monologue
夜明けに向けて
 



その頃、京都の繁華街、新京極にライヴ喫茶ができた。それでオーデションで出演者を募集して選んだのだった。京都中のバンドや歌手たちが集まって競い合ったものである。
幸い、わたしも出演者に選ばれて日曜の昼一時間担当することになった。「日々の夕べに」リアルリアル・ラヴそして何が残った打ち上げ花火などオリジナルを中心にギターを弾き語りした。
その店で、イギリスから帰国して1973年に近畿放送と改称する前のKBS京都テレビで「POPS IN PICTURE(ポップス イン ピクチャー)」という洋楽番組を始めた川村尚(ひさし)、愛称がデデで川村龍一という名前も使用していたデデさんがラジオの生放送をしたこともあった。その時実際の顔を見た。
川村さんがやっていた「POPS IN PICTURE」は日本の洋楽ヴィデオ番組の端緒だった。当時はヴィデオ機器が高価で洋楽ヴィデオ自体がほとんどなかった。わたしたち洋楽ファンはそれまで「ミュージックライフ」などの音楽雑誌やラジオで情報を得るだけでライヴを見に行く以外にはアーティストの演奏する姿を見る機会がなかったのだ。入手困難な多くの海外のアーティストの映像をデデさんが見せてくれたことでその後の日本のミュージシャンの感性が育った。わたしも大きく影響を受けて感謝している。そのデデさんは2012年に亡くなっている。洋楽の種蒔き人、デデさん、ありがとう…、合掌。
fumio



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