一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

創立記念日

2005-12-07 | Weblog
blogを始めて今日でちょうど1周年になりました。

身辺雑記、読書・映画感想文、駄話、時事ネタ、と思いつくままに書き散らしてきましたが、これからもマイペースで(たまには熱くなったりするかもしれませんがw)続けていければと思います。


今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
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猫の住民登録

2005-12-06 | よしなしごと

今朝のテレビ(NHK)で、 杉並区で飼い猫の登録制度を始めるというニュースが流れてました。

現在区内で約4万匹の飼い猫と2千匹の野良猫がいて、逃げたり捨てられたりした飼い主不明の猫が問題になっていることに対応するため。
具体的には飼い主と猫の情報を登録したマイクロチップを埋め込むことを義務付けるそうです。 要するに猫の住民登録ですね。

猫のほうが犬よりも放浪癖があったり、塀の上など行動範囲も広いので野良犬よりつかまりにくく、問題化することが多いのかもしれません。
(ところで「野良猫2000匹」ってどのように推定したのでしょう?)

もっともこの登録制には賛否両論あったそうです。
おそらく、登録制後は捕獲された猫はチップがなければ野良猫として処分されることになるので、そのあたりが動物愛護派からの反発があるのでしょうか?
野生動物とどのように線引きをするのか、そもそも人間がそんなことができるのか、という意見はあるとは思いますが、個人的には都会の中では仕方ないのかとも思います。

猫は行動範囲が広いので、杉並区の区境近くに住んでいて猫を飼っている人も要注意です。


ところで、杉並区の飼い猫4万匹というのは、杉並区の人口(平成16年で51万人)の1割近くになります。
年齢別に分けるとこのようになります。

 (出典:杉並区統計書(平成16年度版)

 
飼い猫の数と子供1世代の数がほぼ同じ、というあたりが、少子化を象徴してますね・・・

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政府支援策決定 (構造計算書偽造問題 その13)

2005-12-06 | よしなしごと

乗りかかった船が漂流を続けてしまったためズルズルと記事を書いてきましたが
耐震偽装マンション 政府支援策決定 (2005年12月 6日 (火) 16:44 産経新聞)
ということで、ここでひと休みしようと思います。

≪支援策骨子≫(順序は元記事と入れ替えてます) 
1 マンションを退去する住民に公的賃貸住宅を提供 
2 移転費、家賃、自治体の相談態勢の整備費に地域住宅交付金を使い公的支援 
3 自治体がマンションを買い取り解体し、建て替えて住民に再分譲する緊急対策事業を創設、都市再生機構に事業を委託できる 
4 償還期間の延長、据え置き期間の設定、期間中の金利下げで住民のローン負担を軽減 
5 全希望者に耐震診断を実施

1,2について

居住者に対しては今月中に退去を求める。マンションの解体や居住者の生活支援のため、平成十七年度に創設した地域住宅交付金(今年度は五百八十億円)などを活用。

賃貸住宅提供の期間は建替え完了までですかね。期間限定でないと一般の応募者との不公平の問題が出るかもしれません。
また、ヒューザーは広い物件が売りだったそうなので、移転先の広さとか、家具の保管費用とか詳細も問題になりそうです。
その意味では、公的資金の枠を決めてしまう方式のほうが確かにいいかもしれません。

3について

自治体がマンションを買い取る形にすることで、売り主と買い主の間に生じる瑕疵(かし)担保責任を行政が引き継ぎ、個々の買い主に代わって自治体が一括して売り主への費用負担を求めることができるようにする。
建物には価値がないため、土地の価格だけで住民から買い取る。解体は全額公費で負担、建て替え費用は階段やエレベーターなど共用部分を中心に補助し、完成後は希望者に再分譲する。

① 転売しされた場合、元の売買契約が引き継がれるわけではないので売主(ヒューザー)は当然には瑕疵担保責任を負わないはずですが、そのへんどうするのでしょうか?
② ①が実現されても住民はヒューザーへの不法行為責任の追及はできる、ということですかね(損害は出るので)
③ また都市機構は債権者として他の購入者の瑕疵担保に基く損害賠償請求権と競合することになるけど公的資金の回収をゴリゴリやるんでしょうか。都市機構がヒューザー倒産の引き金をひくことになったりして・・・
④ 建替を都市機構がやることで昨日指摘した問題はクリアできますね。よかった。

