娘、マーチとともに主人公フシに深く関わった)に変身したときは、彼女が死んだことさえ感知していなかった。
・被コピー者の記憶は継承しないが、跳躍力など肉体的ポテンシャルは受け継ぐ
・アニメではジャナンダ島編を第1部として描かれている(多少、省略があるようだ)。ここまででコピーしたのは、オオカミ、少年(フシの基本形)、オニグマ(大白熊)、マーチ、グーグー、パロナ
・過去に触れた物のなら、再生することができる。果実などの食べ物なども再生でき、食しても害はなく、味もそのままで空腹も満たされる。矢などの武器も無限再生できる。非常に便利な機能である
・名前の通り、不死。ケガをしても再生できるが、たとえ、(瀕死ではなく)命を落としても、蘇ることができる

………と、例によって、長々とした前置き(イントロデュース)になってしまった。ここら辺りで止めないと、大変なことになってしまいそうだ(笑)


感想
 フシがいろいろな者と関わりを持ち成長していく。また、不死と関わった者も感化され変わっていくストーリーは面白かった。
 主要人物についての感想を簡単に

マーチ(ニナンナ編)
 ヤンチャで感情豊かで前向きな幼女。人としての核は少年から受け継いだが、人間としての基本(会話や人を思いやる言葉)はマーチから学んだ大人になることを夢見ていたが、オニグマの生贄に選ばれてしまう。オニグマはフシに倒され、生贄の儀式を取り仕切っていたヤノメ国のハヤセにヤノメに連れていかれる。そこから脱出の際、パロマの身を庇い、絶命。
 マーチがフシと共に生き成長していくと思っていたが、驚愕の展開。マーチの敵を討つため、ハヤセのとどめを刺そうとするパロマを幽霊の状態で必死に止めようとする。大人になる夢が断たれたというのに、死んだ後もパロナのことを思いやる姿は泣けた。(マーチの願いを受け止めたフシが、パロナの行動を止めた)

パロナ(ニナンナ編)
 マーチを妹のように可愛がっていおり、生贄から何とか救おうと頑張る。弓矢をはじめ、格闘ポテンシャルは高い。
 最終的にマーチを救うことができず、マーチの両親に彼女の死を告げる辛い役目も果たす(「元気だよ」という彼女の手形の手紙も渡す)。
 その後、フシが窮地に陥った際、パロナの姿に変身する。(パロナはハヤセに首を刎ねられたらしい)
 もしかしたら、フシと再会するシーンがあるかもと思っていたが、残念。悲しい。

ピオラン(ニナンナ編~ジャナンダ島編)
 マーチを生贄に選んだ祈祷師だが、実は罪人で祈祷師役をしていただけ。
 端役だと思っていたが、フシに知識などを教えるのをはじめ、フシの成長に深く関わった。
 アニメの最終盤、フシがピオランに再会するかどうか悩む(自分がそばにいると、宿敵ノッカーとの戦いに巻き込まれるのを恐れた)。見兼ねた?観察者が言葉を掛けてしまうのは笑えた。
 最期は認知症に陥ったが、死期の際、観察者に「フシを助ける存在にしてほしい」と願い、観察者も了解した。今後、再登場しそう。

ハヤセ(ニナンナ編~ジャナンダ島編)
 生贄の儀式を取り仕切ったヤノメ人。
 オニグマと戦うフシの不思議な力に魅入られ、ジャナンダではフシを手に入れるため画策する。
 行動も性格のどんどん人間離れしていき、ジャナンダ島編の最後に、ノッカーに寄生され、その後、どこかの住人を襲ったシーンが描かれた。

グーグー(タクナハ編)
 思い人のリーンに直撃しようとした丸太から庇ったため、大けがを負う。酒爺によって命は取り留めたものの、顔は原形をとどめないほど損傷し、仮面をかぶって生活している。
 兄の裏切りや大けがなどの逆境にもめげず、強く生きる。
 ピオランが連れてきたフシとは親友となり、共にノッカーと戦う。リーンとの恋はかなうが、彼女を庇って絶命。……悲しい。

リーン(タクナハ編)
 両家の娘で、やや我が儘で世間知らずだが、優しい少女。
 顔を激しく損傷しているグーグーを厭わない優しい娘。いい娘だ。
 自分を助けてくれたのがグーグーと知ったが、その以前から、グーグーに恋心を持っていたようだ。しかし、グーグーとの思いがかなった直後、グーグーが自分の命を庇って命を落としてしまう……悲しい。

酒爺(タクナハ編)
 ピオランの恋人。酒屋を営んでいるが、研究家や発明家でもある。“酒爺”と言うがごとく、お酒が大好き。
 瀕死の重傷のグーグーを助けた。グーグーの腹部を酒が貯蔵できるように改造。さらに、自由に火炎を放射できるよう改良?

