龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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NS新書『現代哲学の最前線』(仲正昌樹)を読む

2022年02月08日 07時00分00秒 | メディア日記

この著者のことは全く存じ上げないので、単なる読後の印象に過ぎないのだが、この本を読んでいると、大学の先生が同じジャンルの専門家(この場合は哲学者)について、自分の専門家の立場は踏まえつつも、単に自分の専門家の立場から一刀両断して終わり、というのではなく、学生と雑談的に話してくれる敷居の低さを観じた。

もちろんちょっと皮肉っぽく(そりゃないだろうけど)みたいな口吻もかんじないでもなく、しかしそれはそれとして早わかり的に教えてくれる感じ、といえばいいのか。

重要なのは、「問い」について説明してくれていることだろう。

あとがきの一句もこの先生らしいビターな「学生たち」への警句が書かれてある。

「今まで全然分からなかった"哲学"が、急に『したたかに生きるための知恵』に思えてきたなら、要注意だ」

これはとても大切だとおもう。
答えじゃなくて問いが大切、ということでもあるし、哲学は基本的に「生き方」とか「啓発」とはおよそ正反対の営みだぜ、という辛さがこのコトバには込められている。
まあ、この仲正昌樹の名前を冠した本にしてはずいぶん「優しい」とは思うけれど。

でも、手ごわいテキストにチャレンジする前には、どうしたって概略の地図は要るよね。

何度哲学者の主著に挑んで玉砕したことか(笑)

そういう素人の経験というか蓄積からいって、この本は、頼りになる。

全部の人の主張を説明したりしていないから、読者はそれぞれその論者の論を参照して初めてこの本の意味が分かる。ただ、おおまかな配置図のようなものは与えられる。

初めから自力でそれを全部やっていては素人は身が持たない。
そういう意味で、ありがたい。

哲学と、それを受容しようとする読者のギャップのさり気ない指摘、後書きだけでも読む価値があるかな(笑)