4について

住宅ローン対策では、返済困難な居住者を中心に返済期間の三年延長や、金利の最大1・5%引き下げなどの特例措置の適用を決定、金融機関に要請する。

「決定」といっても、政府が決定できるのは公庫融資くらいのはずなので、これは金融機関や金融庁がどう出るかですね、担保がなくなってしまうので、追加担保提供を求めるかどうか、無担保の債務者は要注意先債権になってしまい、自動的に対応が厳しくなる?という問題もあります。
また、建替え後の物件の購入資金については自力で調達する、ということになりますね。そこまで公的資金で補助するのはさすがに公平を欠くということでしょう。個人的には妥当だと思います。

その他

対象となるのは耐震強度が基準の50%未満で震度5強の地震による倒壊の恐れがあり改修での対応が困難な物件。

ここの線引きでもめそうですね。

また。この買取はそもそもマンション住民の全員同意があって始めて発動されるのでしょうか。買取り価格が土地価格だけ(後記参照)、となるとローンがかなり残る人も出ると思うので入り口で大変かもしれません。

総じて国としては民間の取引に対してかなり踏み込んだ支援策を作ったと思います。

ただ、昨日toshiさんろじゃあさんのところでコメントさせていただいたように、国交省としては燎原の炎が広がる前に迎え火で延焼(批判や結果的に野放図な公的資金の投入)を食い止める作戦という意味合いもあるのではないかと思います。

政府が六日決定した分譲マンション住民への支援策は、住民の早期の移転を促すとともに、耐震強度の偽装を見抜けなかった行政にも責任があるとの判断からまとめられたものだ。また、異例の早さで対策が決まったのは、世論の関心が高いことも踏まえ、「住民の不安を一刻も早く取り除きたい」(与党関係者)という政治判断があった。

支援策決定に際しては、政府・与党内に、「対策が後手に回れば、さらに批判を浴びかねない」(与党筋)という危機感もあった。

ということですね(まぁ、政治的に言えば公明党の北側国土交通大臣の存在意義をかけた、という部分もあるかも)


あとは住民の自助努力や、地元自治体、支援している弁護士などの専門家の方のサポートが重要になると思います。


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うかつに負った元請責任? (構造計算書偽造問題 その12)

2005-12-06 | あきなひ

営業中止ホテル…鹿島、大林組も施工
(2005年12月 6日 (火) 14:32 読売新聞)

耐震強度偽装問題で営業中止に追い込まれているホテルのうち、2棟は大手ゼネコンの鹿島と大林組が施工業者となっていたことが6日、国土交通省などの調べで明らかになった。
いずれも設計は「平成設計」(東京都千代田区)が元請けし、姉歯秀次・1級建築士(48)が構造計算をしていた。

大林組広報室は、「施工は建築主の指定で木村建設が下請けした。(以下略)

 「平成設計」というのがどれくらい大手なのか知りませんが、小さい事務所なら設計と下請を指定されたところに大手ゼネコンが入るというのはあまりないはずです。

現実的にはコストが安いので木村建設に発注したい施主が木村建設の倒産リスクをヘッジするために、口銭を払って大手ゼネコンに元請に入ってもらった、ということなんだろうと思います。

大手ゼネコンも「倒産リスクの保険屋」の小遣い稼ぎのつもりで気軽に受けたのかもしれませんね。

確か建設業法では一括下請け発注も施主の同意があればできるのですが、工事管理に専任の技術者を置かなければいけなかったはずです。
その辺も名目的においているだけでいい加減だったのかもしれません。
その結果実際に元請責任をかぶることになってしまったわけです。

リスクをとったにもかかわらず、やるべきことをしっかりやってなかったのですから仕方ないですね。

建設業界に限らず、下請丸投げとかの一件楽勝なコミッション仕事というのはけっこうあると思いますが、契約上、業法上のリスクをしっかり考えないといけない、という教訓ですね。

