一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

【再掲】グルーポンのおせち問題を契機に景品表示法をおさらいしてみる

2011-01-14 | 法律・裁判・弁護士

1/7のエントリが途中で切れてしまっていたので(...みたいなさん、ご指摘ありがとうございます)加筆して再掲します。
その後の動きはあまりフォローしていないですし、当初の気合がなくなって尻切れトンボのエントリになってしまっているかもしれませんのであらかじめお詫びしておきます。

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遅ればせながらグルーポン・外食文化研究所(バードカフェ)のおせち問題について。 

グルーポンはお詫びをサイトに載せていますが、ちょっとピントが外れているような気がします。  


バードカフェ「謹製おせち」についてのお詫びとご報告  

3.原因および問題認識について  
本クーポンによりお客様がご購入された当該商品の提供元について、その品質管理、製造管理、配送管理などにおいて、十分適切であることを見極め切れませんでした。  
ご購入者様からのご苦情、お問い合わせなどに対応する窓口が弊社ホームページ経由のメールのみであったため、事態の把握と対応にタイムラグを生じさせてしまいました。  

4.今後の対策について  
クーポン商品の提供会社に対する事前審査を厳格化いたします。  
クーポンご購入者様からの専用お問い合わせ窓口を設置いたします。  
お客様、加盟店舗様に一層安心して弊社サイト「GROUPON」をご利用頂けるよう、社内教育の更なる拡充並びに業務管理体制の強化を図ってまいります。


ちゃんと出品者を管理しなかったのがいけない、というのはその通りですが、管理責任だけとも読めます。 
商品の品質についてはそうなのかもしれませんが、グルーポンのサイトには  


「横浜の人気レストラン厳選食材を使ったお節33品・3段・7寸(4人分)」(定価2万1000円)を、半額の1万500円で販売するとして、商品の見本写真を掲載。  


していたようです(参照)。  
そうなると、「半額」という広告表示が景品表示法で禁止されている二重価格表示の問題になるのではないかと思います。  

景品表示法第4条第1項ではつぎのように規定しています。  


事業者は,自己の供給する商品又は役務の取引について,次の各号に掲げる表示をしてはならない。 
1 (略)  
2 商品又は役務の価格その他の取引条件について,実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示


この規定については公正取引委員会から不当な価格表示についての景品表示法上の考え方というガイドラインが出されていますので、以下それを見ていきます。  


2 本考え方の適用範囲 
(1) 本考え方の対象となる価格表示本考え方は,製造業者,卸売業者,小売業者,通信販売業者,輸入代理店,サービス業者等,事業者の事業形態を問わず,事業者が,一般消費者に対して商品又は役務を供給する際に行う価格表示のすべてを対象としている。  


僕はグルーポンは利用したことはないのですが、グルーポンのサイトの「使い方」をみると、クーポンを販売して料金を徴収する主体はグルーポンのようなので、グルーポン上の価格表示についてはグルーポン自体も景表法の適用対象になると思われます。  

つぎに「二重価格表示」とは何かですが  


第4 二重価格表示について
1 二重価格表示についての基本的考え方  
(1) 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合 

ア 同一ではない商品の価格との二重価格表示が行われる場合には,販売価格と比較対照価格との価格差については,商品の品質等の違いも反映されているため,二重価格表示で示された価格差のみをもって販売価格の安さを評価することが難しく,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。  
 なお,同一ではない商品との二重価格表示であっても,一の事業者が実際に販売している二つの異なる商品について現在の販売価格を比較することは,通常,景品表示法上問題となるものではない。  

イ 商品の同一性は,銘柄,品質,規格等からみて同一とみられるか否かにより判断される。   

(2) 比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合  

 二重価格表示が行われる場合には,比較対照価格として,過去の販売価格,希望小売価格,競争事業者の販売価格等多様なものが用いられている。  
 これらの比較対照価格については,事実に基づいて表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。  
 また,過去の販売価格や競争事業者の販売価格等でそれ自体は根拠のある価格を比較対照価格に用いる場合でも,当該価格がどのような内容の価格であるかを正確に表示する必要があり,比較対照価格に用いる価格についてあいまいな表示を行う場合には,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。


要するに、比較がきちんと可能で、比較対照となる販売価格が事実であることが求められています。 
そして、具体例としてこのように解説されています。

2 過去の販売価格等を比較対照価格とする二重価格表示について 
(1) 基本的考え方 
ア 過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示 
(ア) 景品表示法上の考え方 
a(省略) 
b 過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われる場合に,比較対照価格がどのような価格であるか具体的に表示されていないときは,一般消費者は,通常,同一の商品が当該価格でセール前の相当期間販売されており,セール期間中において販売価格が当該値下げ分だけ安くなっていると認識するものと考えられる。
 このため,過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に,同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格とはいえない価格を比較対照価格に用いるときは,当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等その内容を正確に表示しない限り,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。

ところが、グルーポンまるで残飯なおせちの外食文化研究所水口社長にインタビューしてみましたによると

-グルーポン側からは、反響の規模がどのくらいになるか等アドバイスはなかったのでしょうか?

水口氏
グルーポンからは一切そのようなアドバイスはありませんでした。
おせち料理の販売自体グルーポン上でも初の試みで、
グルーポンへおせちの販売をしたいとお願いしたところ、
かなり乗り気で対応して頂き、私共も反響に浮足立ってしまった事が大きな反省点です。
(太字筆者)

と、そもそもおせち料理の販売自体が初めてだったようです。

そうだとすると、定価21,000円ってなんだったんだという話になります。
また、景品表示法上も「比較対照すべき過去の販売価格」自体がない(ちなみにガイドライン上は「過去の販売価格」二週間以上の販売実績がないといけない)ので完全にアウトのように思われます。

しかも、このインタビューがグルーポン側も外食文化研究所がおせちを売るのが初めてというのを承知していたとのことです。

そもそも共同購入サイトは「定価の○割引」というのがウリにもかかわらず、その定価が根拠がないというのはビジネスの信頼性に関わると思うのですが、そのへん反応が鈍いように思います。

このあたり、中古バイクの買取オークションにおけるバイク王と系列会社の談合(擬似入札)と同根だと思うんですけど、両者ともに「これはまずい!」という真剣な反応が見られないのは多少のクレームはおいといても消費者の支持がある(または「値段で釣れる奴はいくらでもいる」)という自信なんでしょうか。




コメント
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