漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

初めての合格のために その4 「分野別の戦略(1)」

2014-04-17 18:38:53 | 初めての合格のために
 「戦略」などという立派な表題にふさわしい効果覿面の対策などはない(苦笑)のですが、(一)~(十)の出題分野ごとに、思うところを書きます。


(一)読み  目標25点
 25-3 では、分類A~Cで21点。あと4点をどう取るかですが、「辞典」に載っていない熟語の出題も多く、なかなか対策が難しい分野です。ただ音読みに関しては、例えば 25-3 で出題された 【寿讌(じゅえん)】 のように知らなくても読める問題も少なくないので、分類A~Cをしっかりやれば、20点中18点程度は期待できるでしょう。問題は訓読みです。回によるばらつきが大きいですが、一文字で送り仮名もない読みなどはなかなか前後の文脈からの推定も難しく、知らなければそれまでという問題が多いです。25-3 の 【檠(ゆだめ)】 などがそうですね。特効薬はないので個々の漢字の学習を地道に積み上げて行くしかないですが、その際、初回合格のための効率追求という観点では、「漢検要覧」に載っていても「漢検 漢字辞典」に載っていない読み(=主として「字義」としての訓読み)は学習対象から外しましょう。かつてはそうした読みも時折出題されていたようで、「完全征服」や「分野別」には僅かながらそうした問題も掲載されていますが、少なくとも私が手元に持っている平成15年度以降の過去問では一度も出題されていません。出題の基準はあくまで「要覧」というのが漢検協会の考え方のようですからいつ出されても文句は言えませんが、「要覧」に記載されているQ&Aの記述(転記は差し控えますが、288ページです。お持ちの方は確認ください。)からしてもまず出題されることはないでしょうし、万が一出ても1問でしょう。「要覧」にあって「辞典」にない読みはかなりの数ありますから、学習負担が相当軽減されると思います。

(二)書き取り  目標22点
 25-3 に関しては、分類A~Cだけで目標の22点が取れます。残りは 【矯激】 【相貌】 【呉】 ですが、実際のところ後ろの2つは分類D・Eとしては易しいですね。25-3 は(二)が少し難易度が低かったということでしょう。ただ今回、 【呉】 に関しては、思いついても「まさか」と思って書かなかった方も多かったようです。やはり試験ですから、空欄は極力残さないということが大切と思います。私もまったく確信はなかったですが、「くれ」と読む漢字を他に思いつかずに 【呉】 と書き、幸運にも正解できました。
 25-3 の話はさておき、過去問を一通り身に付けた上でのプラスアルファの対策としては、やはり過去問の読み問題を書けるように練習するということでしょう。ひとつひとつは把握していませんが、漢検において読み問題がしばらく後に書き問題として出題されることは非常に多いです。
 もう一つ、やや邪道かもしれませんが、効率追求という観点で、易しい漢字で代替できる字は書く練習は不要と思います。例えば 【曁(およ・ぶ)】 という1級配当漢字があり、読み問題としてはたびたび出題されていますが、これは書く場合には「及」で代替できてしまうため、まず書き取りで出題されることはないでしょう。万が一出題されても「及」と書けば良いのですから、【曁】 を書ける必要はないと思います。 

(三)国字  目標10点
 ここは10点満点以外ありえません。分類がどうの過去問がどうのではなく、約100字しかない中から必ず5問出るのですから、完璧に準備しましょう。実際、合格者の平均はいつも9.8~9.9点で、合格者10人のうち9人が満点、1人が8点の計算になります。合格者はここは落とさないということですね。なお、傾向としては5問中1問は単位を表す漢字が出ることが多く、直近5年では15回中11回で出題されています。全部覚えるのですから出題傾向など関係ないですが、ご参考まで。

(四)語選択書き取り  目標6点
 ここは対策が難しく、また回によって難易度のばらつきも大きい設問で、合格者の平均が6点代なんてこともありました。選択肢が与えられるとは言え、意味の記述からその熟語を想起できることが必要ですので、他の分野で既出の熟語でも必ずしも正解できないところが難しいです。私自身が過去問以外にやっている対策としては、勉強していて知らない熟語に出会ったら、この設問の形式で自作問題集に加えていっています。エクセルに順に意味・読み・漢字を入力しておき、極力意味だけから熟語が想起できるように練習します。エクセルはこんな感じですね。