個人でいえば、食事をおごられて気軽に保証人になってしまったというようなもんでしょうか。

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大人の役割

2005-12-06 | よしなしごと

夏目房之介さんのエッセイから

最近海外の若者に日本マンガの表現文法を伝える機会が増えてきて、ふと、それが過去の批評の積み重ねによって得られた理論と、年長者から学んだ若い人にそれをつたえる話法の上に成り立っている、ということに気づいて

 ずっと、自分がいつまでも大人になれないと感じていた。が、気がつくと「大人」の役割を果たしていたりする。自覚はなくとも僕の世代はもう社会の中で「大人」として機能しているのだ。
 若い人からみて僕が大人なら、その場所はけっこう楽しい。


大人の立場や権利を主張するのでなく、機能としての大人の役割を果たす。
僕は、そういう大人になれているだろうか?

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国交省方針の「踏絵」 (構造計算書偽造問題 その11)

2005-12-05 | あきなひ

強度偽装、総合支援策の大枠固まる…家賃や解体費補助
(2005年12月 5日 (月) 03:10 読売新聞)

公営住宅だけでなく、住民が民間の賃貸住宅に転居する場合も家賃などの一定額を補助する。
強度不足のマンションの解体や建て替えでは、解体費用は全額、建て替え費用では、エレベーターや階段などの共用部分の建設費の3分の2を補助する。固定資産税の減免といった施策も盛り込み、6日に正式発表する。

色々な論点が出てくると思いますので、正式な発表を見てから考えようと思いますが、ざっと見ただけでも

建て替えの前提としてヒューザーへの解除権は行使せず、瑕疵担保に基づく損害賠償請求権を行使することになるが、損害額の立証のための証拠の保全はどのようにするのか

共用部の建設費の2分の3というが範囲と金額があいまい(構造躯体も共用部なのでは?)

建替えには抵当権者(=住宅ローンの債権者)の承諾が必要だが、追加の担保提供等を求められないか

建替えは区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)上の建て替え決議(62条)によるとすると、決議に反対して売渡請求(63条)をされ、換金してしまった方がローン返済等も楽、という人が5分の1以上になると決議が成立しなくなるのではないか

そもそも柱・梁等が建築基準法を満たしていない現状の建物と「同じ」ものを再築することができるのか。面積減は均等にはできないのではないか

など、金額の多寡以外にもいろいろ問題はありそうです。

ただ、出来るだけ早期に行政としての負担とその限界を明示しようとする姿勢は評価すべきだと思います。
反面、意地悪な見方をすれば、国土交通省としては、事態が混乱してから収拾の責任を取らされるよりは早めに指針を出す事で自らの責任範囲を限定しようという「先手必勝」の戦略とも読めますが・・・


さて、実際の建替えには上に述べたように建替えの実現までには、住民の合意形成、金融機関の同意、費用の捻出という問題がありますが、

解体費用は全額、建て替え費用では、エレベーターや階段などの共用部分の建設費の3分の2を補助する。

ということは住民にけっこう重い踏絵になるのではないかと思います。
というのは、上の仕組みだと

解体・再建築を同一の建設業者に発注し、総額で合意した上で「解体費」と「エレベーターや階段などの共用部分の建設費」の内訳金額を水増しすれば、公的補助をより多く受けられる

からです。

この「建設会社に自分の都合を押し付ける」というのは、ヒューザーの小嶋社長と同じ構造です。

しかし、自分の生活の浮沈がかかった局面で「これをやってしまったらヒューザーと同じだ」と考えるか、「どうせわからないし、皆同じような事をしているんだ」と考えるかは(そもそも前者の考えが思い浮かぶか、ということも含めて)難しい問題だと思います。


正直僕が直面したとしたら、自信はありません・・・

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「みなさん、さようなら。」

2005-12-04 | キネマ
カナダ・フランス合作のモントリオールを舞台にしたフランス(語)の映画「みなさん、さようなら。」

主人公が父親の元大学講師が末期がんであることを告げられる、というところから始まるのですが、この父親が該博な知識を有しながら世間的成功に背を向けている偏屈な人物で、しかも女とみれば教え子だろうが何だろうが見境なく口説くスケベオヤジでもあります(そのおかげで妻とも15年間別居中)

こういう父親を反面教師として、息子はロンドンの投資銀行勤務の高給取りになっています。

この息子が、母親の「父の最後を楽しいものにしてほしい」という願いを受けて、長年の反目に終止符を打ち、幸せな最後を演出しようとするために奔走します。
そして父親は徐々に息子に心を開いていき、死を受け入れていくという話です。


そう書いてしまうとありきたりのストーリーなのですが、フランス映画お得意の食えない登場人物と軽妙&意味深なセリフでとても味わい深い作品に仕上がっています。


息子は嫌っていた父親のこととはいえ、一度スイッチが入るとやり手ビジネスマンの本領を発揮し、父親が頑固に公立病院から動こうとしなければ、理事長や組合に掛け合って空いているフロアを病室に改装してしまうわ、末期がんの苦痛を緩和するためにヘロイン療法があると聞くや、ヘロイン中毒の少女に売人からヘロインを入手させ父親への投与の面倒まで見させるわ、と大車輪の活躍です。

また、父親の最期にと集まった友人の面々も、昔の愛人が2名、ゲイのカップルなどとひと癖もふた癖もある連中です。

友人の湖畔の別荘で最期を迎えたいという父親の希望で友人が集合し、昔の思い出話(それも妻と愛人が一緒になって夫と別の愛人との話を語るなどというものだったりします)に花を咲かせながら、馬鹿な人生だったなぁと語り合い、そしてラストにつながるところは人生を凝縮したような笑いと涙の連続です。


がん患者や高齢者医療などでQOL(quality of life)が語られていますが、大事なのは、それまでの人生のquality、それも最近はやりの「勝ち組・負け組」という他人や世間の基準でなくではなく自分の人生を楽しめたかどうかなんだな、ということだとつくづく感じさせられる映画です。

おすすめです。

※ 2003年度アカデミー賞最優秀外国映画賞受賞作だそうです。







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「脱出記-シベリアからインドまで歩いた男たち」

2005-12-03 | 乱読日記
最近の通勤課題図書の続きです。
これも(うたた寝しているときを除いて)一気に読んでしまいました。

これは、第二次世界大戦直前、ナチスドイツがポーランドに侵攻し、ポーランド軍の敗走によってソ連領にある実家に帰っていたポーランド軍騎兵隊中尉が、スターリン支配下のソ連の秘密警察にスパイ容疑で捕らえられ、25年の強制労働で送り込まれたシベリアの収容所から脱走し、シベリア-モンゴル-チベットーインドと1年かけて徒歩で縦断したドキュメンタリーです。

前半3分の1は、主人公が逮捕され、拷問のような尋問を受けながら何の罪もなく刑を宣告され、シベリアの収容所に送られるまでを描いています。
スターリン治世の旧ソ連で、体制を維持するというためだけの名目でいかに無意味で残虐な拷問や拘留が行われていたか、がリアルに描かれています。

それ以降は、収容所生活から仲間を募っての脱走・逃亡の話が続きます。

厳しい自然と過酷な運命に翻弄されながら「とにかくインドへ」と歩を進める主人公たちを細部までリアルに描写しています。

重要なのは意志の力(あきらめない心)、仲間、状況に応じた創意工夫、そしてユーモアだ、ということを強く感じました。







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「容疑者Xの献身」

2005-12-03 | 乱読日記
最近「姉歯問題」で深夜とか早朝にblogの更新をして寝不足気味なので、通勤用課題図書は比較的軽い読み物をということで「容疑者Xの献身」を電車の中で時折落ちながらも読みました。

東野圭吾は「白夜行」くらいしか読んだことはないのですが、プロットがしっかりしているだけでなく、主人公の日常を(多分かなりリサーチして)リアルに描いてますし、人物の気持ちの動きの無駄のない描写も好きです。


