褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 イーグル・アイ(2008) 超ド派手なシーンの連続です

2021年09月15日 | 映画(あ行)
 政治的な小ネタを挟みながらもド迫力の映像を観れる映画が今回紹介するイーグル・アイ。これだけ車がクラッシュする映画もなかなかお目にかかれないが、その見せ方が上手いので更なる迫力を感じさせる。アメリカ軍がアフガニスタンから完全撤退してしまった今となっては、ストーリーの中味どころかオープニングからして新鮮さがまるで無いが、早速ストーリーの紹介を。

 コピーショップ店で働いているジェリー(シャイア・ラブーフ)は双子の兄であるイーサンを突然の事故死で亡くしてしまって悲しみに浸りながら帰る道中に想像していないことが起きる。いつの間にか大量に預金が増えていたり、更にはマンションの自分の部屋に大量の武器が送られていた。驚きで瞬きもする間もない内に自分の携帯に全く知らない女の声で『今すぐにその場を逃げろ』。何とジェリーはテロリストと間違えられてFBIから追われる羽目になるのだが・・・

 さて、この先は典型的な巻き込まれ型サスペンスが展開される。追いかけられるジェリーを逃がすために電話の女は的確な指示を出し続ける。しかも、電話だけではなく電光掲示板や信号、監視カメラを利用して数十秒後に起きることを予測しながら指示してくるのだが、しかもこの電話の女はある場所へ誘導するように指示してくるのだ。果たして、電話の女は何者なのか、その目的は何だ!?俺なんかは、これだけ的確な指示を送れるのだから、もっと前もって楽に逃げれる方法があるだろう?なんてツッコミを入れたくなったりしたが、そのおかげで抜群に面白い逃亡劇を見れることになった。
 ちょっとばかり憲法について考えされる政治サスペンスの趣もあるが、とにかくド派手なシーンの連続なのでとにかく楽しめる。軍事マニアの人ならば戦闘機が出てくるだけで興味を引き付けられるだろう。色々と過去の映画のアイデアをパクっているような印象も受けたりするが、そんなことは大して問題に感じさせないぐらい興奮を味わえる映画として今回はイーグル・アイをお勧め映画として挙げておこう

 監督はD・J・カルーソー。本作と同じく(シャイア・ラブーフ)主演のサスペンス映画ディスタービアが面白いです。

 
 
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映画 アルジェの戦い(1966) アルジェリアの独立戦争を描いています

2021年08月15日 | 映画(あ行)
 フランスから地中海を南に隔てたところに北アフリカのアルジェリアがある。かつてはこの国もフランスの植民地だったのだが、フランスからの独立を目指して戦う姿を描いた戦争映画が今回紹介するアルジェの戦い。正直なところ日本人にとってはアルジェリアという国は遠い異国の地であり、今となればちょっとばかり昔の時代なので大して興味が湧かないテーマのように思えたりする。しかし、映像を通して伝わるパワーは現代に生きる我々にも衝撃を与えるし、戦争の悲惨さを改めて教えさせられる。
 植民地支配を行うフランスとアルジェリア人はアルジェリア国土の様々な所で戦いを繰り広げていたのだが、本作が描かれている戦いの場所はカスバ及びその周辺の地区。あの名作映画望郷の舞台となっていることで有名であり、世界遺産にも登録されている所だ。
 ストーリーの軸はフランスからの独立を目指す地下組織に加入して奮闘する若者アリの行動が主となっている。独立戦争を描くといっても戦車、戦闘機が出動して爆撃、ミサイルが飛び交うようなスペクタルな場面はない。しかし、カスバの狭い場所で撃ち合ったり、爆弾を装置したり、拷問シーン等、ドキュメンタリータッチで描いているのが効果を発揮しており緊迫感が伝わってくる。そして、登場人物の顔のアップの表情が多いが、その表情が非常にリアリティがあり、怖さを感じさせる。

 それでは植民地支配を続けようとするフランス軍とアルジェリア独立を目指す地下組織の抵抗を描いたストーリーを紹介しよう。
 1954年、アルジェリアのカスバが舞台。常日頃から悪い素行を繰り返している青年アリ(ブラヒム・バギアグ)は刑務所を出た後に、アルジェリア独立を目指す抵抗組織FLN(民族解放戦線)に入り、フランス警察との闘争を繰り返す。この事態を重くみたフランス政府はマチュ(ジャン・マルタン)中佐をリーダーとするフランス軍をアルジェリアの派遣。そのことを境に次第にFLNは苦境に立たされ、アリ自身も次第に追い込まれていく・・・

 なかなか細かい部分でも興味を引き付けられるように描かれている。アリ青年がFLNにスカウトされる方法、イスラム系らしさを感じさせる規律が厳しいFLN の内部の結束、そしてFLN がフランスの警察を始末していく場面などは、ちょっとした娯楽性を感じさせる。
 そして、次々警察が殺されて業を煮やした署長がカスバへ出かけて爆弾を仕掛けるのだが、ここでの爆破シーンが凄い。本作の凄さに度々出てくる爆破シーンがあるのだが、これが本当に建物をぶっ飛ばしている。地下組織も警察も繰り広げる爆弾の仕掛け合い。罪なき一般市民が血まみれになっているシーンをみて人間の愚かさがクローズアップされる。
 さらに衝撃なのが、地下組織活動に女性や幼い子供が自らの意志で参加していること。戦争映画の良し悪しの判断の要素は人それぞれにあると思うのだが、単に勝った負けただけでなく生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれた時の人間の心理状況が描かれているのを個人的には重視している。その点ではこの映画はバッチリ描かれているし、そしてどちらからの偏った見方をしていないのが良い。
フランス側の事はもちろんだが、地下組織側の立場の問題点に突っ込んでいる点も良い。特にFLNのリーダーがアリに話しかける会話のシーンは非常に惹きつけられる。『革命や戦うことよりも独立した後の方が大変なんだよ』。だいぶ端折って書いてしまったが、本作を観なおした時はこのシーンの台詞をしっかり自分の心に植え付けよう。
 他にも本作を観ると、我々日本人にとっても考えさせられることがある。本作のラストで民衆が叫ぶ『独立、誇り、自由』。この三つの言葉が日本人の俺には突き刺さる。未だにGHQの置き土産である憲法が真の意味での『独立、誇り、自由』を奪っていることにハッとした。
 他にもフランス人のアラブ人に対する差別、そして映画音楽の大家であるエンニオ・モリコーネの音楽、ジャーナリズムの役割、オールロケや大量のエキストラ出演による迫力のある描写など、他にも褒めないといけない点が多々ある。あまりにも嘘パチが多い戦争映画に飽き飽きさせられている人に今回はアルジェの戦いをお勧め映画として挙げておこう。

