「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

真の謝罪とは -- 償いの意味 (4)

2009年06月15日 14時42分41秒 | 死刑制度と癒し
 
 88年、 共謀して 会社経営者ら二人を殺害し、

 現金1億円を奪った 河村啓三被告 (50)。

 拘置所で 僧侶の教誨を受け、

 独房では毎日読経して 被害者の冥福を祈っています。

 遺族には 謝罪の手紙を送り続けました。

 そして 98年の初夏、 被害者の父親から 初めての返事が届き、

 河村被告は 体の震えが止まらなくなりました。

 謝罪の気持ちが 遺族に伝わって、 一層、

 自分の犯した 罪の重大さに 向き合わざる得なくなりました。

「 一日でも早く 刑死されるべきだと思います。

 しかし 生かされているのも 仏のおぼしめしだと考え、

 一生懸命生きていこうと思う 自分がいます 」

                   *

 06年、 仙台高裁は 一審の無期懲役を破棄し、

 高塩正裕被告に 死刑を言い渡しました。

「 死刑判決という結果に対し、

 素直に頭を下げられた 自分の気持ちを大事にしたい 」

 高塩被告は04年、 民家に押し入って 女性とその次女を刺殺し、

 約5万円を奪いました。

「 二人を殺した自分は、 他人の手で 殺されるのが当然 」

 内田正之弁護士 (52) は、 高塩被告に上告するよう 説得を重ねました。

「 本当の後悔や謝罪は、

 自分の心の闇を 見つめ続けた果てに 得られるのではないか 」

 死刑に処せられること自体が 目的になると、 そこで思考が 停止してしまい、

 真の意味での 反省に到達できないように 思えたのです。

 高塩被告は 自ら上告を取り下げ、 08年の10月に 死刑が執行されました。

 遺族に 謝罪の気持ちを示すことは ありませんでした。

「 今さら謝っても、 口先だけの謝罪になってしまう。

 死刑になることが、 まっとうな落ち着きどころだ 」

 遺族の女性は、

 法廷の被告から 反省の気持ちが 伝わってきたことはありません。

「 ただ死ぬだけでなく、 一言でいいから、 心から謝ってほしかった 」

〔 読売新聞より 〕
 
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