細かいストーリーはネタバレになってしまうので省略しますがamazonの紹介では

天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか

などといってます(これだけじゃ何だかわからないところが逆にいいですよねw)。
ちなみに「湯川」というのはシリーズで登場する謎解きの得意な大学の先生のようです。


なかなか上質のミステリでした。







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やはり制度設計の前提に問題があるような・・・ (構造計算書偽造問題 その10)

2005-12-02 | あきなひ

以前のエントリ で、一定の信頼を前提にしたしくみは悪質な偽造に対しては無力だ。しかし、極端な悪意の人間を前提に制度を作ったのでは過大な費用がかかり効率性が損なわれる。なので、どこかで線を引いて、制度の前提となる信頼を覆すような行為をした者には厳しい制裁を与えるというようなことで対処するしかないのではないかということを書きました。

しかし
国公認の構造計算データ、市販ソフトで容易に改ざん
(2005年12月 2日 (金) 03:10 読売新聞)

ERIや国交省の調査で、この公認ソフトが出力するデータは、「ワード」などのワープロソフトに張り付けて編集できることが判明した。
編集によりエラーの文字を消し、大臣認定番号を書き込むことができ・・・

というのを読むと、現状の制度は(本件でよく言われるように)性善説に立っているのではなく、実は「馴れ合い」を前提にしていたのではないかと思うようになってきました。

つまり、構図としては

① 国土交通省は行政改革の一環として建築確認を民間委託しろと言われた

② しかし自治体の仕事が減って人が余るおそれがあるので、指定確認検査機関が建築主事の天下り先になるような法律を作った(こちらの記事の後半参照)

③ 国会も法案作りを国土交通省に任せ切りにして、「民間委託」をした、という結果に満足していた(のではないか)

④ さらに施行令で建築主事が楽をできるように大臣認定ソフトウエアに基いて申請させるしくみを作ることで確認作業を軽減化した

⑤ しかも、大臣認定ソフトウエアは本来果たすべき機能を満足できる性能を持っていないずさんな物(これ自体国の責任を構成する可能性についてはこちらを参照)

⑥ 指定確認検査機関は受託拡大のためにはスピードアップのインセンティブが働くので、申請を「大臣認定ソフトウエア」に依存してほとんどチェックせずに確認をおろしている(それではいけないのでは、ということもこちら(⑤と同じ)を参照)

⑦ 指定確認検査機関が出した確認については、自治体も「建築基準関係規定に適合」しているかどうかの再チェック(建築基準法第6条の2第4項)をせずに素通り(それではいけないのでは、ということもこちら(⑤と同じエントリ)を参照)

と、まあ、確認申請の申請者はさすがに偽造はしないだろう、という前提で役人の利権を確保しながら、けっこう安易に規制緩和の形だけを作ってしまったのが今回の事件の元になったのではいかと思われます。

性善説というのもある意味一種の馴れ合い(信頼関係)を前提にしているわけですし、日本においては世の中の仕組み全体が多かれ少なかれ一定の信頼とか共通理解を前提にしているわけですが、今回明らかになったもろもろのことを見ると、馴れ合いの弊害のほうが大きいと思います。
※アメリカの契約のようにそもそも契約相手が契約主体として有効に存続しているか、というところからすべてを積み上げるというのもどうかと思いますので・・・


なので、建築行政、建設・不動産業界自体の信頼回復のためには、姉歯設計士(または姉歯-木村建設-ヒューザー)という「悪者」の悪事にどう対処するかだけでなく、建築確認制度自体をかなりのレベルの信頼性あるものに変えていく必要があると思います。


※過去の供給物件の信頼性を誰の負担でどこまで調査するかの問題については、政府の方針を見ながら(できれば)書こうと思います。 
※また、同様に建物の安全性にかかわる手抜き工事の問題については、建設労働を取り巻く問題などもからんでくるので、これはまとめきれるかどうか全く自信がありません・・・