 監督はイタリア人のジッロ・ポンテコルヴォ。本作はイタリア制作の映画であり、本国の名作映画である無防備都市の影響を受けていることが分かります。




 
 
 
 

 
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映画 プリデスティネーション(2014) 驚けるタイムトラベル映画

2021年07月12日 | 映画(あ行)
 SF作家として有名なロバート・A・ハインライン輪廻の蛇を原作とする映画化作品が今回紹介するプリデスティネーション。映画というのは色々なテーマが描かれ、様々なことに興味をもたらしてくれる。個人的にはSF小説はアイザック・アシモフの作品ぐらいしか読んだことがなかったのだが、本作を観てロバート・A・ハインラインの小説を読みたいと思わさせられた。
 本作は映画の分野において、かなりの確率で成功しているタイムトラベルを扱った内容。それだけで本作に期待が高まる人もいると思うが、なかなかユニークな設定で、しかも観ている最中も観終わった後も驚きをもらえる映画。よくこんなアイデアが思い浮かぶなと本当に感心させられた。

 『鶏が先か、卵が先か』なんて生命の誕生の神秘を考えさせれる哲学的な面からも考えさせられるストーリーの紹介を。
 1970年のニューヨーク、連続爆弾事件のことで巷の話は持ち切り。あるバーにおいて青年ジョン(サラ・スヌーク)が入ってきて、バーテンダー(イーサン・ホーク)に話しかける。その話の内容はあまりにも数奇なこれまでの人生。すっかり生きることに目的を失ってしまったジョンにバーテンダーはある提案を持ち掛ける。それは自分の運命を狂わせてしまった人間に復讐しないか、ということ。実はこのバーテンダーはとある任務を受けて未来からやってきた時空警察官だったのだが・・・

 ジョンの長々と語る自らの半生が可哀想と言うよりも嘘だろ!なんて思えるレベルの話なので白けてしまいそうになったが、バーテンダーがギターケースのような形をしたタイムマシン機器を使い出して、あらゆる時代をポンポンと行ったり来たりし出してからが、驚きの連続。あんまり書くとネタバレしそうになってしまうのだが、俺の頭の中には宿命という言葉が浮かんできた。タイムトラベルを扱った映画というのは、過去へ行って未来を変えるというストーリー展開にスリルを味わえるとしたものだが、本作からスリルを大して感じることは無かったというのが個人的な感想。しかし、今までに味わったことが無いようなこの衝撃はなんだろう。俺って実は誰の子供なんだよ、なんてワケのわからん疑問が湧いてきた。
 少しばかり親切さが足りないので、この場面は何年の何月の何日だっけ?とすぐに頭に入ってこないので、ありゃ?なんて思うこともあった。しかし、これは個人的な問題が多く占めているので、年号の数字なんかすぐに覚えられる人にとっては、本作はピッタリとはまる映画だろう。映像では表現しにくいトランスジェンダー関連のことは上手くさばけているし、音楽も映画を盛り上げるのに成功しているし、そしてかなり驚けるのが良い。今後も斬新なタイムトラベルを扱った映画が続々と作られることを確信した。
 何はともあれタイムトラベルを扱った映画が好きな人、ロバート・A・ハインラインの小説が好きな人、またはこれから読んでみたいと思う人、イーサン・ホーク出演と聞いて心が躍る人、年号が直ぐに頭に入ってくる人、更には台詞に込められた暗喩をすぐに感じとれる人ならば間違いなく今回紹介したプリデスティネーションは自信を持ってお勧めできる

 監督はスピエリッグ兄弟。本作と同じくイーサン・ホーク主演の人間とヴァンパイアの両方が存在している世界を描いたデイブレイカーがお勧めです。
 

 
 

 


 
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映画 エクス・マキナ(2015) 美人ロボットが見れます

2021年07月05日 | 映画(あ行)
 あらゆる分野において利用されているAI(人工知能)を搭載したロボット。犬や猫に代わって人になついてくれるAIペットなんてものも活躍している。それ以外にもAIの進化を目にして驚くことがあるが、同時に不気味さを感じる人もいるのではないだろうか。そんな思いを巧みに表現しており、更に美人ロボットというビジュアルが嬉しい映画が今回紹介するエクス・マキナ。哲学的な要素を持ちながらもサスペンスフルな展開が楽しい。

 早速だがストーリーの紹介を簡単に。
 検索エンジンのIT企業で働くプログラマーであるケイレヴ(ドーナル・グリーソン)は、全社員の中から抽選で社長のネイサン(オスカー・アイザック)の別荘を訪れる機会を得る。大自然の中にあるネイサンの別荘を訪れると、彼は人工知能を搭載したエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)と名付けられて女性ロボットを完成させており、その出来栄えの最終確認の実験を任されてしまい・・・