トナリ(ジャナンダ島編)
 罪人の島、ジャナンダの住人。 妻殺しの容疑を掛けられた父と共に島に送られていた。
 過酷な過去にもめげず、小説を書く夢を果たすため島から脱出しようと、フシを利用しようとしたが、心を許し、フシに協力する。
 5人の少年少女たちのリーダー的存在で、ノッカーの戦いで生き残ったサンデルと共に島の統治に努める。

ミア、ウーパ、サンデル、ウーロイ(ジャナンダ島編)
 トナリと共に行動する少年、少女たち。
 サンデル以外のミア、ウーパ、ウーロイはノッカーとの戦いの際、寄生され死亡。
 ウーパが最初に寄生され、ウーパを助け起こそうとしたミアがウーパに槍で突かれ瀕死の重傷。この時、ウーパの自我は残っていた。
 ウーロイはわが身を犠牲に、トナリやサンデルを逃がす。
 寄生された姿でフシと対峙するという悲劇的シーン。その前の、ウーパ、ミア、サンデルがやられていくシーンも含めて……悲しい。


 《フシは自分と関わった者の死を通して成長していく》という設定なので、悲しいシーンが次々とやって来る。
 でも、過酷な状況や悲劇を強い作為を以って劇的に演出するので、観るのが非常に辛い。




疑問 
 フシがいろいろな人と関わり、多くの死に対面し、成長していく。第1部は長く共にしたピオランとの別れを以って、一区切りとして終了。
 不死の物語としては良かったが、『不滅のあなたへ』というストーリーとしては、非常に不完全燃焼だった。


1.不死の存在の意味、観察者の意図が不明
 冒頭で紹介した
「それは、初め、球だった。ただの球ではない。ありとあらゆるものの姿を写し取り、変化することができる。
 私はそれをこの地に投げ入れ、観察することにした」
という言葉からすると、実験・観察の意図しか感じられない

2.ノッカーについてもよく分からない
 アニメの第6話から登場したフシの敵。
 フシを襲い、その中で、フシが得ていた姿や能力やコピーしたものに関する記憶を奪う。
 ①フシを倒すことが目的なのか?②フシが得た姿などを奪うのが目的なのか?③観察者の邪魔をしたいのか?

 観察者の気まぐれで生まれたようなフシなので、ノッカーの目的が①や②とは考えにくい。
 ③も「なんだかなあ」……唐突に登場した感が強いノッカー……作者の思いつき?
 まあ、ノッカーに関しては、今後、明らかになっていくのだろう。

3.初期に登場した少年の状況に疑問
 かなり過酷な極寒な環境。そんなところに少年を残していく大人たちって、あり得ない(少年の他にも一緒に残った人もいたようだが)
 結局、他の住人たちも頓挫してしまったようだが(誰も少年の元に帰ろうとしなかったのだろうか?)、ここまでの描写だと、この世界は人が住まない雪原や荒野が広がるのみかと思ったら、違った。(ヤノメ国やタクナハ村などかなりの文明が発達していた)
 とにかく、過酷な環境下で少年一人で生き抜くという悲しい設定で、夢見ていた楽園に到達することは叶わず、オオカミ状態のフシにしか見られず、息絶えていくのは……悲しい。

4.都合の良い設定や展開
・パロナの死をフシが察知しなかったが、姿や能力などをコピーして変身できたこと
・過去に触れて痛さを感知できたことのあるものを再生する能力
・フシたちが幸せになれそうなタイミングでノッカーが出現(出現から次の出現まで、ノッカーは何をしているのだろう)


 ストーリー全体としては疑問点が多いが、1話ごとの話は非常に面白い。
 第1部は謎を残したまま終了。第2部は2022年秋とのこと(遠い未来だ…)
 でも、原作を知っている方、今後のストーリーのネタバレはご勘弁願います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする