フランスはかつて ギロチンの国でした。
斬首による死刑制度は、 1981年まで190年間 続けられていました。
( 1939年までは公開処刑でした。 )
当時の世論では、 死刑賛成が62%、 反対が33%でした。
それでも、 死刑廃止法案は 国民議会で可決されました。
「 世論が変わるのを 待っていたら、 死刑はいつまでも 廃止できなかった。
政治家は、 時に先を読んで 国民を正しい方向に 導くべきだ 」
当時の司法大臣 ロベール・ダンテール氏 (81) は 語ります。
「国家」 が、 人の生きる権利を 奪うことは
許されないと、 氏は強調します。
死刑廃止後、 凶悪事件の件数には 統計上、 顕著な変化は 見られません。
廃止から18年後の 99年、 世論調査で
死刑反対 (48%) が 賛成 (46%) を 初めて上回り、
以後 その差は広がっています。
ギロチンがなくても 治安は守られると、 人々が確信を 持つに至ったのです。
「 憎しみからは 何も生まれない 」
犯罪被害者遺族の支援団体 「 APEV 」 の
アラン・ブーレイ代表 (62) は、 訪ねてくる遺族に 語りかけます。
死刑廃止の88年、 9歳だった娘が 誘拐され、 命を奪われました。
判決は無期拘禁刑。
アラン氏は、 犯罪で子供を失った 遺族を助けたいと、
APEVを設立しました。
フランスでは 国などが犯罪被害者に 金銭的な補償する制度が 整備され、
民間の支援団体も 多くあります。
命の償いを 求めない代わりに、 社会全体で 被害者を支えるのです。
「 犯人に対する報復感情は、 苦しみを共に癒す 仲間がいることを知れば、
時間と共に変わりうる 」
ブーレイ氏は そう信じています。
〔 読売新聞より 〕