(五)四字熟語  目標 書き取り18点 意味10点
 前回の「その3」で詳しく書きましたので繰り返しませんが、目標は28点。つまり、下位級配当のものや四字熟語辞典にないものが出題されたらそれは誤答で已む無しとし、それ以外はすべて取るということです。しつこいですが、それが実現できるだけの勉強をすれば、必ず他の分野にも大きくプラスに波及します。
 また、前回書き忘れましたが、1級四字熟語を網羅するもう一つのメリットとして、それをやることで1級配当漢字の半分近くが学習できるということもあります。各四字熟語に基本的に一つ以上の1級配当漢字が含まれている一方、1級配当漢字全体は実質的には2,700弱ですので。


 半分まできました。(六)~(十)に続きます。



初めての合格のために その3 「過去問と四字熟語」

2014-04-16 16:06:08 | 初めての合格のために
 前回、「過去問と四字熟語で143点取れる」と書きました。もちろん回によってばらつきはあるでしょうが、現在の出題傾向からして、過去問と四字熟語(前回の分類A~C)で取れる問題がおよそ140点分、その他(分類D・E)が60点分と考えておけば大きく外れることはないでしょう。とすると、前者で140点近い得点をきっちり取れれば、残りの60点分は20点ほど、つまり3分の1程度取れば合格に到達するということになります。前者を完璧に全問正解というのはなかなか難しいとしても、9割取れれば126点で残りは34点。後者の60点分は6割で良いことになります。

 さてそこで、9割を目指すべき分類A~Cについて、もう少し詳しく見てみましょう。

 分類A~Cとは、以下の通りでした。

分類A   「平成21年度以降の過去問」 「漢検1級 完全征服」 「漢検1級 分野別精選演習」 にある問題。

分類B   Aとまったく同一ではないが、Aを勉強していれば正解できる問題。

分類C   A・Bには含まれないが、1級配当の四字熟語の知識で正解できる問題。


分類A・B

 ここは、とにかく最近の過去問と書籍を入手して、ひたすらその問題にあたるということになります。その際、もちろん出てくる漢字や熟語の意味をひとつひとつ確認するとか、読み問題は読むだけでなく書けるようにするとかの取り組みをするに越したことはありませんが、最初からそうしたやり方で取り組むことは個人的にはお勧めしません。読み飛ばしでも丸暗記でも良いので、とにかく繰り返し問題をこなして「正解」できるようにするのが良いと思います。2度目、3度目、4度目と繰り返すうちになんとなく意味が分かってくる漢字や熟語も必ずありますし、何より正解数が増えていくことが勉強のモチベーションになるでしょう。乱暴なことを言いますが、特に読み問題などは意味がわからなくても書けなくても、読めれば正解で得点になります。1度目は5%だった正答率が2度目は15%、3度目は35%と上がって行き、習得済み問題の増加(=実力の向上)が実感できることが大切と考えます。


分類C

 「漢検 四字熟語辞典」で1級配当とされているものを網羅的に学習することになります。学習開始当初は見たこともない熟語がほとんどのはずで、こちらは読めるだけでなく、書けることも意味を理解することも重要ですからなかなかにボリュームがあり、根気のいる勉強になります。もちろん、四字熟語は分類Aに属するものだけに絞ると割り切って勉強し、結果、合格を勝ち取られている方も少なくないと思いますが、それでも私がこれを重要と考える理由と留意すべき点を繰り返しも含めて列挙します。

★ 配点が大きい
 四字熟語が直接問われる本試験(五)には30点という大きな点数が配分されています。合格のためには全体で40点分しか間違えられないことを考えると、ここで10点以上も失点するようなことはなんとしても避けなければなりません。また、配点30点のうち10点分は問われた意味に該当する四字熟語を記号で答える選択問題であり、消去法で正解にたどり着くことも可能ですが、これが書き取りと同じく1問2点ですから、絶対に落としたくないところです。書き取りも含め、合格に向けて(五)はぜひ得点源としましょう。

★ 出題範囲が限定されている
 覚えるべき四字熟語が1,000語と考えると始めは途方に暮れるかもしれませんが、他の分野との比較で言えば、1,000語覚えればほぼ確実に満点に近い得点が取れるというのは、国字の書き取りに次いでかなり「おいしい」分野と考えるべきでしょう。