<過去記事はこちら>
細かい点の整理(構造計算書偽造問題 その9)
日本ERIから学ぶこと(構造計算書偽造問題 その8)
国交省委員会招致(構造計算書偽造問題 その7)
再発防止のために必要なもの(構造計算書偽造問題 その6)
コンプライアンスと現場の取引関係(構造計算書偽造問題 その5)
依然妙案なし?(構造計算書偽造問題 その4)
CSR、倒産法制、"Empty Pocket"問題など(構造計算書偽造問題 その3)
マンションの購入者と倒壊の責任リスク(構造計算書偽造問題 その2)
構造計算書偽造問題について

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細かい点の整理 (構造計算書偽造問題 その9)

2005-12-02 | あきなひ

構造計算偽造問題について、細かい点について自分の頭の整理のためにまとめたものです。
法律の条文の引用が多く、しかもかなり長いエントリになってますので、細かいことに興味のない方は飛ばしてください。

1 検査機関の義務について

建築基準法第77条の24 「指定確認検査機関は、確認検査を行うときは、国土交通省令で定める方法に従い、確認検査員に確認検査を実施させなければならない。 」をうけて、建築基準法に基づく指定資格検定機関等に関する省令」では

(確認検査の方法)
第二十三条  法第七十七条の二十四第一項 の国土交通省令で定める方法は、次の各号に掲げる確認又は検査に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一  法第六条の二第一項 (法第八十七条第一項 において準用する場合を含む。)の規定による確認 次に定める方法
イ 建築基準法施行規則 (昭和二十五年建設省令第四十号。以下「施行規則」という。)別記第二号様式の第二面 から第五面 までに記載すべき事項のほか、次の(1)から(12)までに掲げる事項が記載された図書及び(13)に掲げる図書をもって行うこと。

構造計算については13号で建築基準法施行令にそれぞれ規定する構造計算をした際の計算書によることとされています。
そこで建築基準法施行令 を見ると、たとえば

(柱の小径)
第四十三条  構造耐力上主要な部分である柱の張り間方向及びけた行方向の小径は、それぞれの方向でその柱に接着する土台、足固め、胴差、はり、けたその他の構造耐力上主要な部分である横架材の相互間の垂直距離に対して、次の表に掲げる割合以上のものでなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

というように規定されています。
この「国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合はこの限りでない」というのが「認定ソフトによる計算に従ったことを確認できればよい」という主張の根拠のように思われます。
しかし、僕は行政法の規定の読み方には詳しくないのですが(じゃあ、他の法律には詳しいのか、というツッコミはこの際置いてください)「国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合」という規定は、

①国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によっていること
②その計算が適正に行われたこと

を確認する義務を課しているように思います。

したがって、検査機関が計算に偽造があったことを見抜けなかったことに注意義務違反があった場合はやはり法令違反になるように思います。
特に、「こんな図面通ったら大変」偽装通報者、1年半前に指摘 の記事にあるように

「姉歯建築士の図面は「はりや柱が細く、鉄筋の本数も少なかった。どれも常識では考えられない水準だった」

というレベルであったとすれば、計算結果だけを鵜呑みにして構造図も確認しないというケースは、建築基準法違反になるのではないでしょうか?

2 行政の責任

最近よく引用されている最高裁判決 は指定確認検査機関が行った建築確認も自治体の事務である、というものですが、そこでも引用されている建築基準法第6条の2を見ると

(国土交通大臣等の指定を受けた者による確認)
第六条の二  前条第一項各号に掲げる建築物の計画(建築士法第三条 から第三条の三 までの規定に違反するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。
2  前項の規定による指定は、二以上の都道府県の区域において同項の規定による確認の業務を行おうとする者を指定する場合にあつては国土交通大臣が、一の都道府県の区域において同項の規定による確認の業務を行おうとする者を指定する場合にあつては都道府県知事がするものとする。
3  第一項の規定による指定を受けた者は、同項の確認済証の交付をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その交付に係る建築物の計画に関する国土交通省令で定める書類を添えて、その旨を特定行政庁に報告しなければならない。
4  特定行政庁は、前項の規定による報告を受けた場合において、第一項の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した同項の規定による指定を受けた者にその旨を通知しなければならない。この場合において、当該確認済証は、その効力を失う。
5  前項の場合において、特定行政庁は、必要に応じ、第九条第一項又は第十項の命令その他の措置を講ずるものとする。

