「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

誤診される認知症

2010年07月15日 21時44分24秒 | 介護帳
 
 先日HNKで、 「誤診される認知症」 という 番組をやっていました。

 従来、 認知症は

 アルツハイマー型と脳血管性 〔*注〕 に 大別されていましたが、

 認知症の症状を 引き起こす原因は、

 現在では70以上あるということが 分かってきました。

〔 *注: アルツハイマーは、 脳に 特殊なタンパク質が溜まり、

 脳全体が萎縮していきます。

 脳血管性は、 脳梗塞や脳内出血によって、

 部分的に脳細胞が 壊されるものです。〕

 元の病気が 何であるかによって 治療法や対応が異なり、

 診断が違っていると 治療が逆効果になる場合も あるということです。

 しかし、 認知症は検査だけでは 原因が特定できず、

 患者の状態や 家族の証言から 推測しなければならない難しさがあり、

 誤診が起こりやすいといいます。

 アルツハイマー型と脳血管性は 全体の8割ですが、

 残り2割のうち 多くを占めるのが、

 レビー小体型認知症, ピック病, 正常圧水頭症,

 それから、 アルコール, 頭部外傷によるものです。

 読売新聞の医療ルネッサンスでも、

 「あきらめない認知症」 という シリーズが連載され、

 脱水症状や便秘などでも 認知症の症状を進めてしまうとありました。

 けれども、 老年精神医学の専門医は 日本に約800人、

 それに対して 認知症の人は 200万人以上いるといわれ、

 とても追いつかない状態だそうです。

 また、 介護施設の利用者は、

 認知症 (アルツハイマー, 脳血管障害) という 診断はあっても、

 それ以上の診断名はなく、 スタッフの対応は 限られてしまうのが現状でしょう。

 専門医が増え、 介護者や家族も 知識や理解を深めることが 求められます。

 上記の認知症の原因について、 ひとつずつ書いていこうと思います。

(次の記事に続く)

〔参考: NHK クローズアップ現代 「誤診される認知症」
     読売新聞 医療ルネッサンス 「あきらめない認知症」 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本当は淋しい

2010年07月12日 20時46分35秒 | 介護帳
 
 先日の記事に書いた、 介護拒否や暴力のある 利用者・Bさん。

(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60843403.html )

 相変わらず お茶をひっくり返したり、 何をしても抵抗したり、

 不貞腐れて 食事に手を付けなかったりしています。

 どうもBさんは プライドが高くて、

 「どうぞ」 とか 「召し上がってください」 などと関わると、

 “お前の世話になんかなるか” と 思われるようなのです。

 そこで、 お茶のカップを 持たせてあげるのではなく、 少し離れた所に置いて、

 知らんぷりをしていると、 そのうち手を伸ばして お茶を飲んだりするのです。

 食事も 世話を焼いて構うのではなく、 遠巻きに 見ないふりをして見ていると、

 一人で少しずつ 食べたりしています。  (^^;)

 施設にいる 認知症専門の看護師の先生によると、

 本当はBさんは 淋しいのだというのです。

 淋しいけれど それを素直に表現できず、 拒んだり歯向かったりしてしまうそうです。

 一目で  「淋しいんだよね」 と看破した、 認知症のCさんは すごいと思います。

(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60847305.html )

 Bさんはきっと しっかりと生きてきた人で、 今までできたことが できなくなり、

 そういう自分が 受け入れられなかったり、 悲しかったりするのかもしれません。

 人に面倒を見られるのも 許せないのではないでしょうか。

 愛を得られない悲しさが 怒りとなって噴出してしまう、

 心子やボーダーの人と 似たところがあるかもしれません。

 根本には 淋しさの感情があるのだ ということが分かれば、

 こちらの気持ちも変わってきます。

 時間はかかるけれど、 こちらは一貫した 受容的態度で、

 Bさんの心を少しずつ 解きほぐしていくしかないということです。

 いつか、 Bさんの笑顔が 見られるようになるといいですね。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「孤独にさせぬ」  雇う社長 -- 更生への道 (10)

