「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

陪審員12人、 議論21時間 -- 選択の重さ (9)

2009年06月07日 11時22分09秒 | 死刑制度と癒し
 
 米国の陪審制では 量刑は裁判官が決めますが、

 死刑が求刑された 事件だけは、 陪審員が刑を決める 州が多く、

 死刑の判断を 市民に委ねています。

 昨年2月6日、 米サウスカロライナ州の評議室、

 12人の陪審員たちの 採決は大きく割れました。

 被告の男は2006年に 妻を銃殺した罪で 起訴され、

 無罪を主張しましたが、 陪審員は有罪と判断。

 何度か採決を 重ねた末、

 10人が死刑、 残る2人は 終身刑を支持しました。

 午後6時半、 評議初日が終わりました。

 2月7日、 評議2日目。

「 死刑より終身刑で、 一生罪を償わせるべきよ 」

 元刑務所職員の 60歳代の女性が言いました。

「 終身刑にしたら、 この被告は反省することもなく、

 雑居房で 無罪だと言い続けるだろう 」 と 別の陪審員が反論します。

 女性はほどなく、 終身刑から 死刑支持に回りました。

 終身刑を主張するのは、 40歳代の黒人男性 一人になりました。

 男性は 死刑の刑罰そのものを 否定して譲りません。

 2月8日、 評議3日目。

「 そもそも死刑制度に反対なら、 この事件の陪審員に なる資格はない 」

 黒人男性は、 「 皆がそれほど強く 死刑を主張するなら、

 やむを得ない 」 とつぶやきました。

 3日間で 計21時間に及んだ 評議は終わり、

 全員一致で 死刑の結論になったのです。



 日本の裁判官は、 過去の量刑例を 緻密に比較しながら、

 極刑を選択するかどうか 判断してきました。

 しかし 東京高裁の裁判長を務めた 村上光鵄 (こうし) 氏 (69) は、

 死刑に関して 職業裁判官が培ってきた感覚と、

 一般社会の処罰感情の間に 差が生じているような 気がしてなりません。

「 自分たちの結論は、 国民が考える刑より 軽いのか 」

 5月から 裁判員制度が始まりました。

 国民が選択の重みを、 裁判官とともに 噛みしめる日が来たのです。

〔 読売新聞より 〕
 
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