 その実験方法だがケイレヴがガラス窓ごしに女性ロボットのエヴァに色々と質問するパターン。エヴァの質問に対する答えや仕草が人間の女性よりも魅力的に感じてしまったのか、次第にケイレヴはロボットのエヴァを好きになってしまう。この辺の展開は名作ブレードランナーを思い出させる。ところが本作は人間とロボットの恋愛ドラマの結末で終わらせない。ケイレヴが実は俺もロボットなのか?と自らに問いかけるような行動を切っ掛けに、脱出劇に様変わりする。さて、この異色な男女のカップルはネイサンから逃げ出すことができるのか?
 後半はどんでん返しに次ぐどんでん返しで意表をつくような結末へ向けて突っ走るが、これが非常に面白いだけでなく、哲学的な問いかけをもたらしてくれる。人間が作り出す人工知能の進化はどこまで行ってしまうのか?そのことに対して人類はいかなる恩恵を受けることができるのか、それとも破滅をもたらすのか?うっかり女性の裸に見とれて俺の思考回路が狂ってしまいそうになったが、観終わった後、冷静になって考えてみるとけっこう奥が深い映画だと感心した。本作はアカデミー視覚効果賞を獲ったようにSF映画であるのだが、それと逆行するような大自然を目にすることができる。人口知能ロボットと聞くとターミネーターを思い浮かべる人が多いかもしれないが、もう少しリアリティがあった方が良いと思う人には今回は映画エクス・マキナをお勧めしておこう

 
 
 
 
 



 
 
 
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映画 いぬ(1963) フランス製のギャング映画の傑作

2021年03月21日 | 映画(あ行)
 ハリウッド製のギャング映画となるとアクションの比重が色濃くでるが、フランス製のギャング映画となるともう少し人間性が描かれる。今回紹介する映画いぬだが、ガンファイトやド派手なシーンは控え目。しかし、フランス製らしく非常にキャラクター性が活かされており、全編に渡りシャープな演出が冴えわたる作品だ。しかも、当時フランスで売り出し中のジャン=ポール・ベルモンドが抜群に格好良い。
 さて、タイトルの『いぬ』だが、暗黒街を描いた映画を多く見ている人ならば知っていると思われるが、ギャングに入り込んでいる警察への密告者のこと。実は本作の原題はフランス語でLe Doulos。これを訳すと『帽子』。この言葉がフランスの警察やギャングでは隠喩として密告者のことを意味する。これは映画の冒頭でも説明されるが、このことを意識して観るとラストシーンで少しばかり得することになる。

 邦題の『いぬ』という平仮名のタイトル名がダサいのだが、なかなか格好良いシーンが見られるストーリーの紹介を。
 強盗の罪で6年の刑期を終えて出所したばかりのモーリス(セルジュ・レジアニ)だが、豪邸の金庫破りの仕事に取り組む。簡単に成功できるかと思われた仕事だったのだが、犯行時に警察に取り囲まれ仲間は死に、自らは警察に捕まってしまう。かねてから親友のシリアン(ジャン=ポール・ベルモンド)が警察の密告者であるとの噂があったのだが、今回の件で疑惑が確信に変わる。モーリスは刑務所からシリアンへの復讐を誓うのだが・・・

 色々と登場人物の名前が出てきたりで細かいところで内容が掴みづらい面があるが、実はシリアンは本当に警察の『いぬ』なのか、どうなのか?というのが大きなテーマ。構成が巧みで観ている側をミスリードするような演出が成されている。まあ、真相なんかは想像するところに落ち着くのだが、その後のどんでん返しが最高のエンディング。悲しさ、格好良さ、友情、そして日本人にも通じるようなワビサビの世界を一気に体現してくれる。俺なんかは観終えた後にこれは凄い映画を観た気分になった。
 もちろん途中のシーンでも格好良い場面は出てくる。ジョン・ウー監督のアクションシーンを思い出させるような至近距離での撃ち合い(?)なんかは印象深い。本作を観れば後々の香港ルノワール系の作品に大きな影響を与えていることが理解できる。
 登場人物と名前が一致しなくてストーリーがわかりにくいという意見があるかもしれないが、そんなのは最初だけ。途中からはそんなことは気にならないぐらい面白い。それに女性に対する扱いが酷いなどの批判があるかもしれないが、それを逆手にとったかのような展開も楽しい。男のダンディズムを感じさせたりで、まだまだ褒めたりないような気もするが、ギャング映画の傑作として今回はいぬをお勧め映画に挙げておこう。

 監督はジャン=ピエール・メルヴィル。彼の犯罪映画の数々は後々の多くの映画人に多大な影響を与えた。我が国の北野武監督もその一人。彼のお勧めはアラン・ドロンがクールな暗殺者を演じたサムライ、ナチスドイツに対するレジスタンス組織を描いた影の軍隊、急に運が回ってきた男の運命を描く賭博師ボブ、不思議な縁で結ばれる犯罪者たちを描いた仁義がお勧めです。
 
 
 
 

 



 

