1970年代後半にわたしは出会って間もない妻とハリウッドヒルのユニバーサルアンフィシアターで催されたボズ・スキャッグスのコンサートを観た。それはなにもかもが素晴らしいコンサートだった。以後それ以上のコンサートを観たことがないので妻とよくあの夜のコンサートの感動を話し合う。
そして最近、夜になると妻がわたしにボズ・スキャグスを唄えという。
ボズ・スキャッグスの最大のヒット曲We are all aloneを初めて聞いたとき、あんな高いキーでよく歌えるものだ、すごい歌手がいると感心したものだった。
この曲の歌詞はレコーディング当日までできあがっていなかったという。マイクのランプがついてもまだ考えあぐねていて歌いだしてやっと歌詞が出てきた。そして歌詞ができていなかったために練習していなかったので歌いだして初めてバックのオケのキーが間違って高すぎることに気付いた。出ない高音で何回もトライして歌い、喉が回復するまで休み休み6時間かけてやっと全体が完成したのだ。あの歌詞は歌のレコーディング中に歌いながら即興でできあがっていったために思いがけず哲学的な深い意味を持つことになったのだ。なにが幸いするかわからない。キーを間違えて無理やり出した高音も出ないギリギリの高さで歌ったために感極まったような唱法になり聴く人の胸を熱くし感動させることになったのだった。
fumio
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