専門家が関わる場合は、 何を目的とするかが 重要です。
当面困っている問題を 改善することか、 自立能力や適応力を 高めることか、
自分を見つめ直して 根本的な改善を図ることか、 はっきりさせる必要があります。
ただし 主体はあくまでも本人です。
その上で、 治療の時間や 突発的な事態への対応など、 ルールを決めておきます。
危険な場合は 入院させるなど、 より制限の強い 治療も必要です。
最悪の場合についても 触れて、 釘を刺す必要があります。
枠組みを 再三守れないときは 関係を終結させる、
そういう厳しさが 変化を生む原動力になります。
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
心子は 目的と枠組みを持った 治療は受けていませんでした。
診察室の中では、 まだそのレベルまで
行っていなかったのではないかと 推測します。
想像ですが、 診察室では ある時期まで、
ボーダーの症状は 出ていなかったのかもしれません。
心子は自らカウンセラーをし、 心理学の勉強をしていながら、
自分がボーダーである 病識がありませんでした。
それは今でも 不思議なことなのですが、
ボーダーの治療は 自分で治したいという 強い意志が不可欠なので、
その意味でも 治療段階に至っていなかったのかもしれません。