英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2018竜王戦第5局記事「め、眩暈が…」の補足 ~▲7一金打の周辺~

2018-12-06 23:17:24 | 将棋
(局面図の手数表示が間違っています。ご容赦ください)
前記事の補足です。

 驚愕の▲7一金打だった。

 極めて筋悪の一段目の金打ち。
 “一段目の金打ち”と言えば、第72期名人戦(2014年) 第4局(対森内名人)が思い出されるが、それよりも異筋感が強い。(そう言えば、今期竜王戦第3局も2段目ではあるが、玉の尻から金を打つという筋悪の寄せをしていた)

 前記事では、
『飛車取りの先手で後手の飛車の利きを遮り、▲3一角(王手角取り)や▲5一角を見た手だ。
 しかし、▲7一金打に△8七飛成と飛車を切り、▲同金に△2八飛と王手され、▲7八歩に△2一飛成とされると、

 手順に先手の狙いの▲3一角を防がれ、先手は飛車が手に入ったとはいえ、銀桂との2枚換えで先手玉の守備も弱体化。7一の金の空振り感が強い。
 変化図はまだ先手に分のある局面かもしれないが、時間と思考の消費が空振りしたマイナスが大きく、第3局、第4局の逆転負けの再現の悪い予感しかしなかった。』
と記した。

 ところが
私がよく勉強や検証させていただいている『元奨励会員アユムの将棋実況』(YouTube)さんの解説動画で、この▲7一金打の周辺変化が掘り下げられていた。
 アユム氏の検証によると、
▲7一金打に△8七飛成と飛車を切って▲同金に△2八飛と打ち込む手には、▲3八飛と合駒をする返し技があるとのこと。


△2一飛成と桂を取る手に▲3三角と打ち込み、△同銀▲同飛成△4一玉と進む。

 次に△8六歩や△9五桂という手があるので、先手は▲5二金と切り込むことになる。
△5二同玉は平凡に▲5三銀△同角▲同桂成△同玉▲5四銀で寄るので、▲5二金には△5二同銀の一手となり、ここで▲4四龍が王手角取りになる。

 後手も△4二角と受ける手があるが、更に▲3三桂と打つ手が王手龍取り!
 仕方ない△5一玉に▲2一桂成と龍を取って簡単に先手の勝ちかというと、△8六歩と打たれるとけっこう難しい。

 私が当事者ならパニックに陥りそうだが、強く▲8六同金が好手。△同角に▲6二銀の捨て駒が巧手!

 △4一玉は▲3一飛の一手詰みなので、△6二同玉と取るが、▲8二飛の王手が好便。
 △7一玉と金を取りつつ逃げると、▲7四龍以下の詰み。

 そこで△5一玉と逃げることになるが、一旦▲6二銀△4一玉と追いやって▲8六飛成と角を取る手が決め手となる。

 間接的に龍が玉を睨んでいるので、▲8六飛成に△同角とできず、先手勝勢。



 とすると、前記事で私が嘆いた筋悪の▲7一金打は、深い読みに裏付けられた巧手ということになるが……
 変化図2に戻って

 ▲3八飛に平凡に△同飛成と取るのはどうなのか?

 以下、▲3八同金△5八飛が悩ましい。

 ▲7八歩は△5五角▲7七桂に△4五銀と上部を厚くすると、後手玉の耐久力は上昇する。

 また、△5八飛に▲7八飛と強く応じても、△同飛成▲同玉△5八飛▲6八飛に3八の金や2一の成桂を取ることに固執せず△5五飛成と成り返られると、やはり先の長い戦いになりそうだ。



 まとめると、▲7一金打に△8七飛成▲同金△2八飛に▲7八歩△2一飛成の変化図も

 △2八飛に▲3八飛に△2一飛成と成桂を取らずに△3八同飛成として、▲同金に△5八飛と打てば、▲7八歩や▲7八飛に対して進んだ変化図11、変化図12の局面は、厳密には先手が若干良いかもしれないが、実戦的には逆転ムードなのではないだろうか?


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め、眩暈が……(2018竜王戦第5局)

2018-12-05 20:53:27 | 将棋
(局面図の手数表示が間違っています。ご容赦ください)

 第1図は、先手の羽生竜王が▲4五桂と後手玉の逃げ道を塞ぎつつ3三の打ち込みを見た手に対し、一旦、△8七歩成▲同銀を決めてから△4四銀と受けた局面。
 控室では▲3四歩、▲5二金(多分最善手)、▲7二角、▲3一角などが検討されていたが、羽生竜王の次の一手に、目を疑った!


