「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

穏やかで 冷静な態度をとる

2010年01月15日 20時19分05秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害では、 基本障害として 情動のコントロール不全があり、

 それに対して 感情的な反応で返してしまうと、

 たちまち激しい ぶつかり合いになってしまいます。

 本人が 強い感情を見せても、 穏やかで冷静な態度で 応じることが基本です。

 自分の苦しさを 分かってもらおうとして、 それを相手にぶつけたり、

 ときには 相手の急所を ぐさっと突くような攻撃をしてきます。

 「そういう言い方を聞くのは とても悲しいな」

 などと 冷静に返すと、 本人も落ち着きやすいといいます。

 ただ 例外もあります。

 ときには 怒りや悲しみをあらわにすることが、 必要な時もあります。

 「逃げても 何も変わらないぞ! 」

 と 一喝することが、 本気を示すために 不可欠な瞬間です。

 ただし あくまで例外であり、 例外であるからこそ 力を持って、

 ターニングポイントとなることがあるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 僕は心子の 激しい感情に対して、 感情で返すということは 絶対しませんでした。

 どんなに辛くても 受け入れるということだけは、 常に自戒していました。

 でも、 穏やかな態度で 言葉を返すことはできませんでした。

 心子が攻撃的になっているときは、

 何をどう言っても 通じることはなかったと思えます。

 ただ、 自殺企図を見せたときは、 一喝したこともあります。

 僕が隠していた包丁を、 心子が見つけてきて 自分の首を刺そうとし、

 僕は包丁をわしづかみにして 取り上げました。

 「どこから探してきたんだ! 」

 それが良かったのかどうか、 心子は落ち着いてから こう言ったのです。

 「……いつもありがとう。 

 マー君に何度も命を助けられた。

 清志でもない、 お母さんでもない、 森本先生でもない、

 マー君が助けてくれた。 

 本当にありがとう……」
 
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