2010年07月11日 20時55分30秒 | 罪,裁き,償い
 
 元調理師の男性 (52才) は、 窃盗を繰り返し、 2年あまり服役しました。

 妻子とは縁が切れ、 出所後は更生保護施設を頼り、

 前歴を隠して 職を探しましたが、 全て断られました。

 そして、 施設の掲示板に 求人を出していた、 土木建設会社に連絡を取りました。

 社長から、  「前歴も悩みも ありのままに話していい」 と 声をかけられ、

 気持ちが軽くなりました。

 この土木会社は、 出所者を受け入れる  「協力雇用主」 として 法務省に登録。

 今では 約100人の従業員のうち、 2~3割が出所者です。

 きっかけは、 窃盗事件の捜査に 協力したことでした。

 社長は、 「積極的に出所者を雇い、 会社を 再犯の歯止めにできないか」

 と考えました。

 出所者が再犯を繰り返すのは、 孤独だからだと思うのです。

 再犯者の7割以上は 無職の人です。

 法務省は 協力雇用主の拡大に 力を入れ、 10年前の約2倍になりました。

 しかし 中には、 出所者を雇っても 多くが短期間で辞めていったり、

 無断欠勤で 現場の作業が滞ることも 少なくありません。

 協力雇用主による雇用者は、

 07年の685人をピークに、 今年5月は505人でした。

 
 ある協力雇用主は、 強盗殺人などで無期懲役刑を受けた 元受刑者 (78) を、

 7年間雇い続けました。

 従業員とトラブルを起こしても 社長はかばい、前歴が知られないよう 気遣いました。

 元受刑者は、 被害者の墓参りを 毎年続けたことが 評価され、

 恩赦で刑の執行が 免除されました。

 「重罪をどう償うかは 本人の問題で、 過去を理由に 雇わないのはよくない。

 働くことで更生したいという 意思があるなら、

 誰かが 寄り添わなくてはいけない。」

 社長は そう信じています。

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「再犯が心配」  「支援に理解を」 -- 更生への道 (9)

2010年07月10日 22時09分51秒 | 罪,裁き,償い
 
(前の記事からの続き)

 これまで、 引受先のない仮釈放者の 受け入れは、

 民間の更生保護施設が 担ってきました。

 しかし、 現在104ヶ所で 数が足りない上、

 性犯罪や薬物犯罪の受刑者は なかなか地域の理解が得られません。

 2005年、 民間施設にいた 仮釈放中の男が、

 スーパーで乳幼児ら3人を 殺傷する事件を 起こしたのをきっかけに、

 処遇の難しい人を 国が引き受け、 指導する構想が浮かびました。

 自立センターの第一号は、 地元の反対を受けて、 法務省が代替地を探し、

 昨年6月に開設しました。

 住宅がまばらな 港湾地区です。

 ここでも反対があり、 入所者が通勤するときは、 最寄りの駅まで 車で送迎し、

 休みの日も 近所を一人で 歩かせないようにしています。

 これまで 20人が入所しましたが、 地域とのトラブルは 起きていません。

 民間の更生保護施設の中には、

 当初反対されましたが、 住民の理解を 得つつある所もあります。

 施設を建て替えようとしたとき 反対運動が起き、 20年間 再開できませんでした。

 今は 地域との融和を図るため、 公園清掃を請け負っています。

 入所者の仕事ぶりを見て、 個人で仕事を頼む 住民も出てきました。

 他方、 強い反対を受けた 自立センターでは、

 性犯罪者は 将来も入所させないことを 決めました。

 民間施設で受け入れ困難な人を 監督, 支援するという

 当初の理念は後退しています。

 法務省の処遇企画官は こう話します。

 「満期釈放で 社会に放り出されるより、

 仮釈放して 保護観察官が指導するほうが 再犯の可能性は低い。

 何とか理解を お願いしたい」

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自立センター  悩む住民 -- 更生への道 (8)

2010年07月09日 21時14分19秒 | 罪,裁き,償い
 
 自立更生促進センターは、 帰る先のない 仮釈放者が滞在して、

 自立の準備をする 国の施設です。

 その開所に反対する 地元中学校の保護者会が、

 反対の署名への依頼文を 生徒に配りました。

 開所を公表していた 保護観察所は、 市教育委員会に 非難の意思を表しました。

 「差別と排除の論理を 助長する活動が、

 学校現場で行なわれているとすれば、 憂慮せざるを得ない」

 センターの場所は 学校が多い地区で、 再犯を懸念する 住民の反対は根強く、

 250人がデモ行進を行なうなど、 対立しています。

 ある中学教諭は、 開所反対の署名を頼まれましたが 断りました。

 「生徒が失敗しても やり直せると信じるのが 教師。

 それは センターの理念は同じ」 と 思ったのです。

 けれども その後、 友人の女性が 性暴力の被害に遭いかけ、

 犯罪は身近でも起きると 実感しました。

 「生徒に何かあったら と思うと……」

 今は 反対の立場を取っています。

 一方、 最初は反対の署名をし、 その後、

 窃盗で服役中の男と 面会するようになった人がいます。

 男は 帰る場所がなく、

 「苦悩を背負っていくのも 私に課せられた試練」 と、

 手紙に 罪への悔いをつづります。

 「支援がないと 同じことを繰り返してしまうのでは」

 その人はそう思い、

 センター運営に 協力する会を結成して、 知人らに理解を求めています。

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

行き場のない 満期出所者 -- 更生への道 (7)

