かぜふけば おきつしらなみ たつたやま よはにやきみが ひとりこゆらむ
風吹けば 沖つ白波 たつた山 夜半にや君が 一人越ゆらむ
よみ人知らず
風が吹くと沖の白波がたつ、その「たつ」の名がついている竜田山を、夜中にあの人は一人で越えているのでしょうか。
この歌には長い左注がついており、要約すると、「男は、別の女のもとに通うようになったが、妻がそれを不快に思う様子もないので逆に妻の浮気心を疑った。そこで別の女の所へと行くふりをして隠れて妻の様子を伺ったところ、妻がこの歌を詠んだので男は感動し、別の女のもとへは通わなくなった。」とのこと。伊勢物語、大和物語にも収録されている歌です。