朝の通勤時にはスマホでインターネットのラジオを聴いている。先日そのラジオのニュースの中で認知症の問題を取り上げていた。今現在認知症患者は全国で400万人で10年前の2倍と急速に増えているという。原因は高年齢者の比率が増えたこと、それと認知症という症状がクローズアップされたことで、今まで隠れていた認知症患者がカウントされるようになったことが理由だと言う。しかも認知症予備軍はさらに400万人いるといわれていて合計800万人。65歳以上の4人に一人が認知症の症状があり、益々増える傾向にあるという。核家族化の現在、認知症の介護や支援活動は今後の大きな課題になるという。
ニュースの解説者はその象徴的な事例として今月の初めにあった名古屋地裁での判決を取り上げた。その事件とは、6年前91歳だった認知症の男性がJR東海道線・共和駅で線路内に立ち入り、快速電車にはねられて死亡した。電車の運転士が男性を発見してブレーキをかけたが、間に合わなかったという。自殺の可能性もあるとされたが、立ち入った経緯ははっきりしていなかった。この事故に対し、JR東海は保護者の安全対策が不十分だったとして、男性の妻と長男を提訴した。男性はこの年に、常に介護が必要とされる「認知症高齢者自立度4」と認定されていた。裁判で妻は、当時85歳の高齢のため夫を常時監視できなかったと反論した。しかし名古屋地裁はJR東海の訴えを認めて、遺族に電車の遅延などの賠償金約720万円を支払うよう言い渡したのである。その理由として裁判長は、同居の妻が介護ヘルパーを依頼せず、目を離したすきに男性が外出したことを指摘、長男は事実上の監督者であるにもかかわらず、徘徊防止の適切な措置を取らなかったとした。認知症の男性は常に目を離さないようにしていなくてはならず、2人の過失責任は免れないということである。
認知症高齢者自立度の基準は5ランクに分かれていて、「ランク4」は「日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする」と既定されている。四六時中監視を怠ることができず、徘徊した時の事故は保護者の責任にとなるとなれば、認知症の4ランク以上の人には人権というものはなく、一種動物的な扱いのように思えてしまう。認知症に対する有効な手段が無い現状で、家族の中で症状が顕著に出てきた場合は、その後の状況は悲壮なものになることは想像に難くない。
この問題を自分に当てはめてみると、私の両親はすでに他界しているから、我々夫婦が子供達に如何に負担を掛けずに暮らし死を迎えるかである。認知症の原因は何種類に分かれるようで、主なものに脳の神経細胞の異常が原因で起こるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症。他に脳梗塞など脳の血管の異常が原因で起こる脳血管性認知症や、脳の外傷や脳腫瘍、脳炎などで起こる認知症がある。現時点での認知症の治療薬は、アルツハイマー病に対するものが多少あるだけで、脳血管性認知症自体を対象にする薬剤はないようである。現状にこれと言った有効な対策がない以上、如何にして認知症を予防するか、進行を遅らせるか、それが目標になってくる。ニュースの中で解説者は、しいて上げれば男性は血管年齢、女性は骨粗鬆症への注意が重要と言う。それは脳の血管障害や骨折等で日常生活・社会生活が停滞したときから、急速に認知症は進行するからということであった。
以前父親が、「親戚や知人の死に様を見てくると、やはりピンピンコロリが理想になるよ」と言っていたことを思い出す。(ピンピンコロリとは、病気に苦しむことなく、元気に生き、病まずにコロリと死のうという意味)。そのためにはやはり食事と運動、そして生活に対しての意欲とが基本になるのだろうと改めて思うのである。