新任の外国大使が日本に赴任した時に、その新任大使は、その赴任国の元首に信任状を渡す必要があります。日本の場合、実際の元首は事実上、内閣総理大臣ですが、法律上は元首としての国事行為は象徴天皇が行うことになっています。ですから、新任大使はこの本国元首からの信任状は天皇に渡さなければなりません。
(コロンビア共和国カルデナス大使赴任時の写真)
その際、宮内庁は馬車か車かで送迎してくれるのだそうです。馬車か車かは、大使の希望に応じるのだそうですが、多くの大使は馬車での送迎を希望するそうです。当然といえば当然ですが。ところで、君主制を採用している数少ない国の外交官だとしても、国王が提供する馬車なんて滅多に乗れるもんじゃありません。まして、共和制の国の役人であれば一生に一度あるか無いかの話になるわけですから、各国の大使の間では、この馬車による皇居への送迎は日本赴任での最大の隠れたる楽しみの一つなんだそうです。
馬車で皇居への送迎といっても、大使公邸からではなく、あの東京駅丸の内側の煉瓦作りの駅舎前から皇居に向けた真っ直ぐの道を通って行く短い道のりです。実際、見たことはないのですが、現天皇である平成天皇が、皇太子時のご成婚の時に使ったようなクラシックな馬車なんだそうです。
今から、14年ほど前、当時の勤務先の女性の同僚が、某国大使館秘書として採用されることとなった時に、この話をしたところ大変驚いて「それ本当なの?大使が聞いたら、きっと喜んじゃうかも!」なんて言っていたのを思い出しました。ちなみに、この時彼女の履歴書のスペイン語での作成をちょっとお手伝いしたのですが、今ではこの彼女も同大使館の官房長みたいな役割で偉くなられたようです。
さて、この馬車による送迎はいままでは、いつ何時にやるかは事前には分かりませんでしたが、今後は宮内庁のHPで事前に発表するそうです。時刻は午後3時頃だそうですから、事務所からもそう遠くはないので一度見学に行ってみようかと思っています。