一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『グランドフィナーレ』

2016-07-21 | キネマ

原題は"YOUTH"。邦題とまったく逆なのだが、終盤に出てくる"Youth"というセリフが味わい深い。

かつて一世を風靡した老作曲家が、アルプスの超高級リゾートホテルで暮らしている。そこは世間から隔絶されていて、宿泊客も裕福な長期滞在者に限られている。

そこでの作曲家と友人の映画監督、役作りのために滞在している若手俳優などとの日常を追う中で、完全に引退したはずの作曲家に予想外のオファーが来る。


現役を引退した主人公への復帰のオファーというと、多くはしがらみ、義理人情、脅迫、金銭などが背景に絡み、復帰した後の活躍が映画の主題になることが多いが、本作は金も名声も手にし、引退の確固たる意志を固めている主人公が何を考えるかが中心になる。

心身ともに完全に引退している作曲家と、心の片隅に篝火の燃えカスがある映画監督のやり取りを軸に、ホテルの住民たちの暮らしを背景に静かにかつ象徴的な描写が進む。
とても静かな一方で、それぞれのシーンの意味を集中してみると疲れる映画でもある。


邦題は結果であり、原題は過程を現している。そして映画のテーマは過程だと思う。

予告編にもその違いが表れている。
日本版だとネタバレ、というかあらすじを追いすぎていて、妙な「感動作」にしたがっているように感じるので、本編を観るのであれば英語版だけをご覧になることをお勧めする。

Youth Official Trailer #1 (2015) - Michael Caine, Harvey Keitel Drama Movie HD

 

パオロ・ソレンティーノ×マイケル・ケイン!映画『グランドフィナーレ』予告編

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