5km18分49秒
部門別順位 8位
これが今回の
「鴻巣パンジーマラソン」の結果だ。
思い返せば、
それは確か、
走り始めた頃の
何レースか目の大会。
何処のなんと言う大会かは忘れてしまったが、記憶をしているのが
「18分台で走れば入賞なのか・・・」と、思った事。
その日の大会で5kmの距離を20分台まで伸ばし、
少しだけ順位に欲が出てきて、表彰台に上る選手を羨ましく思い
自分にはハードルの高いタイムだと思っていても、
もっと頑張れば、もしかしたらあの輝いた場所に
自分もいけるのではないかと思い始めていた。
まさにそれは自分にとっての最大目標、
「夢の18分台」が確立した日でもあった。
それからと言うもの故障や病気、極端な不調の波を潜り抜け
何とか今までのベストタイム19分14秒を記録するまできていた。
が、ここまでだろうと、正直思っていた。
年々加齢と共に衰えていく筋力。
それに加え、
呼吸の不調でどうしても
心肺を強力に使う5kmのレースでは
私にこれ以上の伸びしろは
無いだろうと思っていたのだ。
事実、今シーズンの
美里町万葉の里
ハーフ駅伝の約4km、上里町乾武マラソン5kmの
両レースではキロ4分でしか走れなかった。
それでもこの間のふかやシティハーフマラソンで自己ベストを記録したレース、
ここで心肺を長い時間使い続けたし、かつて無かったくらいに足も心も
使い続けた効果が表れたようにも思うのだが、
この鴻巣の前日の練習で軽く走ったつもりの500mが
1分45秒で走れていたのだ。
全力で走っていたそれまでの1分50秒前後のタイムより
確実に速くなっていた。
時計を見る我が目を疑ったが、
紛れも無くそれは間違いの無い事実。
それまでの何本かのレースが
確実に短い距離に
順応する力を養っていたようだ。
それでもやはり前回のハーフの
ダメージは色濃く、筋肉痛となって
私に不安の影を落としていたし、
このレース当日は今年もご他聞にもれず、夜勤の週の土曜日開催で、
この日も仕事帰りの無睡眠で挑む大会であり、慣れているとはいえ、
さすがに自己ベストの更新はダメだろうなとも思っていた。
この日は快晴ではあるけど、北よりの風がやや強く、大量に掲げられている
鮮やかな黄色の大会幟がはためいていた。
やがて大会がスタートし、早朝の低温をものともせず元気に飛び出していく
子供達や、次々にスタートしていく各部門の選手達を目で送りながら、
私といえばアップに余念が無い。
100m位の距離を何本も流し、そして心拍を強制的に上げる。
しかし思ったよりスピード感もないし、足の運びに違和感も感じる。
この世に及んで今更修正などもできるはずも無く、少々諦めムード。
いつかぽんぽこ師匠に助言されたフォームの大きさだけに気を配り、
アップを終了する。
そしてスタート位置に。
いつもの大会ならば
中学生も同時の
スタートとなるのだが、
この大会はそこが違う。
中学生よりも2分遅れでの
一般の部のスタート故、
スタート位置をチャラけた
中学生で占拠されることは無い。
その代わり、途中で中学生にバリアを張られてしまう危険性はあるのだが・・・。
スタート前の数分間、完全なフラットでコーナーも極端に少ないこのコースで
昨年は19分20秒を記録しているこのレース。
そんな実績から、せめて今日も19分台だけは死守しようと気合を入れる。
号砲一発、トラックを半周し、いざ戦いのロードへ・・・。
いきなり向かい風の洗礼を受ける。
一瞬たじろぐが、やや前傾を深め、早くリズムをつかもうと足のテンポを確認。
ふと前方に目をやると早くも1kmのキロ表示。
3分45秒
悪くは無い。
いや、良いタイムだ。
スタートロスも無く、
詰まる事が無いと言う事は
ここまでタイムに影響するのかと、
少しの驚きでもあった。
前に長身の男性、
横に若い女性、
その周辺にも
何名かいたが、結局は私を含めてその3人でのバトルモード。