 棋譜中継で、手が進んだときの駒音がしたので、モニターに視線を移したが、暫く何が指されたのか、理解できなかった。
 ▲7一金打!……眩暈がした

 通常、1段目に金を打つのは効率が悪くて(金は斜め後ろに利きがない)、悪手になることが多い。
 しかも、6二の金がいる状況で更に7一に金を打つのは、“効率の悪さの2乗”でおぞましささえ感じてしまう。さらに、後手玉が8一や9一に居るのならまだしも(それでも、抵抗を感じる)、現状は4二でいかにも“そっぽ”。


 もちろん、羽生竜王が終盤の貴重な24分を投入して指した手(残り時間は31分となった)、深い思惑があるのに違いない。
 飛車取りの先手で後手の飛車の利きを遮り、▲3一角(王手角取り)や▲5一角を見た手だ。
 しかし、▲7一金打に△8七飛成と飛車を切り、▲同金に△2八飛と王手され、▲7八歩に△2一飛成とされると、

 手順に先手の狙いの▲3一角を防がれ、先手は飛車が手に入ったとはいえ、銀桂との2枚換えで先手玉の守備も弱体化。7一の金の空振り感が強い。
 変化図はまだ先手に分のある局面かもしれないが、時間と思考の消費が空振りしたマイナスが大きく、第3局、第4局の逆転負けの再現の悪い予感しかしなかった。

 実戦では、広瀬八段は△5五角と王手で角を避難させ、▲7七歩に△7一飛と飛車を切り▲同金と6二の金をそっぽに行かせ、△4五銀と後手玉の可動をを制していた4五の桂を外した。

 このやり取りも後手が随分得したように思えるが、その直後、▲3一角△3二玉に▲2二飛が幸便の手となり、先手の優勢が持続した(第4図の▲2二飛は“この一手”に思えたが8分も考慮していて、非常にヤキモキした)。
 この▲2二飛も△3三玉とかわされると重複感が大きいが、▲5二飛成△同銀▲2二角成△4三玉▲5五馬(第5図)と銀一枚得しながら要所に馬を配置する事が出来た。
 ▲2二飛には△3三玉ではなく、△2二同角▲同角成△4二玉としたほうが良かったかもしれないが、やはり先手が優勢だろう(勝ち切るのはまだまだ大変)


 戻って、

 第2図から△5五角▲7七歩の時、△7一飛ではなく△8七飛成▲同金に△2八飛とする手もありそうだが、これには▲7八歩ではなく▲5八飛があるようだ。以下、△2一飛成には▲5五飛がある。




 この第5図は先手がかなり優勢で勝勢に近いように思える。
 しかし、具体的に後手玉の寄せが見えず、勝ち方が分からない。
 しかも、羽生竜王の残り時間はこの時点で13分とわずか(広瀬八段は1時間2分)。第3局、第4局の逆転負けが脳裏をよぎった。

 実際、広瀬八段も、先手玉にちょっかいを出したり自玉に手を戻したり、手順を尽くして“嫌がらせ”(笑)を実行。本局の勝利への道は細くて先が見えにくいので、並の棋士なら崖から落ちたり、密林に迷い込んでしまうだろう。
 最近の羽生竜王も終盤の足取りが腿路持たなくなることが多いので、非常に心配だったが、本局は確実に対応し、急所を突く歩使いが冴え、三勝目をものにした。
 以下は、ポイントとなった図を挙げるに留めます。


 △9五桂の馬取りに、▲9六馬と桂取りの逆先で後手の攻めを急かす(少し前の▲4六歩の突き出しも効いている)


 ▲3五歩は後手玉の上部脱出を阻止しつつ、3四への打ち込みも見ている。


 放置できない銀取りだが、△5三同玉は8六の馬の射程に入り、△5三同玉には▲6一角が厳しい。




 難解な序中盤を乗り越え優勢に。しかし…
 あの▲7一金打……羽生竜王しか打てないだろうなあ
 最後は圧勝の形になったが、心臓に悪い将棋だった。
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2018叡王戦 菅井七段ー羽生竜王 戦

2018-12-01 23:34:43 | 将棋
 夕方から観戦。
 解説者の山崎八段、藤井聡太七段によると、やや菅井七段が良いらしい。
 羽生竜王の9筋の端攻めを逆用して羽生の堅陣の裏を突く攻めが急所を突き、優勢を拡大したかに見えたが、羽生竜王の頑強な抵抗に菅井七段が誤り、優劣不明に。
 そんな流れの中の第1図。2一の金、2二の桂が苦闘の跡。

 ▲5五角の3三への打ち込む寄せを防いだ△4四香に対し、▲4五歩とその香を攻めた局面。

 ここで羽生竜王は、4筋の攻めを放置して△1八歩と寄せに出たが、

 ▲4四歩△同歩(手を戻さなければならないのが痛い)▲4三歩△2六銀▲4二歩成△同金▲3九玉と進んだ第3図は、後手は香と金をぽろぽろ取られる間に先手玉に迫ったはずだが、▲3九玉とかわされてみると、1八の歩が置き去りにされた感が強い。


 おそらく、△1八歩が敗着。
 表現が適切か分からないが、△1八歩は“薄い寄せ”。対して先手の歩で攻める“効率がよく厳しい寄せ”。

 △1八歩では△1六香のほうが良かったのかもしれない。あるいは△8五飛も有力(一見、△5二香の方が効率が良さそうだが、5五の角を取った時5五の飛車が5段目に利くのが大きそう)

 羽生竜王は時間が切迫していたのが痛かったが、感想戦でも△1八歩に拘っていた。やはり、寄せの感覚が……
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