2010年07月07日 22時02分34秒 | 罪,裁き,償い
 
 服役中に仮釈放がなく、 刑期を 満期で終えた出所者は、

 不況下でもあり、 出所しても 簡単に仕事は見つかりません。

 仮釈放が得られなかった 満期出所者は、

 服役態度が良好でなかった ということもあるかもしれません。

 ある満期出所者 (58才) は、

 出所時に持っていた 作業賞与金など約17万円で サウナなどに寝泊まりし、

 その後わずか1週間で 強盗殺人事件を起こしました。

 仮釈放なら保護観察が付き、 更生保護施設で職探しをしたり、

 刑期満了まで定期的に 保護司らが面接したりします。

 刑期を終えた満期出所者を、 行政が監視する 法的根拠はありません。

 出所から5年以内に 再び刑務所に戻る割合は、

 (08年の集計で) 仮釈放者が32%なのに対して、

 満期出所者が55%と はるかに高くなっています。

 別の満期出所者 (57才) も、 ネットカフェなどを泊まり歩きました。

 健康保険なしに 心臓病の診察を受けなければならず、

 28万円の賞与金は 見る間に減っていきました。

 受刑者支援で知られる 弁護士に電話すると、 生活保護を申請してくれました。

 今は 生活保護を受けながら、 清掃の仕事をしています。

 満期出所者は、 盗みや無銭飲食を重ねるうち 自暴自棄になり、

 凶悪犯罪に走ることもあります。

 満期出所者を 社会に軟着陸させる仕組みを、 今すぐ整えなければなりません。

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5000万恐喝 元少年の明暗 -- 更生への道 (6)

