なにごとの おはしますかは しらねども かたじけなさに なみだこぼるる
12世紀の歌人、西行法師が伊勢神宮を訪れたときに詠んだ歌とされます。伊勢神宮にお参りしたことのある人なら誰しも、自身の神道信仰の有無とは関係なく、おごそかな気持ちにさせられる経験をお持ちだと思いますが、まさにそうした気持ちを歌にしたものでしょう。
とはいえ、いかに仏教に帰依する法師といえども、伊勢神宮にどなたが祭られているか知らなかった、ということはないと思いますので、冒頭の三句は、自分をここまで荘厳な気持ちにさせるものは何なのか、その本質的な正体(?)はわからないけれども、くらいの意味でしょうか。
明治天皇の御製に
めにみえぬ かみにむかひて はぢざるは ひとのこころの まことなりけり
という歌があるそうですが、この両方の歌には相通ずるものがあるのかもしれません。
(明治天皇御製は、「めにみえぬ かみのこころに かよふこそ ひとのこころの まことなりけり」 という資料もあるようです。)