米国のサブプライム問題の表面化に端を発した株安が続いている。国際原油価格やレアメタル、穀物相場もすべて異常な高値である。中国やインドの台頭も確かに原因の一つではあるのだが、最大の原因はやはりサブプライム問題にあると私は思うのである。
20年程前、某山手線駅付近の、とある新聞販売店の立ち退き料が10億だったのだそうだ。当然、その立ち退き料を貰った経営者は、3億程の家を世田谷に買い、残りで事業用の賃貸物件を買ったとのことであった。
当時、土地の値段は上がる一方で、銀行は抵当権設定額をどんどん勝手に引き上げて、土地保有者に融資をし続けたのであった。そして、その土地は直ぐに値上がりしたから、銀行は、直ちにその土地を担保に更に貸し付けて土地建物を買わせ、資産と借金が同時にどんどんと雪だるま式に増え続けたのであった。この構造インフレが、当時のバブル経済であった。
それと、ほぼ同じような貸し付けが、米国では中間所得層相手に何年も前から行われていた事を銀行関係者ならば皆知っていた筈である。日本でも、何年も前に某国営放送でこの問題を取り上げており、私自身も見ていて知っていたのである。ところが、米国金融機関は、それからも土地価格が下がると困ると思ったのか、今度は、ラテンアメリカ出身等の低所得者層をターゲットとした高利の不動産融資へと拡大し始めたのであった。それが、米国バルブの崩壊の時期を遅らせている理由の一つである。
ところで彼らラテン系の移民達の多くは、英語が不自由な低所得移民層ばかりであるから、アメリカで家を持てたことが夢だと感じていたのであった。しかし、金融機関は、只それだけで許す筈もなかったのである。
彼らに、不動産の資産価値が上がった分に対して、更なる融資額を増額し始めたのであった。その融資増額分は、他の物件へ再投資できる程の額ではないので、彼らの多くは家財や被服、或いは、宝飾品等々の消費へ走ったのである。こうして、米国バブル経済の崩壊を先送りするために、多くの人々が米国金融機関の口車に乗せられて、更なる無理な借金を重ねて消費に走り続けていたのであった。当然ながら、その多大なる恩恵は中国やインドばかりが受けているのではなく、日本の輸出型の大企業もその恩恵を受けていたのである。
そして、これらの上積み融資分も含めて、返済できない人々が、昨今激増してきたのである。これが、いわゆるサブプライム問題なのである。つまり、米国バブル経済は実は20年前の日本の時よりも、更に長期間に渡っていたのであるから、その額は膨大な金額になっていたのである。
更に悪いことには、これらの見せかけだけの増えた資産を元に、デリバティブによる金融商品が開発され、それが投資ファンドとなって日本の株式市場やら不動産市場にも既に流れ込んでいた事が事態を深刻化させているのである。だから、こういった実体のないデリバティブ系の投資ファンドマネーが株式市場から急速に消えている訳であるのだから、株価が下がるのは当然といえば当然なのである。
実は、いずれはこんな状況になるであろう事を一番よく知っていたのが、日本の金融機関の関係者だった筈である。それが、彼らと一緒になって、火に油を注いで手助けしてしまうとは・・・。あの20年前の馬鹿げた経験によって得た、10年以上に渡る苦い苦い体験がどうして米国金融関係者に伝わらなかったのだろうか? 或いは、伝えようとしなかったのか? 或いは聞いて貰えなかったとでも言うのだろうか? まったくもって怪なるはなしである。