「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ギロチンなくても 治安守られる -- 償いの意味 (8)

2009年06月23日 21時39分34秒 | 死刑制度と癒し
 
 フランスはかつて ギロチンの国でした。

 斬首による死刑制度は、 1981年まで190年間 続けられていました。

( 1939年までは公開処刑でした。 )

 当時の世論では、 死刑賛成が62%、 反対が33%でした。

 それでも、 死刑廃止法案は 国民議会で可決されました。

「 世論が変わるのを 待っていたら、 死刑はいつまでも 廃止できなかった。

 政治家は、 時に先を読んで 国民を正しい方向に 導くべきだ 」

 当時の司法大臣 ロベール・ダンテール氏 (81) は 語ります。

 「国家」 が、 人の生きる権利を 奪うことは

 許されないと、 氏は強調します。

 死刑廃止後、 凶悪事件の件数には 統計上、 顕著な変化は 見られません。

 廃止から18年後の 99年、 世論調査で

 死刑反対 (48%) が 賛成 (46%) を 初めて上回り、

 以後 その差は広がっています。

 ギロチンがなくても 治安は守られると、 人々が確信を 持つに至ったのです。


「 憎しみからは 何も生まれない 」

 犯罪被害者遺族の支援団体 「 APEV 」 の

 アラン・ブーレイ代表 (62) は、 訪ねてくる遺族に 語りかけます。

 死刑廃止の88年、 9歳だった娘が 誘拐され、 命を奪われました。

 判決は無期拘禁刑。

 アラン氏は、 犯罪で子供を失った 遺族を助けたいと、

 APEVを設立しました。

 フランスでは 国などが犯罪被害者に 金銭的な補償する制度が 整備され、

 民間の支援団体も 多くあります。

 命の償いを 求めない代わりに、 社会全体で 被害者を支えるのです。

「 犯人に対する報復感情は、 苦しみを共に癒す 仲間がいることを知れば、

 時間と共に変わりうる 」

 ブーレイ氏は そう信じています。

〔 読売新聞より 〕
 
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