 とあり、自治体にも「建築基準関係規定に適合するかどうか」の確認まで義務付けているように読めます。
したがって、この場合の自治体の義務がどのレベルのものかは議論の余地があるとは思いますが、上記のように偽造が明らかにもかかわらず看過した場合には自治体にも責任は生じうるのではないでしょうか。

3 国の責任

国公認の構造計算データ、市販ソフトで容易に改ざん
(2005年12月 2日 (金) 03:10 読売新聞)

ERIや国交省の調査で、この公認ソフトが出力するデータは、「ワード」などのワープロソフトに張り付けて編集できることが判明した。編集によりエラーの文字を消し、大臣認定番号を書き込むことができ

るそうです。
検査機関や行政が主張するように彼らの業務が構造計算の確認でなく「大臣認定ソフトによる計算をしたことの確認」であるとすればなおのこと、少なくとも認定ソフトによることは確実に確認できるような仕組みになっている必要があるはずです。

つまり、そもそもこの「認定ソフト」は本来果たすべき機能を満足できる性能を持っていなかったわけです。これは1で引用した「国土交通大臣が定める基準」自体が不適切だったわけで、これ自体国の過失になりうるのではないかとも思います。

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日本ERIから学ぶこと(構造計算書偽造問題 その8)

2005-12-02 | あきなひ

ここ数日俄然注目を集めている指定検査機関の日本ERIですが、構造計算書偽造問題が発覚してからしばらく経つというのに、会社のコンプライアンス態勢・リスク管理の

ネットに記事が載ったベースですが時系列に並べると

ERI社長、イーホームズ社長の「1年前に隠蔽」を否定
(11月30日(水)8時30分 日刊工業新聞)

日本ERIの鈴木崇英社長は同日、国土交通省で会見し「大変驚いている。隠蔽の事実はない。直ちに弁護士と相談し告訴する準備をしている」と語り、藤田社長の発言を否定

他人に噛み付く前に自分のガードを固めるべきではないか、と思っていたら

「不正知りながら放置」不備通報の業者、ERIを批判
(12月1日(木)3:10 読売新聞)

社長らはERIを訪れ、「単なる計算ミスではなく、作為的なものだ。他の物件も調べた方がいい」と強く対策を求めたが、その後、ERI側からは何の連絡も来なかったという。ERIは「応対者が、上司に報告する必要がないと判断したようだ。結果として被害を拡大させ申し訳ない」としている。

「結果として・・・申し訳ない」というのは自らの法的責任は認めないものの遺憾の意を示す言葉としてQ&A集などに載ってそうな言い回しではありますが、これは自分の法的責任がないと確信を持った上で言わないと逆効果になったりするんだよなぁ、とますます「切り口上の強気のリアクション」に心配がつのります。

日本ERI、姉歯事務所関連物件の状況を公表
(12月1日(木)11時1分 ラジオNIKKEI)

日本ERIは1日、姉歯設計事務所が関与した16物件について、これまでに判明した事実を公表した。構造計算書の改ざんが認められ、建築基準法に満たないことが判明したのは・・・の3件。構造計算書の改ざんが認められたものの、建築基準法を満たしていることが確認された物件が2件。構造計算書の改ざんが認められ、現在精査中の物件が6件。明確には構造計算書の改ざんが認められず、建築基準法を満たしている物件が4件。構造計算書の改ざんの有無を含めて現在精査中の物件が1件となっている。

「これまでに判明した事実」って、事件発覚時から調査を始めていたらなぜまだ全貌が把握できないのか、と素朴に思います(後の記事を見ると11/22に既に役所に報告していたみたいですが)。「立会い」で一歩遅れてしまった以上、残る1件まで含めて全体を一気に公表したほうがいいような・・・

「国交省認定ソフトに欠点」 日本ERI指摘 耐震偽装
(2005年12月 1日 (木) 13:22 朝日新聞)

だから、他人の批判をする前に、自分のガードを固めないと・・・
(ソフトの欠陥問題は別のエントリで書こうと思ってます)