★ 学習対象の四字熟語
 「漢検 四字熟語辞典」には、1級配当の熟語が約1,100語掲載されています。このうち、漢検配当外の漢字を含む約50語は覚える必要はないでしょう。次いで、人名が含まれているもの約20語もほぼ外して良いでしょうし、意味内容が余りに貧弱ないし下世話なものも覚える必要はないと思います。(実際にどれを学習対象から外すかは、結局は主観の問題ですが・・・。学習するかどうかを判断するのを止めてとにかく全部覚える、というのも、逆に効率的かもしれません。) などなどで学習対象は約1,000語。すでに分類Aに含まれているものが200ほどありますから、分類Cとしては800語ほどとなります。

★ 「●●之●」
 上記800個の熟語には、「●●之●」という形のもの約100語が含まれています。これらの熟語が(五)で直接四字熟語として問われることはないと思いますが、このブログでも何度か書いているように、このタイプの四字熟語の学習は絶対に省略すべきではありません。(九)の故事・成語・諺問題としてここ数年に出題されたものだけでも、
  【イツボウの争い】 22-2  ←  【鷸蚌之争】 (「漢検 四字熟語辞典」P.90)
  【シボクの信】 22-3  ←  【徙木之信】 (240)
  【ヒニクの嘆】 23-1  ←  【髀肉之嘆】 (401)
  【トソウの人、何ぞ算うるに足らんや】 23-1  ←  【斗筲之人】 (367)
  【テンダイの筆】 23-2  ←  【椽大之筆】 (353)
  【カンポウの交わり】 24-1  ←  【管鮑之交】 (141)
  【イモンの望】 24-2  ←  【倚門之望】  (92)
  【スイキョウして天下治まる】 24-2  ←  【垂拱之化】 (276)
  【ケンロの技】 25-2  ←  【黔驢之技】  (185)
といった状況ですし、(九)以外でも 「在野」の類義語として【草莽】、【咫尺(しせき)】や【邯鄲(かんたん)】の書き取り、【棣鄂(ていがく)】の読みなど、出題事例は枚挙に遑がありません。

★ 準1級以下配当の熟語について
 本試験では、準1級以下に配当されている四字熟語も出題されます。ここ数年の出題数は本試験1回に1問というところですが、私はこれはできなくても仕方がないと考えています。4級、5級といった下位級配当のものも、使われている漢字はなるほど易しいですが、四字熟語としては馴染みのないものがたくさんあります。本試験で1問正解するためにこれをすべて追いかけるのは、初回合格を目指す上ではさすがに効率が悪いと思います。ただし、「完全征服」「分野別」に出ているもの(すなわち分類Aに属するもの)は当然ながら覚えておきましょう。25-2 で5級配当の 【断章取義】 が出題されましたが、「分野別」で学習していたので無事に正解することができました。


 今回も長くなりましたのでこの辺で。

 次回は(一)~(十)の設問ごとに、思うところを書いてみます。

初めての合格のために その2 「過去問と四字熟語で何点取れるか」

2014-04-15 12:06:18 | 初めての合格のために
 1級合格のためには過去問への取り組みが重要であるということを多くのリピーターの方が指摘されていますし、私もこれに全面的に賛同します。ただそれだけでは合格には届きません。ではどうするかですが、私は過去問に加えて、1級配当の四字熟語をすべて網羅することが、合格への最短距離だと考えています。
 
 このことを具体的に見るため、直近の本試験(25-3)の問題を次の分類A~Eに区分します。


分類A   「平成21年度以降の過去問」 「漢検1級 完全征服」 「漢検1級 分野別精選演習」 にある問題。

分類B   Aとまったく同一ではないが、Aを勉強していれば正解できる問題。

分類C   A・Bには含まれないが、1級配当の四字熟語の知識で正解できる問題。

分類D   A~Cには含まれないが、平成15~20年度の過去問にある問題。

分類E   A~Dのいずれにも含まれない問題。


 分類A~Cについて、少し補足します。

分類A
 過去問を「平成21年度以降」としたのは、現在でもネット書店などで比較的容易に入手できるもの、との主旨です。それ以前の古い過去問は「完全征服」「分野別」で補います。このあと具体的に見る通り、「合格のための過去問」はこれで十分と思います。(蛇足ですが、「分野別」が出たことでおそらく「完全征服」は絶版になるでしょうから、まだお持ちでない方は今のうちに入手しておかれることをお勧めします。)