長身の男性は腰高で、いかにも快足ランナーのフォーム。
女性はストライドよりもピッチで走るタイプのようだ。
クランクの交差点を曲がると更に向かい風が強くなり、失速を感じる。
そこに2kmの表示。
7分44秒
落ちた、、、いつものキロ4分だ・・・
やはりこれが
自分の限界なのかと、
気持ちもかなりへこむ。
すると折り返してきた2分前に
スタートした中学生の
トップ集団とすれ違う。
すざましいスピードだ。
そうか、
追い風に乗って走るとそこまでスピードが上がるのか。
それなら何とか折り返せばこのスピードは少なくとも維持できるだろう。
しかしそのままでは19分45秒程度の記録。
飛ばせ、飛ばすんだ、と自分に言い聞かせるも依然向かい風に悩まされる。
そして折り返し地点。
9分44秒
相変わらずのキロ4分ペースだ。
が、折り返した瞬間、真空になった。
風の抵抗がまったく無くなった。
これが追い風の特徴だ。
依然、前方の長身の男性の背中を追って走る。
その距離は変わらない。
すると、やや後方に
いたと思われた若い女性が
スパートした。
私どころか長身の男性も
あっという間に引き離す。
それを追って私も勝負を仕掛ける。
女性とは離れていくが
長身の男性は置き去りにする。
「くそー、負けてなるものか」と、有り得ないスピードで必死に走る。
そのスピードに足が追いつかない。
何度か足元がもつれながらもストライドとピッチを意識、
前傾を深く取ると腿が上がらなくなるので、姿勢にも気を配る。
が、そんな冷静な思考とは裏腹に、呼吸はマックス。
このままでゴールまでいけるのかと、初めて5kmのレースで完走を疑う。
仮に倒れる事は無いにしても、その後の呼吸のダメージが怖い。
しかし、今はそんな事は関係ない。
ともかく今は風のように走れているのだ。
この瞬間、
この瞬間を今まで
追い求めてきたじゃないか。
緩めない、絶対に緩めない。
すると後方に人の気配を感じる。
ひとりの若いランナーに
あっという間にかわされた。
更に沿道の応援から笑いと、「サラリーマン!」とか
「スーツ」とかの声が聞こえると同時に、あっという間にスーツ姿の
ランナーに並ばれた。
そのままゴールとなる陸上競技場に入る。
もう目の前にはゴールゲートが見えている。
微妙にスーツ姿のランナーが前に出たが、それを追うスピードはもう無い。
根性が仮装に破れてのゴール。
が、何故か口惜しくなかった。
もうありったけの力を出し尽くしたのだ。
倒れこむような事はしないまでも、心は完全に逝き切れたと放心状態。
参加賞をいただき、ふらふらと記録証発行場所へ・・・。
前の方が「入賞は何番まで?」と聞いている。
羨ましい会話だなと思いながら、自分の記録証に目をやる。
18分49秒の下に
8位の文字が!
「入賞は何番までですか!」と、
同じ事を聞いてしまった。
結局6番までであると確認すると
多少はがっかりするものの
そのタイムに何度も
こぶしを握り締めていた。
嬉しいというよりも、何がなんだかわからない状態。
とたんに落ち着きが無くなり、あっちに行ったり来たりしている。
そして次第に自分のやった事が信じられなくなる。
とうとうつかんだ「夢の18分台」をかみ締める事も無く、ただただ落ち着きがない。
その後、仲間のところに行っても、
何故か落ち着かず
まったく何をやっていたのかと・・・(笑)
今は夢が夢でなくなり、
現実になってしまった。
しかし、私は本当に5kmを
18分台で走れるランナー
なのかと今でも疑っている。
真の18分台ランナーでいる為にはまだまだ精進しなければならない事は
判っているつもりだ。
夢は叶っても覚めてしまったら本当は夢だったと言うのではあまりに悲しい。
まだまだである。
奇跡の夢の達成でなく、正真正銘の夢の確立となるように次への決意を
硬く固めたのであった。
写真は同時開催のビックリひな祭りの模様です。