龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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朝市の醍醐味(週末、八戸にいってきた)。

2012年10月29日 01時27分19秒 | 大震災の中で
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目的は、朝市。
日曜日、八戸の漁港に東北最大級のが立つ、というので行って見た。

朝市だから、時間も
「日の出から九時まで」
6時半ごろに市場に着くと帰りの車と市場に入る車で一番ごった返していた時間だった。

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ぐるっと回って見ているうちに2時間ぐらいはかかってしまう。
八戸の台所って感じかな。他に「八食センター」というところもあるけれど、こちらは観光用特産品という感じ。
この八戸漁港の朝市は、本当に市民の台所だ。
車もその多くが八戸ナンバー。他県というか他地区の車は少数だ。青森ナンバーと、岩手ナンバーがチラホラあるだけ。

今はとにかくリンゴの季節。様々な種類のリンゴが、お魚と隣り合って売られている。

テイクアウトの食べ物もたくさんあるし、テーブルと椅子も用意されている店もある。

中でも特徴的だったのは、天ぷら屋さんが沢山お店を出していたこと。純和風テイクアウトですね。
サツマイモやエビ、かき揚げなどを揚げたてで食べるのは文句なく旨い。もちろんギョウザも鶏の唐揚げも、串刺しの焼き魚も、立ち食いそばも、きりたんぽも、焼きそばもピザも、草餅も、コーヒー屋さんも軒を並べている。

街中のお店が結構お店を出しているのも特徴的だ。
夜街中で見かけたピザ屋さんとか、街中珈琲店が出店してる。
パン屋さんもかなりの数が。

本当に八戸市の台所、なんです。

加えて、
「コーヒーちょうだい」
「ああ、お金いいからあんだんどごの花持ってきて」
と、お店の人同士の物々交換も!
市場だなあ、と一人で納得し、また感動していました。
リンゴを買うにも、餅を買うにも野菜を買うにも、それを作った人のごっつい掌を介してお金のやり取りをする。
リンゴなんて木箱でならんでたりしてね。

モノとお金と人の集散地、というだけのことなら、デパートだってスーパーだって同じこと、とおもってしまうかもしれない。

でも、僕たちはもう、それが実は決してこの市場と同じではないことを、身に染みて感じている。

六ヶ所村の処理施設とか、大間の原発とかを抱えている青森県は、昨日までの福島よりも、こういう自然からの恵みを直接交易できている分だけいざとなったらダメージが深いだろう。

いや、そんな脅しみたいなことがいいたいのではない。
こういう市が立つ場所、サバやイカが旨い場所、りんごの品種が沢山好みで買える場所は、とってもとっても貴重なのだということがいいたいだけだ。

漁業も農業も、高齢の人たちが支えているから、今の青森は豊かだけれど、あと二十年経ったら限界をたやすく超えてしまうよ、と、弘前の人からうかがったことがある。

そうかもしれない。

原発事故は、経済の立ち行かない地方のほそぼそとした一次産業の地区(いなか)をまず襲うことになるだろう。若者が残らない、という現実は、大災害や原発事故の前からの課題でもあったしね。
それだったらせめて原発があるうちは喰える、という(身も蓋もない話ではあるが、切実でもある)計算だって成り立たないわけではあるまい。

でも。

それでも、ものには順序ってものがあるし、大切さの順番もある。ソロバンに乗る話と乗らない話もあるし、それよりなにより、この市場(いちば)の豊かさを、私たちはもう少し真面目に考えておくべきだろう。

そう考えてくると、顔の見える「交易」の醍醐味に、実はもう私たちはとっくに気づいているのではないか、という気もする。

道の駅の流通が、既にコンビニに匹敵する、という記事を去年読んだことがある。

こういう市民に開かれた市場は、その流れでイベント的に見直されて来てもいるのだろう。多分八戸のこの日曜市だって、
市民の台所+観光資源

として期待されつつ、イベント化されてもいるのに違いあるまい。

私たち福島の民が、こんな風にすぐ市場で生鮮食料品を開かれた形でお客さんに提供し、自分たちもまたその豊かさを享受する、ってわけにはいかない。それはすぐには無理だ。

それでも。

海の幸も山の幸も、流通を封じられ、厳しい制限ををかけられてなお、それを人々に手渡したいと福島の私たちが願う以上、こういう市が立てられないと嘆くのではなく、どうやったら顔の見える豊かな「交易」が可能かを考えて動き始める必要があるだろう。

それはきっと、言葉においてもどこか共通した側面を持つのではないか。

これからは力の限りライブに生きる、と宣言した江戸っ子の山下達郎の気概と、同じ時代を私たちは生きているのだと、つくづく思う。

そのライブの鼓動が、市場には充溢していた、ってことでもあります。

ちなみに私は、リンゴを7種類(こんなにいろいろなリンゴを選べるなんて豊かな体験ですよねえ)と、長芋にインゲン(いつも買う値段の半額以下かな)、それから、ガラクタオモチャを売る店から、サンダーバード2号を掘り出して帰って来ました。

ついでにいえば、初めての市場体験は、エジプトのカイロのスーク。得体の知れないお店の人が、深い深い通りの奥まで無限に続くあの不思議な魅力。
人とモノが互いにであう、エナジーが渦巻いている場所でした。