漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

28-3 振り返り その2

2017-02-11 14:02:30 | 本試験
 続いて後半です。



(五)熟字訓・当て字  10/10点

 無事にフルマーク。10問中8問が過去問ですし、【吾木香 われもこう】 は知らなくても読めそうですから、易しかったということでしょう。ところでこの「われもこう」ですが、「辞典」では 【吾亦紅】 は熟字訓とされていますが、今回出題の 【吾木香】 は熟字訓でないのは良いとして、当て字扱いもされていません。「辞典」冒頭の「この辞典の決まり」に、「日本語に漢字の音訓を当てた語のうち、本来の音訓では読めない語はこれ(当て字)に含め、・・・その音訓で読める語は含めなかった」とあり、【吾木香】 はこの方針に従って当て字とはしていないということでしょう。「辞典」で当て字扱いしていない語が「熟字訓・当て字」の問題として出題されたということで、24-2・28-2 で出題された 【儒艮 じゅごん】 と同じパターンですね。当て字ではないと自ら言っているのですから、(五)ではなく普通の読み問題として出題すれば良いのではないかと思いますが、漢検にいくつかある「不思議」の一つです。他の問題では、 【魚狗 かわせみ】 は普段の学習で結構間違えてしまうのですが、今回はきちんと読めました。良かったです。



(六)熟語の読み・一字訓読み  10/10点

 今回もフルマークでしたが、このところ「熟語の読み」の方で、あまり馴染みのない言葉の出題が多い傾向が続いているように思います。ただこれが「難問なのか?」と言われると、基本的には個々の漢字の音がわかっていればほぼ正解できますから、何とも言えません。
 「一字訓読み」の方は普通の訓読み問題で出されたものも含めると、「倩(うつく)しい」以外は過去問ですね。なので結論だけ言うと、一見とっつきにくそうな設問ですが、合格のためには、ここは 9 点ないし 10 点を取りたいところです。



(七)対義語・類義語  12/20点

 4問誤答と玉砕。今見るとその内2問は正答できても良かったかなと思いますが、まさに取らぬ狸のなんとやらですね。しかしここの設問は難しい出題が続いていますね。

1  曩祖 ⇔ 【苗裔】
 26-2 の過去問ですが、それより前、25-1 では、語選択・書き取り問題としても出題されています。ぜひ正答したいところ。

3  盈満 ⇔ 【虧欠】
 知らない熟語ではありましたが、【盈】 に対して 【虧】 が思いつかないという情けなさ。実は 27-1 の語選択・書き取りでも 【盈虧】 を誤答していて、何やらこの熟語との相性が悪い感じです。普段は何ということもなく書けるんですけどねぇ。

6  恐惶 ≒ 【畏憚】
 正解を見れば「なるほど、そりゃそうだ」という感じですが、試験中は浮かばず。

8  天河 ≒ 【銀漢】
 これも直接は知らなかったのですが、【河漢】 は知っていたのですから思いついてしかるべきした。残念。

10 元朝 ≒ 【鶏旦】
 これはお手上げでした。



(八)故事・諺  20/20点

 自己採点通りなら初めての満点です。ただ、問題もかなり易しかったですね。以下の「3」「7」以外はすべて過去問でしょう。

3  コウリョウ 雲雨を得。   【蛟竜】
 故事・諺としては新出だと思いますが、【蛟竜毒蛇】 という四字熟語もありますから、「コウリョウ」から 【蛟竜】 は浮かびやすいでしょう。

7  クドウ を行く者は至らず。   【衢道】
 何で見たのか覚えていませんが、自作問題集にありました。

9  性は猶 キリュウ のごとし。   【杞柳】
 25-3 で出題されたとき、もちろんできなかったのですが、「次は『性は猶湍水のごとし』が出るかなぁ」などと思っていたことを思い出しました。でも今回も 【杞柳】 の方でしたね。(笑)



(九)文章題   26/30点

1 シュウコウ 錦心の士   【繍口】
 知らない言葉でしたが、「錦心」と対の2文字だろうと当たりをつけて絞り出し、無事正解。あまり自信はありませんでしたが、やはり試験ですから、知らなくてもあきらめずに何か書くべきですね。

3 テン として羞じず   【恬】
 少し前に 「テンゼン = 靦然」 がなかなか記憶に定着せずに何度も眺めていたのが禍して、「靦」 以外の字がまったく浮かばず。「靦として羞じず」 では、「恥じて恥じない」で意味不明ですね。(汗)

4 レンチュウ の窈窕   【簾中】
 初め、「連中」以外の熟語が思いつかずに焦りましたが、文章を何度も読み返すうちに意味がわかり、無事に正解。

5 ヨミ する   【嘉】
 あえなく撃沈。こういうのは難しいですね。

 読み問題はすべて正答でした。良かったです。



 以上で一通りです。前回に続いて「自分にとっての既往問題」をいくつも落としていますが、これが現実ですね。

 全体としては、過去問と1級四字熟語をきっちりやっていればかなりの確率で合格できる問題レベルだったように思いますが、初合格を目指した皆さんの手応えはいかがだったでしょうか。良い知らせをお待ちしております。


