新しい介護施設は、 開設に向けて 甚だ心許ない状態ですが、
系列の既存施設では とても良いケアが 行なわれています。
研修期間に経験した 幾つかの例を、 書いていきたいと思います。
認知症のIさんが、 食事の前に しきりにリンゴを食べたがっていました。
食事前に デザートを食べていいのか、
あとで皆と一緒に 食べたほうがいいのではないかと思いながら、 見ていました。
Iさんは リンゴを割ろうとしたり 皮をむこうとする仕種をし、
リンゴを洗って 皮をむいてもらったほうが いいのかとも考えました。
そして、 しまいにIさんは リンゴを丸ごと かじり始めてしまいました。
あとで スタッフの人に聞いてみると、
食べたいときに食べるのは 一向に構わないとのこと。
ただし、 皆が食べないときに 一人だけ食べたり、
しかも 丸かじりなどをしていると、 他の利用者さんから、
「あの人はおかしな人だ」 という 目で見られてしまいます。
それは その人のためにならないので、 避けなければいけないというのです。
他の利用者さんとの 関係も大切なのです。
そのため、 リンゴを食べてしまったとき、
例えば 「先に味見を してくれたんですか?」 「味はどうですか?」
などと声をかけるといい ということでした。
リンゴを洗って、 皮をむいて食べてもらうのも いいそうです。
さらに、 そのリンゴを 他の利用者さんに分けてもらうと、
他の利用者さんからも 「あの人は分けてくれる人だ」 と思われて、
その人のためにもいい ということなのでした。
Iさんはいつも 何かを食べたがりますが、 あるとき お菓子の箱を見つけ、
お菓子を他の人に配り、 数が全員に 行き渡らなかったのですが、
最後のひとつはちゃっかり 自分で食べていました。
でも、 分けてもらった人からは 感謝されるということが分かり、
それからIさんは 人にも分けるようになりました。