「 もう取り返しがつかない 」
岩田弁護士 (63) は、 死刑執行の知らせを聞いて、 絶句しました。
久間死刑囚 (70) は92年に、 福岡県飯塚市で
小1女児をふたり 殺害したとして、 06年に最高裁で 死刑が確定。
一貫して 無罪を主張しており、
再審請求の準備をしている 最中だったのです。
この飯塚事件では、 証拠とされたDNA鑑定は 「MCT118型検査法」。
過日 管家利和さんが 17年ぶりに釈放された 足利事件と同じです。
「 DNA鑑定は一見 科学的に見えるからこそ、 うのみにするのは危険だ。
特に 90年代初期の鑑定方法は 極めて杜撰だった 」
と、 岩田弁護士は語ります。
一方 捜査官の一人は、 状況証拠を積み重ねて、
DNAだけに頼ったわけではない と反論しています。
米国では、 死刑判決後に 冤罪が明らかになって
釈放された死刑囚は、 133人。
自白や目撃証言に 問題があったケースが多く、
最近は DNA鑑定で有罪が覆る 例が続いています。
イリノイ州では2000年に、 死刑囚で13人目の 冤罪が発覚しました。
同州ではその年から 死刑執行を停止。
DNA鑑定を受ける 権利の保障と、 鑑定資料の保管を 義務づけました。
全米で 執行者数が激減しています。
日本で 死刑囚が再審無罪となったのは 戦後4件で、
事件は 48~55年に起きています。
DNA鑑定導入後の足利事件で 無罪が確実になったことは、
日本の冤罪の危険を 突きつけました。
ある法務省幹部は、 慎重の上にも 慎重を期して調べ、
問題がないと確信した 死刑囚についてのみ、 刑を執行してきた と言います。
また別の幹部は、 科学的な証拠が 重要な位置を占める 事件では特に、
多角的に 洗い直さなければならない、 と語っています。
〔 読売新聞より 〕