 
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映画 イコライザー(2014) メチャクチャ強いです

2021年03月07日 | 映画(あ行)
 映画の中で元CIAの諜報員が主人公というのはよく見られるし、それだけの情報でこの主人公は最強レベルの戦闘力を持っていると観ている我々は勝手に想像力を働かしてしまう。そして、今回紹介する映画イコライザーもその類の一つであり、デンゼル・ワシントン演じる元CIAの諜報員がメチャクチャ強い。しかも、超が付くほどの良い人であり、困っている人を見つけたら助けずにはいられないし、やりたい放題で利益を貪る悪党どもに対しては情け容赦なく鉄槌を下す。
 そして、この凄腕の主人公のライフスタイルが非常に興味深い。CIAを離れた今の生活だが、毎日を昼間はホームセンターで働き、夜は不眠症のために行きつけの24時間営業のダイナーでコーヒーを飲みながら本を読むといった非常に平凡でシンプルな生活を嗜んでいる。そして、住んでいるアパートも必要最小限の物しか置いておらず、きちんと整理整頓がされている。まさにシンプルイズベストを地で行くような生活ぶり。もちろん時間にルーズなところは何一つもない。見た目からして善人であるが、悪党をぶっ殺す手口が残忍過ぎるギャップが魅力的な主人公だ。

 それではデンゼル・ワシントンの安定感のある強さが目立つストーリーの紹介を。
 マサセッチュー州ボストンにおいて。ホームセンターの社員として働くマッコール(デンゼル・ワシントン)は夜は不眠症のために24時間営業ダイナーでコーヒーを飲みながら読書をするのが日課となっていた。ダイナーでテリーと名乗る娼婦アリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)と出会い、彼女と言葉を交わすうちに友情が芽生える。
 しかし、ある日のことアリーナが元締めのロシアンマフィアの連中から虐げられていることを知る。マッコールはアリーナを不遇な境遇から抜け出させようとするのだが、そのことを切っ掛けにロシアンマフィアとの激しい戦いに巻き込まれてしまう・・・

 かつてはCIAエージェントだったマッコールだが、今は過去を消してこっそり暮らしている。しかし、このマッコールはただ今の人間にしては珍しく、正義感に強く、夢や希望を持っている人を見れば、手伝いをすることも厭わず、困っている人を見かけたら助けずにはいられない。これだけだと何だか俺とよく似たキャラクターだが、正反対なところは凄腕の殺し屋だってこと。5人ばかりの悪党に囲まれても、わずか19秒で片づけてしまう。この秒殺シーンが非常によく出来たアクションシーンで観ている者を一気に画面に引き込む。
 そして、ロシアンマフィアの方も黙っていない。本国からロシアの元KGBの凄腕の殺し屋テディ(マートン・ソーカス)がやって来る。この英語が達者なロシア人の残忍さも凄い。地元のアイリッシュマフィアを叩きのめし、ボストンの刑事もカネと恐怖で支配する。アクション映画にはインパクトのある悪役が居るか居ないかで出来の良し悪しに表れるが、本作はその点では充分に及第点だ。
 しかし、本作の特徴はとにかくマッコールを演じるデンゼル・ワシントンが格好良いこと。監督もとにかく彼を格好良く撮ろうとしているのが見え見え。武器なんか持たなくても拳銃やナイフを持った悪党どもに堂々と立ち向かっていくし、きっちり落とし前をつけるところなんか男の俺が見ていても惚れ惚れする。そして、最後のクライマックスでは意外な場所で決戦が行われるが、これがアイデア抜群で残酷なシーンでも観ている最中は楽しみまくり。むしろ観終わって暫くしてから、ホームセンターに行くことを躊躇してしまうことになってしまった。
 他にも前半で描く交流が後半に活きてくる展開は友情を感じさせ、そして贅沢な生活をしない主人公の口から発せられる台詞もなかなか印象的。ついついゴルフをしていると完璧を目指してしまう自分がいるが、『完璧より前進』というセリフを聞いてからはミスショットをしてしまう俺自身を許せる気持ちになれそうだ。
 ちなみに続編であるイコライザー2だが、こちらも観ると、より一層マッコールの素晴らしい人間性を理解できる。とくに限定でなくても万人に楽しめる映画だが、夜が眠れずに困っている人にはイコライザーを強くお勧めしておこう

 監督はアントン・フークア。今やハリウッドを代表するアクション映画を連発する監督。ポリティカルサスペンス映画のエンド・オブ・ホワイトハウス、アフリカのナイジェリアを舞台にしたブルース・ウィリス主演のティアーズ・オブ・ザ・サンがお勧め。
 
 
 
 
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映画 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2015) 喪失と再生の物語

2021年01月02日 | 映画(あ行)
 長ったらしい邦題のおかげで観る気が失せている人が居ると思うが、原題はDemolition。意味は『取り壊し』『解体』といったところ。原題のように主人公が身近な物をドンドン壊していく様子が半ば永遠に描かれている。ちなみに俺は観ている最中は奇行を繰り返す主人公の気持ちが理解できずに、途中では駄作を見せられたのか?なんて嫌な予感がしたのだが・・・。

 早速だが、ストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 ウォール街で義理の父親フィル(クリス・クーパー)が経営する金融会社で働くデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)。ある日の事、妻のジュリア(ヘザー・リンド)を交通事故で亡くしてしまう。ところがそんな訃報に接してもデイヴィスは涙も出ず、悲しみの感情すら湧いてこなかった。そんな彼を心配したフィルは忠告するのだが、それを切っ掛けにデイヴィスは周りが手に負えないほど奇行を繰り返し・・・

