新書の対談本というのは、旬の人物を2人連れてきて旬のネタについて語らせて一丁上がり、のためか粗製濫造されがちで、豆知識の放談やヨイショし合いに終始するものが多いが、これはけっこうちゃんとしてる方だと思う。
本書は売れっ子経済学者(とか自分でも使ってしまうが定義ってなんだろう。「新進気鋭」というのもそうだよな)の飯田泰行氏が、地域再生にそれぞれ異なるアプローチで取り組むゲスト5人を選び、ゲストの講義+飯田氏との対談、という形式をとっている。
そのため、ゲストの考えの背景が対談の前提として頭に入るのでわかりやすい。
政府や自治体主導の地域再生が失敗に終わった反省を生かし、民間主導の地域再生にどうつなげるか、というのがタイトルを含めた本書の問題意識である。
なかでも複数のゲストが指摘しているのが、地方自治体の税収の構造の歪み。
固定資産税が特別措置による減免が多すぎるために、地価上昇と固定資産税の税収との相関関係が低くなっていて、最大の税収が地方交付税交付金であることが多い。
そのため自治体には独自に地方再生・地域経済活性化をしようとするインセンティブが働かず、中央とのパイプ作りに励むことになる。
その結果、中央官庁の全国一律の活性化策やそのための補助金目当ての事業を実施し予算を消化することが目的となり、税収や雇用を生み出す独自の施策が生まれにくい。
税収の構造を変えるというのは政治的にも相当ハードルが高いので、とりあえずは個別の自治体が民間の力や知恵を取り入れたりしながらこつこつ成功例を作っていくしかないのかなと思う。
ちなみに、飯田氏の研究テーマの一つとして「三大都市圏以外では人口30万人を超えると徐々に周辺から人を吸い上げる力が強くなり、50万人を超えるとこの流れは加速する」という仮説を披露しているが、これは自分の実感とも整合する。
自分の地域経済の活力を見るてっとり早い目安として「平日の日中に外を出歩いている人が多いか」というのがある。この境目がだいたい人口30万人にあたる。
ただしこの30万人は平成の大合併前の純粋な都市部という感じではあるが。
ちなみに県庁所在地でいうと人口50万人は宇都宮、松山(それぞれ51万人)と大分(47面人)、30万人だと秋田(31万人)と盛岡(29万人)が境界線になる(実際は大合併分を除くともう少しハードルが上がるが)。