「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

沖縄リカバリートーク (5)

2013年12月07日 22時47分35秒 | 「BPD家族会」
 
(前の記事からの続き)

○ 解離

 あるとき、 心子は不穏になって ビールをあおりました。

 突然、 心子は キッチンの包丁をつかみ、 自分の胸を突き刺そうとしました。

 僕は大慌てで飛びついて 心子の腕をつかみ、

 包丁の切っ先は 心子の胸の寸前で止まりました。

 暴れ狂う心子を倒して 馬乗りになりました。

 普段の心子からは 想像できない力でした。

 心子は 聞いたこともない太い声で 吠えました。

 すると、 心子は にわかに無表情になりました。

 いくら呼んでも 肩を揺すっても、

 死人のような半開きの目で、 無意識状態に陥ったままです。

 人間の こんな顔は 初めて見ました。

 心子が最初に起こした  「解離」 です。

○ 父親との死の約束

 心子は僕に語りました。

 幼い頃 心子と父親は、 恋愛感情と言っていいもので 繋がり合っていたといいます。

 父親は 遺伝的な心臓病を抱え、 いつ発作に襲われて 絶命するか知れない体でした。

 独りで死ぬのを恐れ、 心子に連れ立って逝くことを 求めました。

 父を愛していた心子は、 自分も一緒に死ぬと 誓いました。

 心子が十歳のとき、 父親は発作に見舞われ、 1時間後に他界しました。

 しかし、 心子は死ねませんでした。

 父との誓いを破った ……

 それが 心子の人生を呪縛する、 根源的な心の傷になったのです。

(次の記事に続く)
 
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