 アリャ、俺は妻を愛して無かったのか!?なんて思い始めた自分に愕然として、乗車していた走行中の列車の急ブレーキを掛けたり、自宅内の物を夜中になってもドンドン壊し、会社の物までドンドンぶっ壊していく等、明らかにこの主人公はイッチャッテしまっている。表情もすっかり虚ろになっていて、もう立ち直れそうな気配が全くない。さて、普通の人ならば手に負えそうにないほど精神に異常をきたしてしまっているこの男は、いかにして立ち直っていくのか?
 亡くなった妻のお父さんのアドバイスぐらいでは彼の人間としての感情を取り戻すことが全くできないのだが、そんな彼を徐々に癒すことになるのが、壊れた自販機のクレームの手紙を送り続けたカスタマーサービスの女性カレン(ナオミ・ワッツ)とその息子との奇妙な交流。主人公はこの家族と結ばれて再生への道を歩みだすのかと思いきや、そんな単純なストーリーではなかった。主人公にあるべき感情をもたらすのは意外な物であることに驚きと感動が迫ってくる。
 喪失と再生という大きなテーマがあるが、本作の全編に渡って描かれているのが、欺瞞や嘘勢に満ちた世界。その描き方が非常に皮肉が効いていて笑える。そして、そこから抜け出すことができた時の解放感に浸れるのが本作の最大の長所といえるだろう。
 すっかり絶望的な気分に陥っている人、周囲に体裁ばかりを繕っている人、ストレスやイライラしているのが自分でもわかる人等には是非見て欲しいし、先行き不明のこんな時代だからこそ、新年の一発目に映画雨の日は会えない、晴れた日は君を想うをお勧めに挙げておこう

 監督はジャン=マルク・ヴァレダラス・バイヤーズクラブわたしに会うまでの1600キロで今や注目に値する監督です。

 

 
 

 
 
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映画 悪魔のような女(1955) ネタバレ厳禁です

2020年04月29日 | 映画(あ行)
 ネタバレ厳禁タイプの映画は昔から多々あるが、今回紹介する映画悪魔のような女はその筆頭格。同系統の映画の中に、夢でも見ているかのようなトリックを安直に使って失笑してしまうような作品を見せられてしまうこともあるが、古典的な本作品はどんでん返しにリアルさを感じることができるし、CGなんかに頼らなくても充分に見た目でインパクトを与えることを証明しているのが本作の特徴。そして、いや~、まんまとヤラレタ!というミステリーならではの快感を味わえるのは勿論だが、更にオチを用意しているのも何とも味わい深い。
 そしてタイトル名から想像できるように、とんでもない悪女が登場する。男性諸君は絶対に女性を敵にまわしてはいけない、という教訓を得ることができる。俺なんかは明日から全ての女性をヨイショしようと決意させられた。

 どんでん返しをウリにしたサスペンス映画は古今東西において名作、珍作の両方とも多々あるが、間違いなく前者に当たる本作のストーリー差し障りのない程度で紹介してみる。
 パリ郊外の寄宿小学校の校長であるミシェル(ポール・ムーリス)には心臓に持病を抱えている妻クリスティーナ(ヴェラ・クルーゾ)が居ながら、女教師のニコール(シモーヌ・シニョレ)と愛人関係にあった。何かと自己中で乱暴なミシェルに我慢の限界がきた同僚であるクリスティーナとニコールは手を結んでミシェル殺害計画を練る。
 まんまと殺害に成功し、ミシェルの遺体を学校のプールに沈める。完全犯罪成立かと思われたが、ひょんなことからプールの水を抜くと存在するはずの死体が無くなっており・・・

 さて、死体はどこへ消えたしまったのか?なんて興味を惹かれながら見ていると、アリャ!?なんて思わせるシーンが多々出てくる。もしかして・・・、あんまりこの部分に触れるとネタバレになってしまいそうだからこの辺で止めておこう。しかし、本作を観ているとライター、靴、スーツ、タイプライター等、小道具の使い方が抜群に上手い。これらの小道具がサスペンスを盛り上げるのに大いに役立っているあたりは演出を褒めるべきだろう。
 そして、殺害計画を練り、実行する2人組の女性のキャラクター設定が良い。校長の妻であるクリスティーナ(ヴェラ・クルーゾ)は持病を抱えていて、どこか気が弱そうに描かれている。一方、愛人のニコール(シモーヌ・シニョレ)は性格が悪そうに描かれている。この設定がラストで観ている我々に強烈なカウンターブローを打ち込んでくる仕掛けになっている。そして、シャルル・ヴァネル演じる元刑事がお節介の如く事件に首を突っ込んでくるが、これが名探偵のごとく非常に頭が切れて、良質なサスペンス映画として一役買っている。
 そして、事の顛末にたどり着くまでの粘っこいストーリー展開。まるでホラー映画見ているかのような不気味さを煽るような仕掛けが多くなされており、女性主人公と同じように観ている俺も叫び声をあげてしまった。それにしても幼気な子供を使ったエンディングが意地悪すぎる。最後にこんなシーンを持ってくるか!と種明かし以上にこっちの方に俺は驚いた。
 どんでん返し系のサスペンス映画が好きな人、監督の熟練のテクニックを堪能したい人、大掛かりなハリウッド映画に飽きている人、古いフランス映画の名作を観たい人に今回は悪魔のような女をお勧め映画として挙げておこう

 監督はアンリ=ジョルジュ・クルーゾー 。フランス製サスペンス映画において名作、傑作を遺した。ハラハラドキドキ感満載の恐怖の報酬、上質なサスペンス映画犯罪河岸、何だか哀しい恋愛ドラマ情婦マノン、疑心暗鬼に満ちた世相を表現したかのような密告がお勧めです。








 
 

 

 
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映画 アルゴ(2012) アメリカとイランの仲が悪い理由がわかる?

