「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

甦った脳波 …… 「生死命の処方箋」 (62)

2010年12月27日 20時17分33秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」

(前の記事からの続き)
 
○ 東央大病院・ オペ室

  ナースたちが安達に脳波計、 心電図、 

  血圧計などを着けている。

犬飼 「私も見学させてもらうよ」

  力なく頷く美和子。

  犬飼、 奥へ行く。

  美和子、 安達をじっと見ている。

  平坦だった脳波計が、 一瞬小さく波形を

  刻む。

美和子 「 !? …… 」

  他には誰も気付かない。

  脳波は平坦に戻る。

美和子 『(愕然として) 死後の残存脳波 …

 … !?  それとも目の錯覚 …… !? 』

世良 「(美和子の後ろから)いよいよ始まる

 な」

美和子 「 !! …… (ハッと息を呑む)」

世良 「どうしたんだ?」

美和子 「 …… いえ、 何でもない …… (動揺を

 隠す)」

  世良のポケットベルが鳴る。

世良 「こんな時に …… 」

  世良、 歯がゆそうに出ていく。

  狼狽する美和子。

  脳波計も安達も ピクリともしない。

  周囲は何事もなかったように 作業が進行

  している。

  

○ 同・ ロビー

  電話をかけている世良。

  

○ 警視庁

  電話をしている刑事。

刑事 「安達三郎さんの件なんですが、 取り調

 べ中の容疑者が 変なことを言ってまして。

 ええ、 この男は 薬物の知識があるようなん

 ですが、 (メモを見ながら) 睡眠導入剤の

 ハルシオンというのを、 安達さんに大量に

 飲ませたということなんです」

 

○ 東央大病院・ ロビー

世良 「(電話で) ハルシオン?  睡眠導入剤

  …… 」

刑事の声 「一応 お伝えしておこうと思いまし

 て」

世良 「(ハッとして受話器を離す) 急性薬物

 中毒 …… !? 」

  蒼白になって電話を切り 走っていく世

  良。

  受付に駆けつける。

世良 「第2オペルームの緒方先生に 連絡を取

 りたいんです …… !! 」

受付係 「はい、 どちら様でしょう ?」

世良 「緊急事態なんです !!  早くしてくださ

 い !!」

受付係「どういうご用件で ?」

世良 「(焦燥) 今オペルームにいる人が、 

 薬物の影響で 疑似的な脳死になってるのかも

 知れないんです !!  すぐオペの中止を…

 … !!」

受付係「はあ …… 少々お待ちください (怪

 訝)」

  受付係、 奥へ行って 年配の事務員に話を

  する。

世良 「(台をバシッと叩き) もういい …… 

  !!」

  世良、 全力で走っていく。

(次の記事に続く)
 
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