12月16日(日)晴れ風寒し【普通に生きられるということ】
両親は離婚し、さらに高校生のとき母親が家をでたまま帰らずに、ずっと独りぼっちで生きてきた岩井青年(仮名)、身元引受人がいないので、アルバイトの職にも付けず、路上生活をし、ゴミ箱から漫画雑誌を拾い出し、それを売って一日一食の焼きそばを食べていた青年、「誰も信じていないからね」と言っていた。NHKの「ワーキングプア」の番組に登場していた青年のことを、母と時々あの青年はどうしたろうかと心配していた。
先ほどの今夜の番組で、その後の岩井青年が出てきたので、仕事の手を止めて番組を見た。青年は三鷹の道路清掃の仕事につくことができて、一日7千円、月に10日働けるのだという。食堂に入って大盛りの温かい御飯を食べていてくれた。よかったね、と母と言いながら観ていた。以前は公園の水道で洗っていた頭も体も、温かい銭湯に入って頭を洗い、温かいお風呂に入ってゆったりとしていた。二日に一回入れるようになったのだという。よかったね、よかったね、とそれを観ながら母と言い合う。しかし、それでもまだ帰る所は路上の高架下のダンボール。
「社会復帰できたとき、生まれてきてよかったって言えるんじゃないの」と青年は言った後で、突然黙ってうっぷしてしまった。しばらくして、おもむろに頭をあげながら、目頭を拭いていた。彼は自分の言葉に、思わず涙が溢れるのを押さえられなかったのであった。「人を信じられるようになったからね、人間としての感情が戻ってきたんじゃないの。以前だったら絶対に泣かなかった」と言った。
この青年が、何時か必ず、普通に就職ができて、屋根のある家に住めるようになりますように。ホームレスの炊き出しのボランティアに行って、仕事がないホームレス仲間に、自分の分を与えてしまっていた青年、「自分には苦労している人の気持ちがわかるから、いつかそのような人の助けになりたい」(この言葉は書き留めなかったので少し違っているかもしれない)というようなことも言っていた。
普通に、屋根のある下で生きていられる幸せ、職のある幸せ、関わり合う人のいる幸せ、それが家族ならば尚更の幸せ、温かい御飯が食べられるという幸せ、温かいお風呂に入れるという幸せ、温かい布団に寝られるという幸せ、それが満たされている人にとっては、なんでもないことを、岩井青年は幸せと知っていることだろう。
今夜は寒そうだ。青年が必ず温かい布団で寝られる日の来ますように。祈るばかりで許されよ。きっとどなたか身元引受人が出てくれると信じている。
両親は離婚し、さらに高校生のとき母親が家をでたまま帰らずに、ずっと独りぼっちで生きてきた岩井青年(仮名)、身元引受人がいないので、アルバイトの職にも付けず、路上生活をし、ゴミ箱から漫画雑誌を拾い出し、それを売って一日一食の焼きそばを食べていた青年、「誰も信じていないからね」と言っていた。NHKの「ワーキングプア」の番組に登場していた青年のことを、母と時々あの青年はどうしたろうかと心配していた。
先ほどの今夜の番組で、その後の岩井青年が出てきたので、仕事の手を止めて番組を見た。青年は三鷹の道路清掃の仕事につくことができて、一日7千円、月に10日働けるのだという。食堂に入って大盛りの温かい御飯を食べていてくれた。よかったね、と母と言いながら観ていた。以前は公園の水道で洗っていた頭も体も、温かい銭湯に入って頭を洗い、温かいお風呂に入ってゆったりとしていた。二日に一回入れるようになったのだという。よかったね、よかったね、とそれを観ながら母と言い合う。しかし、それでもまだ帰る所は路上の高架下のダンボール。
「社会復帰できたとき、生まれてきてよかったって言えるんじゃないの」と青年は言った後で、突然黙ってうっぷしてしまった。しばらくして、おもむろに頭をあげながら、目頭を拭いていた。彼は自分の言葉に、思わず涙が溢れるのを押さえられなかったのであった。「人を信じられるようになったからね、人間としての感情が戻ってきたんじゃないの。以前だったら絶対に泣かなかった」と言った。
この青年が、何時か必ず、普通に就職ができて、屋根のある家に住めるようになりますように。ホームレスの炊き出しのボランティアに行って、仕事がないホームレス仲間に、自分の分を与えてしまっていた青年、「自分には苦労している人の気持ちがわかるから、いつかそのような人の助けになりたい」(この言葉は書き留めなかったので少し違っているかもしれない)というようなことも言っていた。
普通に、屋根のある下で生きていられる幸せ、職のある幸せ、関わり合う人のいる幸せ、それが家族ならば尚更の幸せ、温かい御飯が食べられるという幸せ、温かいお風呂に入れるという幸せ、温かい布団に寝られるという幸せ、それが満たされている人にとっては、なんでもないことを、岩井青年は幸せと知っていることだろう。
今夜は寒そうだ。青年が必ず温かい布団で寝られる日の来ますように。祈るばかりで許されよ。きっとどなたか身元引受人が出てくれると信じている。