川口市のマンションも倒壊の恐れ 耐震強度偽装
(2005年12月 1日 (木) 21:24 朝日新聞)

日本ERIは1日、姉歯建築設計事務所が構造計算した埼玉県川口市のマンション「グランドステージ川口」について、計算書が偽造され、建築基準法の強度を満たしていないと、市に報告した。11月22日には「改ざんはなかった」と報告していた。

・・・

残った1件でなく、報告済みの物件というところが致命傷ですね。
これで全物件「再調査の再調査」ということでしょうか。


あまり他人の批判ばかりしていても仕方ないので、自らへの戒めを含めての教訓

① 顧客や社会への説明責任を果たすために、事態の全貌の把握を第一にする
② 内部調査は内部での隠蔽も念頭において徹底的に行う
③ 責任問題に対する弁明、他人への責任追及は緊急性(免許停止等)がない限り後回しにする
④ 後で覆されたり、異なった事実が出てくるような不用意な発言は絶対にしない

とまあ、あたりまえの事なのですが、マスコミなどに追い立てられる中では冷静な判断は出来なくなってしまうのかもしれません。

それから、こういうときは経営トップにも、事態の展開に一喜一憂したり一刻も早く事態から逃れたいとしてジタバタしたりせずに「腹の据わり」が求められますね。

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中国の「民営中小企業」

2005-12-01 | あきなひ
関 満博 一橋大学大学院教授の講演を聴きました。
中国の「民営中小企業」がテーマ。

中国では80年代~90年代初頭に話題になった郷鎮企業や国営企業などは成長が頭打ちになっているものが多い一方で、利権やコネに関係なく個人の起業家の努力によって成長してきた「民営中小企業」ともいうべき企業群が力をつけてきていて、ちょうど日本の昭和30年代のような活気があるそうです。

日本で最近流行りのIT系起業家というよりは、他人の工場の機械を夜中に時間借りして働くというような、昔の日本の中小企業の創業者のような人々が今や最新鋭の機械設備と技術を持った部品加工業者に成長している、というような話。

日本の部品メーカーの二代目社長を連れて行くと、皆、自分の父親が会社を立ち上げたときと同じだ、という感想を持つとのこと。


オリンピック、万博後の多少の景気変動はあるだろうが、若者の活力と成功したいという意欲が桁外れであり、それがある限りは中国企業の勢いは続くのでは、という見方には説得力がありました。


また、「中国経済は世界経済だ」という比喩にはなるほど、と思いました。

普通の国家なら経済発展によって中流階級が増え、貧富の平準化がおこるにもかかわらず、中国経済の特徴は、経済発展によっても富裕層と貧困層の平準化がいつまでたっても起こらない。これは、世界経済がどんなに発展しても発展途上国とのギャップや最貧国の問題は解決できていないのと同じではないか。
つまり、まだわれわれは「10億人単位の経済政策論」を持ちえていないのではないか、ということです。


その他、

産学協同が中国ではうまくいって、日本ではなぜ上手くいかないか(中国では「予算の半減」というような荒療治をした、日本は独立行政法人化といいながら有名大学の優遇は続くから本気にならない)

一方で、産業のベースを支える工業高校が半減されようとしている事に誰も異を唱えないのはおかしい

今の日本の学生は頭はよく感覚も鋭いが、志が低い。
教授はインターンシップとして学部の3年生を2,3週間中国のそういう民間の工場に放り込んで中国人工員と蚕棚のベッドで寝起きを共にして働かせると、世界にはこういうハングリーで向上心のある連中がいるんだと目を覚まして、俄然やる気になるとのこと。


それからおまけで、ライブドアの中国現地法人というのが大連にあるのだが、働いているのが全員日本人。
なにしろ「中国で働きませんか、渡航費と宿泊施設は提供します」といって日本で募集すると、3,4万円の月給(中国での住居費以外の生活費としては十分)でものすごい数の応募があるらしです。
応募するのは「自分探し」の若者で、応募があまりに多いので人員を倍増する予定だとか。
これだと中国人を雇うよりトータルのコストは安いらしいです。

やるもんだなぁ、ホリエモン。
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