2020年01月14日 | 映画(あ行)
 いきなり年始からアメリカとイランの間で緊張感が走った。ひとまずは戦争のリスクは少なくなったような状況だが、まだ予断は許さない。しかしながら、アメリカとイランはなぜこんなに仲が悪いのか?その理由が少しだけわかる映画が今回紹介するアルゴ。冒頭からイランとアメリカの第二次世界大戦後から1979年のイラン革命に至る両国の関係と経緯が説明される。
 ちなみに本作はアメリカ映画の最高の栄誉であるアカデミー賞受賞作品。しかしながらアカデミー受賞作品だからといって必ずしも傑作ばかりではないし、面白いとは限らない。むしろ、当時のアメリカの政治的な状況に求められる作品が受賞することが多い。ちなみに本作は2012年の作品であるが、この年にアカデミー賞を受賞した意義はどこにあったのか?

 サスペンス映画の体裁をとりながらも、バリバリに政治的要素が感じられるストーリーとは如何なるものか
 1979年のイラン革命において、反米感情が爆発したイランの過激派グループがアメリカ大使館を占拠。密かにアメリカ大使館を脱出した6人のアメリカ人外交官たちは、近くにあるカナダ大使館の公邸に身を潜める。
 イラン人に見つかると処刑必至のため、ビクビクして一歩も外へ出ることが出来ない6人の居場所を特定したアメリカ諜報機関のCIA。そんな彼らを救出するために、CIAの職員であるトニー・メンデス(ベン・アフレック)は素人もビックリ仰天の方法を提案し、単身でイランに乗り込むのだが・・・

 救出作戦の内容が素っ頓狂過ぎるのだが、驚いたことに実話を基にした映画。会社の偉いさん連中が問題解決のために延々と会議をしている時に、時々何もわかっていないような人間が思いつきで発言したら、実はそれが最高のアイデアだった、なんてことがある。本作における救出作戦が、まさにド素人レベルのアイデア。しかし、本作品の場合はド素人ではなく、人質救出のプロが提案するのだから面白い。しかも、この救出作戦の内容が映画愛を感じさせるだけにアカデミー作品賞を与えたくなる理由もよくわかる。

 それにしても本作のような映画を見せられると、日本人として考え込んでしまう時がある。この映画で救出される6人は『もう限界だ』なんて言いながら、実際は3ヶ月程度我慢しただけ。我が国の拉致被害者は何年間我慢しなければならないのか?敵国に乗り込んで自国民を救出してしまうアメリカと言う国はなんだかんだ言っても羨ましい国だ。
 やたらと緊張感を煽る演出はスリルを味わえて楽しいし、2012年という年はアメリカの大統領選挙だったということを思い出してもらえれば更に楽しい。ハリウッドの映画人には民主党支持者が多いが、本作なんかは民主党のプロバガンダ的な意味を持つ作品だということを観終わった後に感じることができる。そこまで考えると本作がアカデミー作品賞を受賞した理由がハッキリわかる。

 政治的要素を感じさせる映画ではあるが難解な映画ではないし、歴代アカデミー作品賞受賞作品の中でも面白い方の部類にはいる映画。そしてタイトルの意味を知った時に映画愛を感じることができるアルゴは、過去のイランアメリカ大使館人質事件を描いているが、タイムリーな映画としてお勧めしておこう。

アルゴブルーレイ&DVD (2枚組)(初回限定版) [Blu-ray]
ベン・アフレック,ジョージ・クルーニー,グラント・ヘスロヴ,クリス・テリオ
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督は本作で主演も兼ねるベン・アフレック。最近はまた役者業を活発化していますが、個人的にはもう監督業に専念しろと言いたい。なかなか彼の監督作品は少ないながらも傑作ぞろい。監督デビュー作品であるゴーン・ベイビー・ゴーン、そしてザ・タウンの両作品は余韻をバッチリ感じさせるお勧め作品です。










 



 

 

 


 

 

 

 
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映画 ウォール街(1987) 金融映画の金字塔

2020年01月07日 | 映画(あ行)
 ここ数年で少しばかり流行っているのが金融関係を舞台にした映画。そんな中でも今回紹介するウォール街はその分野において金字塔と言うべき存在を放っている名作だ。しかしながら経済をモチーフにした映画は多くの人が難解に感じてしまい避けてしまう傾向が多い。なぜなら経済用語についていけない人が多いし、経済の仕組みを理解していない人が多いからだろう。
 しかし、本作において注目したいのは金融についての勉強ではなくて、お金に取り付かれてすっかりモラルが崩壊してしまっているアメリカ人が見れること。ここに登場する強欲な投資家の姿にアメリカという国の本質が垣間見える。俺はカネなんかよりも義理や人情を大切にする人間だ、なんて大声を出して叫ぼうとしたのだが、自分のブログのタイトルを思い出してしまい吹いてしまった。
 
 今となっては1980年代の株式市場の記録映像みたいな側面を感じたりしてしまうが、世界の金融センターであるウォール街を舞台に男たちの飽くなき野望、弱肉強食の世界を描いたストーリーの紹介を。
 若き証券マンであるバド(チャーリー・シーン)はニューヨークで暮らしていたが、家賃、税金、ローンに苦しんでおり、航空会社の整備士である父親のカール(マーチン・シーン)から頻繁に借金をしていた。そんな貧乏生活を抜け出し、一攫千金の夢に賭けているバドが目をつけたのが、裸一貫から大金持ちに成り上がった投資家ゴードン(マイケル・ダグラス)。バドはやっとの思いでゴードンと面談する機会に恵まれ、父親の会社の内部情報をゴードンに漏らす。
 当初はゴードンはバドに大して興味を示さなかったのだが、彼の功名心を利用してゴードンのライバルであるラリー(テレンス・スタンプ)を蹴落とすためにバドに情報収集を命じる。すっかりゴードンの豪勢な生活ぶり及びそのカリスマ性に惹かれたバドは着実に成果を出し、やがてゴードンから紹介された美女ダリアン(ダリル・ハンナ)と高級マンションを手に入れるのだが・・・

