銀行は消費者ローン会社などと比べて金利も低いのに、どうしてあのような莫大な利益を得ているのだろうと、不思議に思った事はありませんか?
理由は色々あるのですが、最大の理由は銀行という金融システムが生み出す構造にあるのです。例えば、貸出資金の合計が100億円ある消費者ローン会社では、当然ながら100億円以上を貸し出すことは出来ません。ところが、銀行では貸し出すための原資である預金額が100億円ある場合、その何十倍の金額である数千億円を貸し出すことができるのです!
そんな馬鹿な!と思われるかもしれませんが、実は本当なのです。
たとえば、銀行がある預金者から1億円預かったと仮定します。そうすると、銀行は日本銀行に準備金という保証金を積み立てます。それを仮に10%としましょう。そうすると、銀行は、9,000万円のお金を貸し出すことができます。そして、これを借りた会社Aは、このお金を銀行に預けますから、銀行は再び9,000万円のお金預かります。そして、銀行は日本銀行に準備金の10%を再び預けますが、更に8,100万円のお金を貸し出すことができます。そして、この8,100万円を、今度は会社Bに貸します。同じように、この会社もこの8,100万円を金庫に入れることはしませんので全額銀行に預けます。そうすると、銀行は8,100万円をお金を預かりましたから、やはり10%を日本銀行に預けて、今度は7,290万のお金を貸し出すことができます。このようにして、順次貸し出して行くと、理論上では10倍の10億円を貸し出すことができるのです。つまり、日本銀行への準備金が預金額の2%(http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/junbi.htm)であるのならば、1億円の預金に対して、およそ50倍の50億円の貸出が可能なわけです。
勿論、借り入れた企業が、同じ金融機関に預けることをしなくとも、企業は必ず銀行に預けます。また、即日その資金で、別な会社への支払に向けたとしても、支払いを受けた別な会社も、そのお金を同様にぼぼ全額預金口座に預け入れます。ですから、金融機関全体として考えれば、先ほど説明したシステムが成り立ってしまうのです。これを、信用創造(Money creation又はCredit creation)といいます。
従って、例えば1件の当たりの平均貸出利益が、年間で仮に2%だとして、日本銀行への準備金が2%である場合、理論上は消費者ローン会社の50倍の額を貸し付けることが出来ます。つまり、消費者ローン会社が年間利息100%で貸し出した時の利息額と同じ額の利息額が銀行に入ります。勿論、貸出額は50倍となりますので、手間がかかると思われるかもしれません。しかし、それは消費者ローン会社でも同じような手間が掛かる問題が起きています。消費者ローン会社では、もともと1件あたりの貸出額が少なく、手間がかかっている上に、返済出来なくなる件数が多いのです。ですから、消費者ローン会社にも、このような不利な条件が多々ありますから、結局は、銀行の貸出額がローン会社の50倍あったとしても、現実にはその手間は、50分の1の貸出額しかない消費者ローン会社の手間とあまり大差ないのです。いや、寧ろ銀行は担保をとったり、保証人を必ず要求しますから、不良債権となる事故率は、消費者ローン会社と比べて著しく低く、結果的には回収などの手間はローン会社より遙かに少ないと言えるでしょう。つまり、ビジネス的にいえば、ローリスク・ハイリターンなビジネス、それが銀行なのです。
以上のことから、金融機関の中で、銀行だけはローン会社や証券会社(投資銀行)などと違って、その原資に対して莫大な資金を動かすことが可能なのです。アメリカ政府は、今回の金融危機で、証券業界1位であったメリルリンチと2位であったモルガン・スタンレーを救う為に、資金を注入し易い金融機関である銀行にしてしまったのは記憶に新しい話です。一般的は、ニューヨーク州の監督管轄から、国や中央銀行からの監督管理にする為といわれています。しかし、アメリカ連邦政府は、税金である巨額な資本を注入をしますので、業績が回復した場合、証券会社のままにしておくよりも、銀行にしてしまった方が、税金を注入する以上、この際、注入額以上の高い売却益を見込めるとの判断が、当初からあったのでないかと私は思っています。
それにしても、銀行はなぜ、ここへ来て企業への貸し出しを制限したり、或いは、貸し剥がしといって、貸し出し資金の返済を強要するようになって来ているのでしょうか?また、本来ならば少ないはずの不良債権を、なぜ多く抱えてしまったのでしょうか?それは、今、説明した信用創造という、バブルのようなシステムがもたらす弊害に関係があるのです。その詳細は次回以降に述べたいと思います。