境界性パーソナリティ障害では、 基本障害として 情動のコントロール不全があり、
それに対して 感情的な反応で返してしまうと、
たちまち激しい ぶつかり合いになってしまいます。
本人が 強い感情を見せても、 穏やかで冷静な態度で 応じることが基本です。
自分の苦しさを 分かってもらおうとして、 それを相手にぶつけたり、
ときには 相手の急所を ぐさっと突くような攻撃をしてきます。
「そういう言い方を聞くのは とても悲しいな」
などと 冷静に返すと、 本人も落ち着きやすいといいます。
ただ 例外もあります。
ときには 怒りや悲しみをあらわにすることが、 必要な時もあります。
「逃げても 何も変わらないぞ! 」
と 一喝することが、 本気を示すために 不可欠な瞬間です。
ただし あくまで例外であり、 例外であるからこそ 力を持って、
ターニングポイントとなることがあるのです。
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
僕は心子の 激しい感情に対して、 感情で返すということは 絶対しませんでした。
どんなに辛くても 受け入れるということだけは、 常に自戒していました。
でも、 穏やかな態度で 言葉を返すことはできませんでした。
心子が攻撃的になっているときは、
何をどう言っても 通じることはなかったと思えます。
ただ、 自殺企図を見せたときは、 一喝したこともあります。
僕が隠していた包丁を、 心子が見つけてきて 自分の首を刺そうとし、
僕は包丁をわしづかみにして 取り上げました。
「どこから探してきたんだ! 」
それが良かったのかどうか、 心子は落ち着いてから こう言ったのです。
「……いつもありがとう。
マー君に何度も命を助けられた。
清志でもない、 お母さんでもない、 森本先生でもない、
マー君が助けてくれた。
本当にありがとう……」