 これで今年度の漢検もお仕舞ですね。6月の第1回が仕事で受検できなかったので私自身は2回だけのチャレンジになりましたが、どうやら2回とも合格を確保できたようですので、まずは良かったです。来年度、大学院の授業はもちろん、久しぶりの日本語検定にも気持ちが動きます。他にやりたいこともあるので少し漢検はお休みしようかなどと思わないでもないですが、結局やめられないんだろうなぁ・・  いずれにしても当面は少しのんびりしたいと思っています。もちろん、このブログは細々と続けていきますので、気が向かれた際にはまたお立ち寄りください。


 よろしくお願いいたします。



28-3 振り返り その1

2017-02-11 10:11:47 | 本試験
 今現在、私のスマートフォンの気温表示はマイナス1度。実際にそこまでは低くないように思いますが、冬らしいひんやりとした静かな土曜日です。

 私にしては少々遅い目覚めでしたが、起床してさっそく 28-3 全体を確認しましたので、いつもの通りの振り返りをしてみます。受検当日に感じた、対義語・類義語が難しく、それ以外は易しいとの印象は変わっていません。特に(一)の音読み問題は非常に易しかったのではないでしょうか。全体としては前回並みか、少し難しかったかという感覚でした。



(一)読み  29/30点

 前回も同じようなことを書いたのですが、今回も(一)で初めて満点を取る絶好のチャンスでした。「でした」と過去形で書かなければならないのが情けないですね。 ^^;

 音読み問題の過去問を辿っていくと、【卓犖】 【粉齏】 【蜑戸】 【棺椁】 【淹留】 【泛駕】 【冪冪】 【舟楫】 【嶷然】 【淤塞】 【狃習】 と11問が見つかります。これ以外でも、【黝然】 は 【黝藹】 が 27-1 で、【磔罪】 は 【磔殺】 が 24-2 で出されていますから実質的には過去問でしょう。【詒謀】 は知らなくても 23-2 の 【貽謀】 から推定可能。【蟾蜍】 は1級四字熟語にありますし、【嚼蠟(蝋)】 は 【咀嚼】 が読めれば読めます。ということで、個人的には今回の音読みは非常に易しく感じました。その中では、【芸帙 うんちつ】 と 【黐粘 ちでん】 が少々読みにくかったでしょうか。

 一方訓読みですが、過去問そのままというのは、最後の 【徇う】 のみのようです。「とな・う」か「したが・う」か迷わせる意図と思われる出題ですが、過去、「したが・う」が1度(22-2)、「とな・う」が2度(24-1、25-3)出されています。今回は問題文も 25-3 とまったく同じでした。

 で、私が今回唯一間違えたのが 【衊(血+蔑)す  けが・す】。手元の自作問題集にももちろんあり、普段の学習で間違えた記憶もほとんどないのですが、なぜか出て来ず。最近、このようなケースが結構多いです。年齢的なものかなぁ・・・(汗) 「自分にとっての既往問題をきっちりと正解する」ことを最大の目標として漢検に取り組んでいるにもかかわらず、この問題を落としての 29 点とは実に悔しい限りですが、本試験での結果こそが実力ですね。



(二)書き取り  36/40点

 調べた限りでは、全20問中過去問が16問。それ以外で、【盥嗽】 も過去問にあった気がして仕方がないのですが見つけられませんでした。デジャヴかな?

 誤答したのは次の2問です。

13 自ら ガチュウ を執って・・・   【牙籌】
 【牙籌】 とは「そろばん」とか「計算」とかの意。試験中はまったく何も思いつかずのお手上げ状態でしたが、正解を見ると学習した記憶がありました。ただ、自作問題集にはありませんでしたので、どこで見たのか不明です。リピーターさんのブログかな?

16 ・・和漢の カンソウ を誦習した   【翰藻】
 これも何も思いつきませんでしたが、「辞典」を見てみたらこの項目は読んだ記憶がありました。読んでいたら、すぐに自作問題集に採録しそうな熟語なのですが、なぜかそこにはなし。ちょっと不思議です。



(三)語選択・書き取り  8/10点

4  分を越えて欲すること   ひぼう   【非望】
 「どんらん」はひっかけで「ひぼう」だろうと思ったまでは良かったですが、如何せん 【非望】 という熟語を知らず。確か「匪望」と書いたのですが、結構惜しい?(笑) 例によって「辞典」を通読・渉猟していないための穴なので、個人的には致し方のないところ。これ以外の4問は易しく感じました。



(四)四字熟語  28/30点

 これまた「例によって」ですが、下位級配当から出題の 【流連荒亡】(4級配当)がわからずに 28 点。同じく4級配当の 【金声玉振】 の方は過去問なので学習済みでした。問1では、【流連荒亡】 の他に 【折檻諫言】 【影駭響震】 【旁時掣肘】 がおそらく新出。5回、6回と出題されている超頻出語(【偕老同穴】【造次顛沛】など)の一方で新出が4問と、両極端の出題でした。問2で正解となった5つの熟語の内の4つも新出だと思いますので、過去問だけの学習では少し厳しい出題だったと言えるかもしれません。
 今年度から形式が変わって読みが問われるようになりましたから、問2で新出の問題がその後問1で書き問題で問われるというような流れが出てくるのかもしれませんね。



 ここまでで合計 101 点。この通りなら、表面としては自己最高の結果になります。正式結果はどうなるでしょうか。

 後半に続きます。