風をうけて vol.3

お引越ししてまいりました。
拙いブログですがよろしくお願いします。

“記憶”

2010-01-10 11:24:53 | 日記・エッセイ・コラム

2010_01060006 ある夜、夢を見た。

正確に言えば、それが夢であったのか

ただの妄想で、想像の世界が

脳内を駆け巡ったのか

その辺の事はまったく理解できていない。

ただいえるの事は、

現実のものと区別ができぬほど,それらがリアルに繰り広げられていたこと、

そして夢や妄想の世界では考えられない肌に感じる温度や、匂い、痛みまでも

感じ取れていたこと。

もしかしたら、“現実”だったのかもしれない。

その日、私は仕事の疲れか走り疲れたせいか、少しの晩酌後

いつの間にか睡眠の闇の中に投げ出された。

やけにその酒の効きが早く、いつもの半分も呑んでいなかったと思う。

「睡眠」というより「意識を失った」、と言うこことに近かったと思う。

どのくらいの時間そうしていたのだろう、ふとスイッチが入ったように

目が覚め時計を見ようと渡りを見回すが、明らかに視線に入る先は

さっきまでいた自宅の居間ではない。

信じられないことだがいつの間にか戸外にいるのであった。

そして木々の隙間から眩しい光が見えていた。

2010_01080005 まったく理解のできない光景。

そうだ、夢を見ているのだ。

そう自分に言い聞かせるのだが

いつも見る夢とはかなり

違うものも感じていた。

しかし、この状況を

説明するには夢だと思うしかないだろう。

それとも酔ったがためにありえない現実を妄想しているのか。

まったく見覚えのない土地、そして深い森の中なのか、回りに見えるものは

巨大な木々だけの場所にいきなり放り出されたのだから、

そう思わずには説明の仕様がない。

しかも、何かがおかしい。からだ全体に異変を感じていた。

まったく足が動かないではないか。

そして、その足がどうだという前に、からだ全体を感じていなかった。

いったいどうしたと言うのだ!

私はどうなってしまったのだ。!

そんな状態をまったく理解できず、必死にもがいてみたがなんら状況が

変わることもなかった。

腕を捜し、足のある位置を見つめ、顔に手をやる動作をしてみても

何もかもがない。

ドラマや映画などで見るよくある悪夢のパターンなのだが、あまりにリアルすぎるし

もしこれが本当に夢なら、これほど嫌な感じの夢はないとも思った。

早く目覚めてしまおう、早く起きよう、そう思うのだが夢を

見ていると言う感覚さえもないのだ。

そういえば、子供のころにもやはり同じような夢を良く見ていたような気がする。

静かな森の中に小川が音を立てて流れている夢、

それに良く似た景色であることも思い出していた。

2010_01030037

そんな状況下の中

冷静に見ればとても

落ち着けるこの場所では

あるのだろうが、今となっては

事が事だけに、その静けさが

やけに不気味に感じてしまう。

それでも気持ちのうえでは不安や恐怖は感じつつも、

心地よい何かに包まれたような暖かな安定も同時に感じていた。

懐かしい感覚。

不思議だった。

時間が経てば経つほど安らぐ。そこにはもう恐怖などない。

自然とその世界の住人となれるような気がしてならなかった。

ここで生きてゆく。

人間としてではなくこの静かな森の住人となって今までの人間社会で

生きてきたすべてのことを忘れ、魂だけの生命体(?)となってこの空間の中で

生きていく。

それも悪くはないかと思った。

それにしても、この懐かしい気持ちは何なのだろう。

見たことのないこの風景、この匂い、この静けさ。

なのに全てが懐かしい。

2010_01080001_3 そして私の記憶のないところで

実は私は人間としての生命を受ける前は

ここの住人だったのではないかと

ぼんやりであるが、そう思うようになった。

あまりにばかげた話である。

まるで子供が考えるようなおとぎ話にも似たこの現実。

もうその時点で自分が人間であると言うことも薄れていっていた。

全てのそれまでの人間としての記憶を失いつつ、

“同化” 

徐々にこの森に溶け込もうとしている自分がいる。

何故だか分からないが、それが自然の成り行きだと感じている自分がいるのだ。

その反面、「人間、人間、人間の私はどうするのだ・・・!」と言う気持ちが

全くなくなった訳でもない。

“葛藤”

そして、目が覚めた。

手も足もからだもある。そしていつもの部屋に。

人間としての自分の気持ちに戻ったのだ。

ここまでの出来事が夢だったのか妄想だったのか、

それともまさかの現実だったのか、今となってはその事実を知る術はない。

だが、森に溶け込もうとしていた自分も、人間に戻ろうとした自分もいた事は

自分の記憶の中にしっかり刻まれている。

いつしか人間としての命を全うしたとき、そして命が燃え尽きたとき、

あの森に帰ろうと、心穏やかにそう思った。

懐かしい空間、心落ち着く景色、子供のころから思い描いていた世界。

私の心の小さな一部は既にそこにいる。

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4 コメント

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睡眠中は一種の仮死状態ですからね。。こればかり... (古代史ランナー)
2010-01-11 10:37:50
睡眠中は一種の仮死状態ですからね。。こればかりは科学では解明できない“文学的”要素が多く含まれているように思います。
一路さんの体験とは異なりますが、自分は「あれ?この前の夢の続きだ」という夢をたまに見ます。
また、関係ないのですが、目黒川の桜に運命を感じています(笑)
過去に2回、夢に出て来ていたのですが……当時は“夢の世界”だと思っていました。
しかし2年前の事。用事があって中目黒に行ったのですが、その時は本当に驚きましたね!何せ夢の中の風景が目の前に広がっていたのですから。
でもどこか、「あ、ここか」と納得している自分もいました。おそらく何気なく見た雑誌にでも載っていた桜が、頭にインプットされたのかな、と。
どうでも良い話でしたが(笑)、本当に夢って不思議ですよね。
そういえば人によってカラーかモノクロかに分かれるらしいですよ!因みに自分はフルカラーです♪一路さんはどうですか??
返信する
なんか、疲れそうな夢ですね (yoppe)
2010-01-11 11:19:27
なんか、疲れそうな夢ですね
人間は毎日夢をみているといいますから
目覚めた時に、それを覚えてるのか覚えてないのかの差らしいですから
時々、ありますよね
あ、ここ前にもきたことあるとか、この風景前にもみたことあるって
もしかして、前世で同じ経験をしたのかなって
私は、山の中の「なきうさぎ」だったんだって思ってます
かわいいでしょ?
でも、やっぱり人間がいい(笑)
そういえば、初夢見たかな~?
それすら覚えてない私です^^;
返信する
私も読ませてもらっていて、途中でこれが現実なの... (miho)
2010-01-12 21:14:17
私も読ませてもらっていて、途中でこれが現実なのか夢なのか解らなくなりました。
そして、覚醒途中の行ったり来たりのまどろみの中に居るようなあのとっても心地よい感覚がふっと過ぎりました。

何なんでしょう?
一路さんマジック?

木々の隙間からのまぶしい光・・・森・・・
返信する
Unknown (一路)
2010-01-13 16:33:07
     古代史ランナー様へ



私の夢は、説明がつかぬほどの輝きの中にあります。
しっかり自然色のカラーなのですが、やけにぎらぎらしている。
子供のころから同じ景色の中にず~っといるんですよね。
しばらくそんなことを忘れていたのに、また同じ夢を見るようになっています。
ピンポイントで同じ景色が出てきてここは自分の心の中に
焼きついた風景だと感じてしまう。
もしかしたらその風景の中にいることは自分にとって夢の世界ではなくって
実際にそこにいたのではないかと、ふと思ったりして・・・。
古代史ランナーさんの言うとおり何かで見た記憶が焼きつき
それを夢の中で再現しているとも思われないでもないです。
でも不思議と落ち着くその場所は、きっと私にとって何かある場所だと
信じているんです。
全くのおとぎ話、不思議の国のアリスじゃないんだから・・・って。
そう思っていても見てしまったものはしかたないですね。




__________________





        yoppe様へ



いや、それが疲れないんですよ。
かえって、その場所が好きで落ち着くようになってしまったんですよね。
眠る前にまたあの夢を見たい、って思うようになってもいたりして・・・。
夢見る夢男くんになっちゃった。(笑)

で、今日から一級の寒波到来。
相当雪が激しく降るらしいですが、
そんな雪深い山の中にいるなきうさぎって冬眠しているの???
ウサギの仲間?それともリスの仲間?
夏の山にいたyoppeさんの写真が思い出されました。
今頃寒さに震えているのかなぁ。
でも、それがyoppeさんの前世とは、ねえ・・・、その後は言えません。(笑)
私も殆ど見た夢は初夢も含め記憶にないのですが
このことばっかりははっきり覚えている不思議体験です。




__________________






        miho様へ



私もこの光景だけははっきり覚えているんですよね。
夢って、どちらかと言うとぼ~っとした感覚で
鮮明に音や温度や肌に感じる感覚って無いじゃないですか。
でもこの日はそんなものまでもがはっきり分かるんですよ。
水に触れば冷たいし、風に吹かれる感じや音が
ステレオ放送のように感じられた。
もしかしたら、幽体離脱???
ちょっと、テレビとかの見すぎでしょうか。
でもその光景が子供のときからず~っと変わらずにあるっていうのも
不思議ですし、その事をいまだもって覚えていると言うのが
また不思議です・・・。
マジック、もしかしたらそうなのかもしれませんね。
自分でも訳の分からない世界です。

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