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参議院選挙と同時に行われた鹿児島県知事選で初当選を決めた、元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓(みたぞの・さとし)氏の動向に注目が集まっている。 公約に「九州電力川内原発の停止」を掲げたが、当選後に報道陣からの原発に関する質問を受け、「答えようがない」などとはぐらかしているからだ。
知事に原発を停止させる権限はないが、川内原発は今年10月以降、定期検査のためにいったん停止する。現在の規制では、再稼働のためには地元市議会や市長、県議会や県知事の同意が必要になるため、三反園氏が強く反対すれば運転再開が難航する。
その一方、三反園氏は「原発のない社会はすぐにはできあがらない」(12日付朝日新聞電子版)と、現在ある原発の稼働を認めており、今後の態度は不透明だ。反原発グループとの間で政策合意した「川内原発の停止」に、どこまで踏み込むかが注目されている。
原発を停止させるリスクとは……
もし、本当に川内原発を停止すれば、その影響は鹿児島県だけにとどまらない。
まずは経済への甚大な影響がある。
2011年の福島第一原発事故の後、菅直人首相(当時)が中部電力浜岡原発の停止を要請。その後、原発再稼働の条件が厳しくなり、全国の原発が停止した。 その結果、火力発電の燃料費がかさみ、2010年から2014年までの5年間での燃料費の増加分は年間約3.4兆円(2014年度)。これは国民一人当た り年間3万円程度の負担になる計算だ(経済産業省資源エネルギー庁より)。
経済ジャーナリストの石井孝明氏の試算によれば、川内原発を停止させた場合、1日あたり2億円程の化石燃料費が追加で必要になるという。三反園氏の当選 後、九州電力の株価は急落。川内原発が止まれば、コストが増え、財務が悪化すると懸念されたためだろう。そうなれば、いずれ電気料金の値上げをせざるを得 なくなり、経済を圧迫することになる。
原発停止は無責任
原発停止は、国防面でも不安材料だ。石油や天然ガスなどの化石燃料の輸入先の約8割は中東諸国で、フィリピン近海や台湾海峡を通って日本に運び込まれる。 しかし現在、中国はこの通り道の近辺の海域の領有権を主張し、軍事基地も建設している。万一、石油タンカーなどが止められれば、日本は干上がってしまう。
実際、6月には鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま)付近の日本の領海に中国の軍艦が侵入しており、危機はすぐそこに迫っている。国防上のリスクを無視して原発を止めるというのは無責任だ。
原発稼働の是非は国家の主権にかかわる問題であり、政府の責任範囲である。地方自治を尊重するという甘い顔をして、政府が立場をあいまいにしていることが根本的な問題だ。
票や人気を得ることを優先して、言うべきことを言わない政府は、結局、国民を不幸にする。政府には、国民の生活と安全を守るために、より一層の説得力と信念を持ってもらいたい。(誠/晴)