3月5日(月)
先日図書館でたまたま借りた「人生という旅」という小檜山博さんのエッセイ本を詠み始めたら、思わず引き込まれ深く共鳴するものがあった。彼は私より10歳ほど年上で、北海道僻地の赤貧農家で生まれ育った小説家だ。
小檜山さんは若い頃から苦労して新聞社に勤めながら小説を書き続け、後年幾つもの文学賞を受賞して名のある作家になった立志伝の人物である。
私の勝手な思い込みだが、「貧困家庭の出身」「働きながら大学で学ぶ」「己の容姿や才能に劣等感を持つ」等、彼と私には幾つか共通するものがあるように思う。ただ一つ大きな違いは、単なる凡庸の徒である私に比べ、彼には天与の文才とそれを花咲かすたゆまぬ努力があったという事だ。
だからだろうか小檜山さんのエッセイには直向きな生き方と優しさと感謝の気持ちが満ち溢れており、しみじみとしてとても心地よい読後感であった。本の中で彼が一番言いたかったのは、「人は自分一人では生きていけない。他人の情けがあるから生きていけるのだ。」という事ではないだろうか。他にも彼の作品を見つけたら又読んでみたくなった。