さかしらに なつはひとまね ささのはの さやぐしもよを わがひとりぬる
さかしらに 夏は人まね 笹の葉の さやぐ霜夜を わが一人寝る
よみ人知らず
分別がありそうに装って夏は人の真似をして独り寝をしていたが、笹の葉がさやさやと鳴る冬の霜夜に、私は本当に寂しく独り寝をしている。
「さかしら」は「賢しら」で利口ぶること。夏には利口ぶって人まねで独り寝をしていたが、寒い冬になって今は本当に寂しい独り寝をしている、という歌ですね。「笹」は「霜」と一緒に詠まれることの多い語で、古今集でも 0563、0663 にそんな歌があります。
(0563)
ささのはに おくしもよりも ひとりぬる わがころもでぞ さえまさりける
笹の葉に 置く霜よりも 一人寝る わが衣手ぞ さえまさりける
紀友則
(0663)
ささのはに おくはつしもの よをさむみ しみはつくとも いろにいでめやは
笹の葉に 置く初霜の 夜を寒み しみはつくとも 色に出でめやは
凡河内躬恒