2010年07月06日 20時13分25秒 | 罪,裁き,償い
 
 99~00年、 少年17人が 一人の中学生から、

 計約5000万円を 恐喝するなどし、 教育界を揺るがした事件。

 地検は主犯格に 刑事罰を科すべきとしましたが、

 家裁は  「教育で 事件の重大性を認識させ、 思いやりを植えつけるべき」 と、

 中等少年院送致にしました。

 主犯格は 02年に少年院を出て、 家業を手伝っていましたが、

 やがて 昔の仲間との付き合いが 復活します。

 06年、 誘われて パチンコ店の店員に 暴行を加え、 約1200万円を強奪。

 恐喝事件のときに関わった、 元裁判官は語ります。

 「少年は 罪の深刻さに気付けば、 自分から変われることが多い。

 彼も 年相応の素直さはあったのに、 再犯は本当に残念」
 

 同じ恐喝事件を起こした もう一人の男性は、

 少年院仮退院後、 地元には戻らず、 更生保護施設に入りました。

 「自分は流されやすい。

 このまま帰れば、 以前の仲間とつるんでしまう」

 施設にいる間、 左官の仕事を経験し、

 自分が脅し取った数百万円は、 1年働いても 稼げない額だったことも知ります。

 施設で10ヶ月を送ったあと、 地元に戻ると、

 つい 昔の暴走族仲間に連絡し、 暴力団関係者と 食事をしたこともありました。

 そのとき、 少年院の窓の 鉄格子が頭に浮かびました。

 「二度と ああいう所へは戻りたくない」

 仕事を理由に断っていると、 誘いは来なくなりました。

 危うい場面に遭遇して 何とか踏みとどまれたのは、

 少年院や施設で 自分の芯ができていたからでしょう。

 今の職場は 勤続7年なり、 毎月3万円の 被害者への支払いも続けています。

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

認知症の人が、 認知症の人をいたわる

2010年07月05日 20時22分08秒 | 介護帳
 
 一昨日は Bさんと一緒に、 Cさんもデイサービスを 利用されていました。

 Cさんは 人柄はいいですが、 5分前のことは覚えていないし、

 うちのデイサービスを 利用しているという認識も、

 恐らく あまりないのではないかと思われます。

 一昨日の朝、 僕とCさんが お昼の買い出しに行こうとしたとき、

 Bさんが カップのコーヒーを 床にぶちまけてしまいました。

 Cさんを その雰囲気の場に いさせない方がいいと思い、

 僕はCさんと一緒に 買い物に出かけました。

 しばらく歩くと Cさんが、  「さっきのおばあさん、恐かったね」 と言います。

 5分以上前に 初めて会った人のことを、 よく覚えていました。

 「あの人は 今日が初めてで、 不安で落ち着かないんですよ」 と 僕が言うと、

 「ああそうですか」 と納得していました。

 そして 昼食時、 Bさんは 食事に手を付けず 不機嫌にしています。

 すると CさんがBさんに、 

 「淋しいんだよね」 「皆いるから大丈夫だよ」

 「一生懸命生きてるんだよね」 などと、

 Bさんをいたわろう、 励まそうと 色々と声をかけるのです。

 内心は 恐いと思っているのかもしれないのに、

 こんなにも 人を気遣ったり、

 優しい言葉を かけられる人だったのかと 感銘しました。

 このような 利用者さん同士の ダイナミックな関わりも、

 うちのデイサービスで 大切にしていることです。

 (逆に 関係が悪いときには、 うまく取り持たないといけませんが、

 まだ難しいです。)

 Bさんも早く 施設に慣れて、

 利用者さん同士の 良い繋がりも できていけばいいのですが。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シチューをひっくり返された(・_・;)

2010年07月04日 19時24分12秒 | 介護帳
 
 勤務先のデイサービスに、 昨日から 新しい利用者・ Bさんが入りました。

 要介護度5で、 介護拒否や 暴言・ 暴力のある、 ちょっと難しい人です。

 (うちは 認知症対応型デイサービスなので、

 認知症は 全員の利用者さんがあります。)

 朝 Bさんが施設に到着して 僕が挨拶すると、 Bさんの第一声は、

 「バカ。 お前なんかに世話されたくない。 出て行け」

 でした。 (^^;)

 その日のお昼は シチューにしましたが、

 でき上がって Bさんの前に  「どうぞ」 と持っていったとき、

 シチューのお皿を ばっと手で払われ、 シチューがぶちまけられてしまいました。
(Θo Θ;)

 σ(・_・;)  のズボンや、 新品のシャツ, スリッパにも

 シチューがべっとり。 (- -;)

 今まで 利用者さんに叩かれたり、 あざを作ったことは 何度かありますが、

 外見的な派手さとしては、 このデイサービス始まって

 一番のできごとでした。  (^^;)

 或いは もしかすると、 僕が Bさんの後ろから近づいていって、

 視野の外から お皿が出てきたのが 良くなかったのかもしれません。

 結局 その日の昼食は、

 「食べたくない!」 と言って ほとんど全く 手を付けませんでした。

 初日で 場所にも慣れないでしょうし、

 落ち着かず 不安もあるのだろうと思いますが。

 でも、 Bさんは時折、 急に笑いだすことがあります。

 人の仕種や やり取りなどを見て、

 出し抜けに 顔をくしゃくしゃにし、 「可笑しい」 と言うのです。

 何がおかしいのか 全く不明なのですが、

 それをつかめれば、 意思疎通の糸口に なるのではないでしょうか。

 まだ 分からないことばかりですが、

 少しずつ Bさんの心を理解し、 対応の仕方を 探していければと思います。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

児童わいせつ 繰り返す息子 -- 更生への道 (5)