分類B
 例えば 25-3 で 【箴規(しんき)】 の読みが出題されました。「A」にこれと同じ問題はありませんが、「A」にある【箴言(しんげん)】を学習していれば十分に正解できるでしょう。「分類B」はこのような問題のこととします。

分類C
 ここでいう「1級配当の四字熟語」には、「●●之●」という形のもの(約100語)を含みます。逆に、「漢検 四字熟語辞典」に載っていても、漢検配当外の漢字を含むものなどは無視して良いと思いますので、トータルでは約1,000語になるかと思います。私がこれを重要と考えるのは、配点の高い設問(五)の直接の対策としてはもちろんのこと、この1,000語の知識で正解できる問題が、(一)読み、(二)書き取り、(四)語選択書き取り、(九)故事・諺、(十)文章題など、そこかしこにしばしば出題されるからです。25-3 でも、(五)以外に(四)3【黜陟】(←【黜陟幽明】)、(四)4【料峭】(←【春寒料峭】)、(十)カ【不羈】(←【狷介不羈】ほか)といった問題が、四字熟語の知識で正解できるでしょう。

 さて、前置きが長くなりました。25-3 をA~Eに分類した結果は次の通りです。数字は、それぞれA~Eに分類された問題の配点の合計です。

(一) 17  2  2  0  9  / 30
(二) 18  4  0  0  8  / 30
(三) 10  0  0  0  0  / 10
(四)  4  0  4  0  2  / 10
(五)  8  0 16  0  6  / 30
(六)  8  0  0  0  2  / 10
(七)  4  2  0  2  2  / 10
(八) 12  0  0  0  8  / 20
(九) 14  0  0  0  6  / 20
(十) 13  4  1  1 11  / 30

合計 108 12 23  3 54  / 200


 つまり、直近数年の過去問と「完全征服」「分野別」をしっかり勉強すれば、そこから正解できる問題(分類A・B)で108+12=120点、これに1級配当四字熟語の知識(分類C)を加えれば、23点プラスで計143点を取ることができます。これが、私が過去問と四字熟語を重視すべきと考える理由です。また、分類Dからの出題が3点分しかないことは、古い過去問は完全征服と分野別で十分補えることを示していると思います。(もちろん、合格に向けて「3点」は決して小さくないですから、国会図書館を活用するなどして初回からの全過去問を入手するのも、良い方法と思います。)


 実際の私の受検結果と照らし合わせてみますと、25-3 の私の得点175点の内訳は、

  分類A~C  配点143点中137点 正答率96%
  分類D・E  配点 57点中 38点 正答率67%

ですので、分類A~Cの学習が私の合格の基礎になっていることがわかります。リピーターとなった今は、本試験終了後しばらくは分類D・Eの正答率を上げるための語彙の増強にいそしみ、1ヶ月前くらいからA~Cを復習して次の本試験に臨むというサイクルになっていますが、D・Eの学習もA~Cの基礎があってこそと思っています。


 だがしかし・・・「143点」はどこまで行っても「143点」で、これを完璧にこなしたとしても合格にはまだ17点足りません。それをどうやって積み上げるかも含めて、引き続き思うところを書いてみます。もうしばらくおつきあいください。



初めての合格のために その1 「分野別の目標得点」

2014-04-14 21:36:57 | 初めての合格のために
 このブログを読んでくださっている方の中には、1級初合格を目指して勉強されている方も多くいらっしゃるかと思います。私の経験はまだ回数も浅く、拙いものですが、それでもとにかく初めての合格を勝ち取るために効率を最重要と位置付け、「同じ時間の勉強で試験で1点でも多く取る」ことだけ(「だけ」、は言いすぎですが(汗))を主眼としていたときと、合格を複数回重ねた今とでは、勉強の仕方や着眼点がやはり違ってきています。
 そこで、先々リピーターになるのか、より深く広く勉強していくのかはともかくとして、とにかく1回合格するための取り組みについて、どの程度参考になるかはわかりませんが、私なりに思うところを何回かに分けて書いてみたいと思います。



 どんな試験でも、その試験の内容や特徴を熟知することが合格への捷径(近道)でしょう。漢検1級もまったく同じだと思います。そこでまずは「敵を知る」ことの端緒として、本試験の分野別の配点を再確認するとともに、合格のために各分野で目標とすべき得点について、私なりに考えて見ました。各設問の後ろの数字は、 (目標得点)/(配点) です。

(一)読み   25/30
(二)書き取り   22/30
(三)国字   10/10
(四)語選択書き取り   6/10
(五)四字熟語
 書き取り   18/20
 意味   10/10
(六)熟字訓・当て字   9/10
(七)一字訓読み   9/10
(八)対義語・類義語   14/20
(九)故事・成語  14/20
(十)文章題
 書き取り   14/20
 読み   9/10

 合計   160/200

 もちろん、人それぞれ得意不得意もあれば考え方の違いもありますからあくまで参考程度に見ていただければと思いますが、「これはできなくても仕方がない」と思わせられるような問題の出題数の傾向や、勉強効率から考えると、概ねこんな感じになるのではないかと思います。四字熟語や熟字訓の目標が高すぎると思われる方が多いかもしれませんが、私がそう考える根拠を具体的にご説明していきたいと思います。



「模擬試験」作成後記

2014-04-13 09:39:38 | 雑記
 勉強していて、本試験形式の模擬試験問題集がもっとたくさんあればなぁといつも思っていました。その時々の自分の実力が的確に測れ、かつ、そこで誤答した問題がそのまま血となり肉となるような・・・。

 そんな思いが、今回自分で作ってみるきっかけになりましたが、何事もやってみて初めてわかること・感じることがあるものです。


★ 「良い問題」を作るのは難しい。
 これは初めてわかったと言うより、改めて実感したと言うべきですが、良問を作るのはやはり難しいですね。私が個人的に理想とする「良問」とは、
  ・「辞典」の見出し語にある。(少なくとも、小さい字では出ている。)
  ・過去問になく、新出である。
  ・言葉の意味に奥深さがある。
  ・短文であれ長文であれ、直接その熟語を知らなくても前後の文脈から推定が可能である。
  ・近世、近代の著作に実際に使用されている。
  ・漢検本試験に実際に出題されそうに思える。
といったところですが、実際に作ってみると、自作の問題はこれには程遠い気がします。

★ 問題作成、特に例文作成は非常に勉強になる。
 これも今更ですが、言葉は文章の中で使われて初めて意味があるわけで、熟語単体として読めて書けて意味がわかるというだけでなく、文章中で使えてこそ自分の語彙になったと言えるわけです。知っているつもりでも、いざ例文を作ろうとすると四苦八苦の連続でしたが、そうやってうんうん苦しんでいろいろと調べ、頭をひねることで、一段とその言葉に対する理解が進むように感じました。こと漢検対策としては効率の良い勉強法とは思いませんが、例文作成は苦しくも楽しい時間でした。

★ 良い文章題の作成には読書量がものを言う。
 私は読書そのものは好きで人並み以上に本は読む方だと思いますが、読書傾向は極めて偏っており、1級漢字が出てくるような、近世・近代の著述にはほとんど馴染みがありません。今回、問題を作成するにあたって青空文庫のサイトを渉猟しましたが、結局のところ定番中の定番、中島敦の2作品に頼ることになりました。以前に夏目漱石を読み返していて、結構1級対象の漢字・熟語があるなぁと感じたことがありましたが、問題にするとなると、ある程度短い範囲の文章中にそれなりの数の語数が必要なので、あてもなく探すというのは難しかったです。やはり、もともとたくさん読んでいるということに勝るものはないですね。次回作成するときは、もう少し時間をかけて探してみたいと思います。実際の出題回数の多い、幸田露伴、森鴎外など、あたってみたいですね。


 今回、第1回はすべて頻出過去問(採用した問題は、すべてこの10年で3回以上出題されているものです)、第2回は逆に大半が新出問題と、難易度的には両極端になりました。初めての作成でもあり、あえてそうしたことではありますが、「実力を的確に測る」ものにはなっていないということですね。なかなか大変なので、またすぐ次をというのは難しいですが、次回作るときには、過去問と新出のバランスをとって、「本試験並みの難易度」を念頭に置き、かつ、新出問題については冒頭に記した「良問」の定義に極力近づけるよう、チャレンジしてみたいと思っています。いつになるかわかりませんが、その際にはぜひまたおつきあいください。