風月庵だより

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普通に生きられるということ

2007-12-16 23:20:44 | Weblog
12月16日(日)晴れ風寒し【普通に生きられるということ】

両親は離婚し、さらに高校生のとき母親が家をでたまま帰らずに、ずっと独りぼっちで生きてきた岩井青年(仮名)、身元引受人がいないので、アルバイトの職にも付けず、路上生活をし、ゴミ箱から漫画雑誌を拾い出し、それを売って一日一食の焼きそばを食べていた青年、「誰も信じていないからね」と言っていた。NHKの「ワーキングプア」の番組に登場していた青年のことを、母と時々あの青年はどうしたろうかと心配していた。

先ほどの今夜の番組で、その後の岩井青年が出てきたので、仕事の手を止めて番組を見た。青年は三鷹の道路清掃の仕事につくことができて、一日7千円、月に10日働けるのだという。食堂に入って大盛りの温かい御飯を食べていてくれた。よかったね、と母と言いながら観ていた。以前は公園の水道で洗っていた頭も体も、温かい銭湯に入って頭を洗い、温かいお風呂に入ってゆったりとしていた。二日に一回入れるようになったのだという。よかったね、よかったね、とそれを観ながら母と言い合う。しかし、それでもまだ帰る所は路上の高架下のダンボール。

「社会復帰できたとき、生まれてきてよかったって言えるんじゃないの」と青年は言った後で、突然黙ってうっぷしてしまった。しばらくして、おもむろに頭をあげながら、目頭を拭いていた。彼は自分の言葉に、思わず涙が溢れるのを押さえられなかったのであった。「人を信じられるようになったからね、人間としての感情が戻ってきたんじゃないの。以前だったら絶対に泣かなかった」と言った。

この青年が、何時か必ず、普通に就職ができて、屋根のある家に住めるようになりますように。ホームレスの炊き出しのボランティアに行って、仕事がないホームレス仲間に、自分の分を与えてしまっていた青年、「自分には苦労している人の気持ちがわかるから、いつかそのような人の助けになりたい」(この言葉は書き留めなかったので少し違っているかもしれない)というようなことも言っていた。

普通に、屋根のある下で生きていられる幸せ、職のある幸せ、関わり合う人のいる幸せ、それが家族ならば尚更の幸せ、温かい御飯が食べられるという幸せ、温かいお風呂に入れるという幸せ、温かい布団に寝られるという幸せ、それが満たされている人にとっては、なんでもないことを、岩井青年は幸せと知っていることだろう。

今夜は寒そうだ。青年が必ず温かい布団で寝られる日の来ますように。祈るばかりで許されよ。きっとどなたか身元引受人が出てくれると信じている。

隣人になにができるかービルマのこと

2007-12-16 19:44:18 | Weblog
12月16日(日)晴れ【隣人になにができるのかービルマのこと】(某寺の観音様)

ビルマ(日本で活動している方々はこの呼称を使っている。ミャンマーは軍事政権が登録した国名であるので、ミャンマーでなく、ここではビルマとしておきたい)は今どうなっているのであろうか。長井さんが銃弾に倒れた当時はテレビにもビルマ情報は少しは流れていたが、今は全く報道されていない。日本だけではないかもしれないが、どのテレビ局も同じような事件を、同じ時期に、一緒に追い回しているだけで、種種の事件がその後どうなったかの報道は実に少ない。ビルマ情報についても、現在僧院や僧侶がどうなっているのか、人々はどうなっているのか、全く報道されない。情報が入手できない、ということもあるだろう。

そこで今シンガポール在住のビルマの高僧、パンニャバンサ長老と、アメリカ在住のスジャナバンサ長老が来日されて、各地で現状報告と支援協力を求めてシンポジウムをひらいているので、その会に参加した。12日の水曜日には夕方から築地本願寺の一室でシンポジウムが開催された。これは全国青少年教化協議会及び超宗派の僧侶らでつくるNPO法人アーユス仏教国際協力ネットワークの後援、またビルマ僧侶の平和的民主化運動を支持する会2007、エンゲイジド・ブッディズム研究会、ビルマ市民フォーラムの共催によるものであった。

通訳は田辺寿夫先生、司会は神仁師、また日本には11年滞在経験のある、現在はアメリカで会社を経営しながら、ビルマの民主化運動をしているチョウティン氏が二人の長老と共に出席され、多くの参加者に、ビルマの現状報告がなされた。パンニャバンサ長老は、ササナモリ(仏教最高長老評議会)国際ビルマ仏教僧協会の団長もなさっている。長老はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、イギリスなど各国にビルマ仏教を伝え、各地にビルマ寺院をつくり、ビルマの人にはよく知られている高僧である。八〇歳という高齢であるが、七日から一八日までの日本滞在中、名古屋、横浜、東京と各地に足を運んで、故国ビルマの惨状を救うために、懸命に活動なさっている。

軍事政権の政府報道では死者の数も二〇人程度とされ、その中の僧侶は二,三人とされているが、現状は全く違い、殺された人の数は200人以上、おそらくそれ以上多くの人々が殺され、怪我をしている人でも、そのまま焼かれるという残虐なことも行われているということである。想像を絶する残虐さである。

また多くの僧院が破壊されて、僧院からほとんどの僧侶の姿がなくなっているということや、高齢の高僧たちも、僧院を追われてそれぞれの故郷に帰されているという報告がなされた。また政治的に活動しようというのが長老たちの目的ではなく、ビルマから仏教を滅ぼしてはならない、ということが長老たちの願いであること。そして民衆の平和な生活が得られることが願いであることなどを訴えられた。

また昨日15日には、この二人の長老とチョウティン氏とビルマからの留学生を招いてのSOTO禅インターナショナル(SZI)の方々との会合が東京駅近くで行われた。私はこちらの会にも参加させていただき、さらにお話を伺う機会を得た。チョウティン氏は曹洞宗からも抗議文が出ていることを何度も有り難いと御礼を言ってくれていた。このような抗議文を日本の各宗派から出されているが、全世界の仏教徒としてビルマに対して抗議の声を大にしなくてはならないと思う。それがどれほどの効果があるかは別問題としても。

昨日の模様についてはkamenoさんのブログに詳細が紹介されているので、是非そちらにご訪問下さい。
http://219.121.16.30/blog/archives/001013.html

日本の皆さんにモラルサポートとしてビルマの現状を理解していただき、政府やミャンマー大使館にも抗議文を届けて貰いたいことも願っていたので、日本の外務大臣の住所をここに書いておきますので、それぞれの抗議文をお送りいただければと思います。築地本願寺に参加された方のなかには、七〇〇〇名の署名を集めて国連に抗議文を送った人もいました。
〒100-8919 千代田区霞が関2-2-1
         外務大臣 高村正彦 殿

ビルマに平和の火がともされることをひたすらに祈りましょう。拘束されている僧侶の皆さんや、拘束されている人々が一日も早く自由の身になれますようにと願いましょう。希望を失わずにビルマの皆さんが生きていかれるように応援のエールを送りましょう。

*長老たちのお写真はkamenoさんのブログでご覧ください。