2010年07月03日 21時23分58秒 | 罪,裁き,償い
 
 元受刑者の男性 (34才) は、

 8才の男児に わいせつ行為をした罪で 服役しました。

 以前にも 同様の罪を犯し、

 男性の母親は  「小さい子には 絶対近寄らない」 と 約束させました。

 母親は、 息子はもうしないと 信じたいけれど、 確信は持てないと言います。

 法務省は05年から、 子供を狙った 暴力的性犯罪者について、

 出所後の行き先を 警察に通知しています。

 が、 それを地域住民に知らせることは 禁じられています。

 住民が元受刑者を 監視するようなやり方は、 彼らや家族の 孤立感を深め、

 かえって 社会復帰を阻害します。

 けれども、 地域の 防犯パトロール隊の隊長は、

 小学生の下校を見守りながら、 心が揺れています。

 「元受刑者のためには、 地域で温かく 受け入れることが望ましいが、

 不安も正直ある。

 防犯活動では、 彼のことを意識せざるを得ない」
 

 7才の男児を わいせつ目的で誘拐、 絞殺した男性 (当時17才) は、

 10年の服役後、 弁護士や法学部のゼミ生らに 度々激励会を開いてもらいました。

 それを 楽しみにする一方、 車で遠方へ出かけ、

 犯行を繰り返すようになっていました。

 「さびしい時に 小さい子に会うと、

 誘い込まれるように わいせつ行為に走ってしまう」

 男性に関わった准教授は、 こう話します。

 「彼と 就職や恋愛について、 本音で相談できる 関係を築けなかった。

 彼には、 覚悟と愛情を持って 一緒に生きていく人が 必要だった」

 男性の母親は 親子の縁を切ると 伝えましたが、 今は思い直しています。

 「被害者のことを きちんと考えさせ、 やり直させたい」

 男性は人生の大半を 刑務所で過ごすことになり、

 出所時には 50才になっています。

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

性犯罪防止プログラム -- 更生への道 (4)

2010年07月02日 20時55分31秒 | 罪,裁き,償い
 
 性犯罪で2度服役し、 仮釈放された受刑者 (35才) は、

 民間の 「性犯罪防止プログラム」 を 受講しました。

 心理的なブレーキを かけるための対処法で、

 夜でも目につく色の 服を着る, 走りにくい靴を履く,

 顔が隠れる 帽子はかぶらないなど、 2年半はそれを守りました。

 「もう罪を犯さない 自分になった」 と思い、

 別の靴に変え、 再犯の歯止めを 自ら手放しました。

 間もなく、 立て続けに女性宅に侵入し、

 強盗強姦, 強制わいせつなど 4件を繰り返します。

 裁判員裁判での判決は、 懲役23年。

 犯罪傾向は容易に矯正しがたい と断じました。

 受刑者は、 「プログラムは効果があったが、 自分がしっかりやらなかった。

 懲役23年は 長いとは思わない」 と、 控訴はしませんでした。

 このプログラムでは、 最初の3ヶ月は週1回、

 グループで 体験を互いに語らせ、 犯行のリスクの 回避法を指導します。

 その後は 月1度の面談を続け、 効果を確かめます。

 油断せず 自分をコントロールすることが重要で、

 周りが対処法を 強制することはできません。

 06年9月以降、 仮釈放された性犯罪者らは、

 3ヶ月間5回の プログラム受講を義務づけられました。

 大切なのは、 被害者の痛みを知り、

 女性に対する考え方を 変えられるかどうかです。

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経歴隠し 孤独な日々--更生への道(3)

2010年07月01日 19時41分00秒 | 罪,裁き,償い
 
 男 (61才) は、 知人の女性に暴力をふるう 夫を刺殺し、

 懲役12年の刑を受け、 2年の刑期を残して 今年仮釈放されました。

 本当は、 数珠を肌身離さず持ち、 仕事の合間に 被害者の冥福を祈りたい。

 でも、 自分の過去を知らない 同僚の目が気になるのです。

 毎日 事件のことを振り返り、 般若心経を唱えます。

 ナイフで刺したときの感触、 被害者の苦しむ顔が 甦ります。

 妻子や親とは 縁が切れ、 更生保護施設で 求職活動を始めました。

 しかし 前歴を告げると、 立て続けに断られます。

 途中から経歴を偽り、 100社も回って やっと運送会社の 採用が決まりました。

 年下の同僚でも 相手を立て、 会話が弾むように 気を遣います。

 寡黙なために  「過去に何か あったんじゃないか」 と、

 噂されるのを避けるためです。

 もしも、ネットで 自分の事件のことが 知られたら、 そうなっても

 「戦力」 として認められるよう、 信用を高めるしかないと 覚悟を決めています。
 

 別の元受刑者 (60代) は、 借金苦から 無理心中を図って 妻と次男を殺し、

 3年前に仮釈放されました。

 「こんなに苦しみながら 生きていくより、 死んだ方がましだ」

 そんな男性に 生きる力を 取り戻させたのは、 小学校の同級生の女性でした。

 「辛い思いを抱えて 生きていくのが償いでしょう」

 女性はこう言います。

 「刑を終えて 社会に戻った人が やり直すには、

 前歴を知りながら 支える人が 必要だと思う」

 元受刑者は 最近、 自殺を考えなくなったことに 気付きました。

 「こんな自分でも 受け入れてくれる人が いると分かりましたから」
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする