60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

血液型

2010年02月26日 09時13分48秒 | Weblog
東京に就職して2年目(昭和46年)、大泉学園の店から国立の店に配置転換になった。
当時日本は高度成長期の真っただ中にあって、物は飛ぶように売れ、上昇機運に乗って、
社会全体に熱気が渦巻いていたように思う。急成長するスーパーには高校や大学を卒業し、
地方からの若い社員が大勢働いていた。仕事は立ち作業や重労働が多く、日々の単純な
作業の繰り返しに将来への期待や夢は失われ、次第に不満を募らせていたように思う。
職場環境からか、若さからか、苛立ちからか、店では様々なトラブルや事件が起こっていた。
言い争いや殴り合いの喧嘩、商品やレジ金の紛失、業者から金品を受け取っての癒着、
節操のない男女交際等々、そこは無秩序で社会の底辺のようにすら思えるようであった。

いつの間にか責任を負わされていたり、非難の的になったり、何人かの仲間に無視されたり、
時にはロッカーの私物が無くなっっていたりと、自分はこの先、この職場で働いていけるのかと
不安を覚えていた時期でもある。地方育ちで、ぽっと出の私にとって、そんな環境は「生き
馬の目を抜く」世界に思えていた。そんなある日、レジの女性社員が突然出社しなくなる。
噂によれば子供ができ、出産が間近いという。彼女は地方出身で二十歳前の独身である。
子供を堕ろすわけにいかず、男の方も責任を取らなかったようで、未婚のまま郷里に帰って
子供を産むらしい、そんな噂が飛び交った。「なぜ、そうなるのか?それで納めて良いのか?」
男ばかりの兄弟4人で育ち、男子高から男子だけの大学へと進み、女性といえば母親しか
しらなかった私にとっては、女性というものが解らなかったし、人というものが分からなくなった。
大げさにいえば、世の中の道理というものを見失っていたように思うのである。

親兄弟とわずかな友人としか関わってこなかった「私」は、「人とは信頼しあうもの」と言う、
「性善説」の上に自分の思考が成り立っていたようである。そんな考えは通じないようで、
「正直者はバカを見る」ではないが、自分の無知、世間知らず、無防備さを実感させられ、
自分が大きな「欠陥」を持っている人間のように思えていた。そんな時、本屋で見つけたのが、
能見正比古の「血液型人間学」という本である。内容は血液型と人の気質の因果関係
についてデータを集積し、対象者の思考パターンや行動パターンとを関連づけたものである。

A型は取り越し苦労、責任感が強く意地っ張り。B型は気楽、外面的には積極性あり。
O型は意思が強い、人間が味ありホット。AB型は感情を率直に表現する事が不得手、等々。
職場の人間関係に破綻をきたしていた私は、人を判断する基準になるものがほしかった。
その本の内容は解りやすく明快で、私にとっては何よりの救いであり、バイブルにもなった。
それから周りの人の血液型を片っ端から聞き出し、頭に叩き込んでいく。その分類と実際の
性格が合致していたかどうかは解らない。しかし、人と接する時、相手の性格をある程度
パターン化し、相手を全体的に捉え、客観視する習慣ができるようになったのは確かである。
それ以来、人間関係が少しは楽になったような気がしている。

やがて店を離れ本部に勤務し始めると、接する人の範囲も数も圧倒的に多くなっていった。
そうなると血液型の4分類だけで人の性格を判断するには、あまりに大ざっぱで、科学的な
根拠も乏しいと思い始める。それからは本格的に生物学や心理学の本を読み漁るように
なっていく。どちらかと言えば理系のタイプ、「人間」というものを生物の一種、動物の一種
として捉えることで、より客観的に見ること。人の心理を原因があって結果があると考えること。
読むほどに、相手を知るほどに、人の心の多様さ、複雑さ、深刻さが解るようになってくると、
ますます興味を持つようになる。今「趣味はなんですか?」と聞かれたら、「散歩」と「読書」と
「人間観察」と答えている。「人間観察」は私の生涯のテーマになってきたようである。


今読んでいる、藤田紘一郎著の「血液型の科学」という新書で、昔、夢中になった血液型
のことを改めて思い出した。藤田紘一郎は東京医科歯科大学医学部の名誉教授である。
以前「笑うカイチュウ」という著書で、人が害虫だと思い込んで体内から駆除した寄生虫が、
実は花粉症やアトピーなどのアレルギー症には抑制に働いていた。という説を展開し、一躍
有名になった人である。今回「血液型の科学」の著書では、ABO血液型について科学的な
メスを入れ、その本質について考察を行っている。

今、日本人の半数近くの人が、「血液型によって性格の違いがある」と実感していると言う。
一方、多くの学者は血液型は血液のたんぱく質によるもので、、性格とは何ら関係がない。
したがって「血液型性格論」は「えせ科学」であると主張する。一般庶民が実感することと、
学者が言うことと、はたしてどちらが正しいのであろうか?、著者は「えせ科学」と主張する
学者は血液型を決める「血液型物質」というものがどういうもので、どのように出現したかを
全く知らずに自説を唱えている人が多いと言う。「血液型という生まれつきのもので、他人を
判断するのは不当なことだ」と、ただ感情で批判しているだけであろう、と言っている。
著者は「血液型によってある程度は性格が規制されるのは、むしろ当然のことと思われる」
という見解である。以下その概略を書いて見る。

ABO式血液型は赤血球の表面についている糖の分子「糖鎖」の違いで、区別されている。
血液型物質は最初に血液から発見されたため、そう命名されただけで、実際は体の中の
体液はもとより、臓器や筋肉など全て、爪、歯、骨にいたるまで全身に行きわたっている。
又、ABO式血液型物質は人間だけでなく、他の動物やあらゆる細菌までもが持っている。
著者は当初人類の血液型は全てO型であったと考える。紀元前3万年頃からそのO型の
血液を持った人類がアフリカをスタートし、世界中に広がって行った。
(南北アメリカのネイティブ・アメリカンやイヌイット、アマゾンやオーストラリアに住む先住民など、
最近まで他の民族との交わりがなく暮らしてきた先住民族のほとんどがO型であることからも
それがうかがえる)

ではO型だけの血液型から、なぜA型やB型が生まれたのかということになるのだが、これは
腸内細菌がもつA型物質やB型物質が人間の体内に潜り込むことで、遺伝子への移入が
起こったのではないかと考えている。全世界に散らばって定住し始めた人類は、その地での
生活様式の違いにより食生活が変わって行く。農耕民族は穀物を主食にすることによって、
穀物に合う腸内細菌の影響からA型が生まれる。家畜の肉や乳製品を食料にする遊牧民
からはそれに合う腸内細菌の影響からB型人間が誕生していったという。
そして最後(1000~1200年前)にA型とB型との交配からAB型の血液型が生まれた。
そういうことから、A、B、O、ABの4種の血液型が基本になった、と考えられると言う。

食性によって、血液型が変化したため、血液型によって人の食べ物との相性が違ってくる。
A型は鶏肉、大豆、人参、タマネギ、パセリ、カボチャ、ほうれん草、珈琲、緑茶などを好み、
B型は牛肉、レバー、ヨーグルト、白菜、キャベツ、なす、しいたけ、ピーマン、サツマイモ、
バナナ、などを好む等、血液型による食べ物の好き嫌いがあるらしい。(O型、B型は略す)

もう一つ、血液型の違いにより、かかりやすい病気が異なってくるようである。例えばO型は
結核にはかかりにくいが、コレラ、ペスト、病原性大腸菌による下痢症にはかかりやすい。
A型は感染症になりやすく感染してしまうと重症化しやすい、又ガンには他の血液型の人
よりなりやすいという。主な病気で例えば、梅毒、サルモネラ菌中毒、病原性大腸菌中毒、
肺炎球菌性肺炎、ノロウイルス食中毒、インフルエンザ、天然痘、肺結核、マラリア、ペスト、
コレラ、がん、糖尿病、心筋梗塞、リュウマチ、悪性貧血、などの病気でその発症の確立が
血液型によって左右されるとのデーターもあるようである。

人類の歴史は細菌やウイルス、寄生虫などの病原性微生物との戦いの歴史でもあった。
コレラ、ベスト、黒死病、天然痘、梅毒など、その大流行は何度となく人類絶滅の危機を
もたらしてきた。その結果、血液型による生存確立の差が、地域による血液型の比率の
差を生じさせて来たという。例えば、インドやアフリカの調査で天然痘に対して弱かったのは
A型とAB型でO型とB型とを合わせたより6倍かかりやすく、4倍死亡率が高いという。
ペストはO型が弱く、ペストの流行地域ではO型の人口が少ないことが知られている。
AB型は梅毒に弱く、コロンブスがアメリカからヨーロッパに持ち帰った梅毒でAB型の人間が
壊滅的な被害を受けた。その結果、アメリカやヨーロッパにはAB型が極端に少なくなった。

※日本ではA型38%、O型31%、B型22%、AB型9%、の比率であるが、メキシコは
8割がO型、アメリカはA型とO型で90%を占め、インドはB型が一番多いようである。

遺伝子で決まる血液型、それにより食物の好みが異なり、病気による生存確率が違ってくる。
それが何万年もに渡って人類に影響してくれば、血液型で人の気質が異ってくるのは当然
ありうるというのが著者の主張である。少し強引な論理の展開であるように思うが、世界の
血液型分布などの説明には納得するところも多い。人の気質は特定の因子によって決まる
ものではなく、心理学では先天的なものと、後天的な要因が作用し合うと考えられている。
その先天的な要因の一つに血液型物質があると考えても良いのであろう。

下の表は今大リーグで活躍する日本人野球選手10名の血液型である。
松井秀喜 O  イチロー B  岩村明憲 O  福留孝介 B  松井稼頭央 O
上原浩治 B  松坂大輔 O  斉藤隆 O  岡島秀樹 O  川上憲伸 O
この中にA型とAB型がいないことを、「偶然」だと言い切るのは少し無理があるように思う。
「血液型性格論」、これは当たらずといえども遠からず、と言って間違いないだろう。

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