 ひたすら自分のカネを増やすことしか考えていないマイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーのキャラクターが強烈。名セリフである『欲は善である』と演説で堂々と言い放つシーンがあるが、何だか嫌味なセリフに聞こえたりするが、確かに文明の進歩の源は人類の欲望がもたらしたよな~なんて言いくるめられて、妙に感心している自分がいた。ライバルを蹴落とし、身近にいる者を利用しまくり、弱り切った者を自らの欲望のために最後の止めを刺そうとする映画史に残る悪キャラはまさにアメリカ社会そのもの。勝つか負けるか、生きるか死ぬか。1%の富裕層と99%の貧乏人というイビツなあの国の社会構造は資本主義経済の成れの果てを表している。
 しかしながら俺がこの映画に共感するのが、ゴードンとは真逆のキャラであるバドの父親カールの台詞の数々。同じアメリカ人の台詞でもこのブルーカラーに属するお父さんの台詞は日本人にも古き良き時代を思い出させる。例えば『金は今日を生きていく分があれば良いんだ』『俺は財布の厚さで成功を測るような人間ではないんだ』『他人の売り買いでなく、自分で物を創れ』『金っていうのは後で悔やむことをさせるんだ』・・・等など。本当に中国の企業から賄賂を受け取ってしまう日本の政治家にも聞かせてやりたい台詞の数々だ。
 まあ、経済が絡む映画と言っても専門用語は、空売り、インサイダー取引ぐらいのことを知っていれば大丈夫。そもそも本作はなんだかんだ言ってもビジネススーツを身にまとった男たちの情け容赦ない戦いに熱くなれるストーリー。日本の株式市場が年始の初っ端から急落したなんてニュースが流れてきているが、今年一発目のお勧め映画としてウォール街を挙げておこう。

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 監督はアメリカ社会にメスを入れる社会派作品の傑作を続々と生みだすオリバー・ストーン。本作の続編にあたるウォール・ストリートは2010年の作品ですがリーマンショック後に制作された映画であり、時代背景を考えながら観ると面白い。その他にはラジオパーソナリティが過激な発言を繰り出すトーク・レディオをお勧めとして挙げておこう。



 
 
 
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映画 オープン・ユア・アイズ(1997) イケメンにはショックな内容です

2019年12月30日 | 映画(あ行)
 あの大スターであるトム・クルーズが製作に名を連ね主演した映画バニラ・スカイ。そのリメイク基に当たるのが今回紹介する映画オープン・ユア・アイズ。本作のたった4年後にバニラ・スカイがリメイクされたわけだが、本作を観ればなぜトム・クルーズが公私混同してまでリメイクしたかった理由がわかる。
 まあ、男性にとっては人生の半分以上を大いに楽しめるかどうかは、顔がイケメンであるかどうかが重要な要素だと思うが、本作の男性主人公がまさに俺と同じくイケメン。それを最大限に利用して人生を謳歌しているような羨ましい奴だ。しかし、イケメンにとっての悩みが容貌の劣化。まるで天罰が下ったかのように本作の主人公は最も恐れていた顔面崩壊が突然やってくる。
 ここからのイケメンだった主人公の狼狽してしまう様子が非常にサスペンスフルに描かれている。まあ、イケメンの俺には本作の主人公の気持ちがわかるから、パニックになる理由がわかる。しかし、自分の顔が大してイケメンだと思っていない人が見ると、大げさ騒ぎすぎるだろ~とツッコミたくなるかも。

 それではイケメンに次々と奇怪な出来事が襲ってくるストーリーの紹介を。
 イケメンで金持ちのセサール(エドゥアルド・ノリエガ)は一回寝た女とは二度と寝ないことを主義にしているプレイボーイ。自分の誕生日パーティーを盛大に行っていると、親友のベラーヨ(フェレ・マルティネス)が連れてきたソフィア(ペネロペ・クルス)に一目ぼれ。セサールは親友を裏切って、ソフィアを連れ出し、彼女の家に泊まることに成功。そして朝帰りをしようとソフィアの家から出てくると、前日にベッドをともにしたヌーリア(ナイワ・ニムリ)が待ち伏せ。セサールは一度限りの女だと思っていたのだが、ヌーリアは偏執的に付きまとっていたのだ。
 仕方なくセサールは眠たい目をこすりながら、ヌーリアの運転する車に乗って、少しドライブに付き合ったのだが、ヌーリアは思いっきりトップスピードで崖から車ごとダイブ。ヌーリアは死に、セサールは命をとり止めたものの、自慢の顔がフランケンシュタイン並みの酷い顔になってしまう。
 ソフィアにも少しばかり冷たくされ、すっかり自暴自棄になってしまったセサールだったが、ある日のこと奇跡的に自分の顔が手術で元通りになる。これで再びソフィアの愛を取り戻すことに成功したのだが、それ以来あり得ないことが次々と身の回りに起きて・・・

 なんだか冒頭から奇妙な展開、録音されていた女性の声で起きて、車を走らせると全く人が居ない。さて、これは一体全体どういうことなのか?しかし、こんなのはまだ序の口。次々と起こる妙な出来事や場面が、主人公と同様に観ている者をも混乱させる。
 ビックリさせるシーンも多くて、例えば朝起きて自分の顔を鏡で見ると、そこに映っていたのが漫才コンビのアインシュタインの稲ちゃんだったら誰でも発狂するぐらい驚くだろう。怪物みたいな顔になってしまうだけでも充分に恐怖なのに、頭の中まで?だらけになってしまうような、あり得ないような出来事が次々と起きるに至っては次第に主人公の男性が可哀想になってくる。まあ、親友が女に飢えているのを知っていながら、横取りする卑劣な奴だから、ざま~見ろ!と思う人も居るだろう。
 多くの伏線を張っておいて、次々と回収していく様子は非常にテンポが良いし、いよいよ真相を知らされるクライマックスで大きく驚かせられたり、あの時のシーンは実は?なんて考えさせられるように脳ミソをフル回転させられるような構成は頭の体操にもなるし、上質なサスペンス映画だと感じさせられる。
 それ以外にもエキセントリックな酒場でのシーン、正反対な性格の2人の女性の描き方、仮面の使い方、ペネロペ・クルスの可愛らしさと美しいオッパイなど見所が多い映画なのが良い。そして非現実的なテーマを扱っていながら、時間とともに進歩していく科学を考えたら本作のようなことが可能になるかも?なんて思わせられるのが良い。
 バニラ・スカイ・をすでに観てしまった人、もちろんまだ観ていない人も観て欲しいし、スペイン製のサスペンス映画のレベルの高さに触れたい人、ペネロペ・クルスの好きな人、頭の体操をしたい人・・・等に今回はオープン・ユア・アイズをお勧め映画として挙げておこう。

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 監督はスペインの俊英アレハンドロ・アメナーバル。サスペンス映画としてテシス 次に私が殺される、そしてニコール・キッドマン主演のアザーズがお勧め。ヒューマンドラマでは海を飛ぶ夢がお勧めです。

 

 

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映画 イージー・ライダー(1970) アメリカン・ニューシネマの傑作

2019年09月19日 | 映画(あ行)
 先日ピーター・フォンダが亡くなった。父親は名優ヘンリー・フォンダ、姉は名作に多く出演し、政治的発言の多いジェーン・フォンダ、そして娘は若手時代は話題作に多く出演していたブリジット・フォンダ。芸能一族の真ん中にいる存在なのだが、ハッキリ言ってピーター・フォンダの印象が一番薄い。しかしながら、彼の名前は今回紹介するアメリカン・ニューシネマの傑作であるイージー・ライダーによって永遠に色褪せることはない。
 そもそもアメリカン・ニューシネマとは何なのか?この言葉の意味をある程度は知っておかないと本作の凄さが理解できない。だいたい1940年代頃までのハリウッド映画というのは、もうそれは楽しい映画ばかり。希望や気力が湧いてくるようなハッピーエンドばかりの映画が殆どを占めていた。まさにその時代のアメリカ人は映画を観て、夢を買っていたのだ。そのことは戦後の日本人にもアメリカって本当に素敵な国なんだと勘違いを起こさせた。
 ところがケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争の敗戦等による1950年代後半から1960年代にかけてロクでもない出来事ばかりを目の当たりにしたアメリカの若者は、本当に俺たちの国は正義で自由な国なのかよ?と疑問を感じだし、現実感ゼロの映画なんかはもう彼らには不満だらけ。欺瞞だらけの従来のハリウッド映画の限界だ。
 そんな時にさっそうとアメリカ映画に起こったムーブメントがアメリカン・ニューシネマと呼ばれる作品群。その中でも今回紹介する映画イージー・ライダーはその代表的な記念碑的な作品だ。

 さて、今や名作として映画史に残る作品として知られているが、内容の方はと言うと案外単純で、髪や髭を伸ばしっぱなしの若者が格好良いバイクに乗ってアメリカ南部を横断するストーリー。真の自由を求めて彷徨う彼らの見たアメリカとは如何なるものだったのか?
 麻薬を売りさばいて大金を得たキャプテン(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)はロサンゼルスから楽しい謝肉祭に参加するためにニューオリンズへハーレーダビッドソンに乗って向かう。道中はやたら信仰の深い家族のところで飯をおごってもらったり、ヒッチハイクをしていたヒッピーを連れたりして自由気ままな旅を続ける。
 そして彼らはパレードに無許可で参加したことで留置所に送り込まれるのだが、そこで出会ったのが弁護士のハンセン(ジャック・ニコルソン)。そのまま意気投合した彼らはハンセンも一緒に旅を続けるのだが・・・

 俺がこの映画を初めて観たのは30年ぐらい前のこと。その頃から既に本作は名作としての誉れが高かったが、正直なところ何処が良いのかサッパリわからなかった。なんだか退屈だったし、やっぱり公開された時期から既に20年近く経ってから観ているので、何だか賞味期限切れのような感じを受けた。しかし、今改めて観なおすとアメリカの現代社会に大いに通じる部分もたくさんあることに驚いた。この映画を観た時はアメリカン・ニューシネマという意味をわかっていなかったし、俺も大人になるにしたがってアメリカという国の影の部分も知ることになり、本作の描かれていることが少々理解できるようになったということか。
 本作で描かれているのがドラッグ、反権力、ロック、ヒッピーといったカウンターカルチャー。本作を見ればアメリカ社会の大きな転換点が少々でも理解でき、この頃からアメリカ社会の問題が未だに解決されていないことがたくさんあることに気付かされる。
 個人的にはジャック・ニコルソンが自由について語るシーンがあるが大いに賛同した。欧米諸国の人が語る自由は、日本人が軽々しく口にする自由とは大きく違う。彼らにとっては自由を得るために常に戦ってきた歴史がある。
 バイクで旅するシーンは綺麗な風景と楽しい音楽が流れて、目にも耳にも心地いい感覚が残るし、後半のドラッグでラリッてしまったシーンは個人的にはツボ。画面は眩しいと感じたり、ストーリー性は大して無かったりでド素人が撮ったような映画にも見えたりするが、逆にその粗削りっぽさがこの映画の魅力にもなっているか。
 ハーレーダビッドソンのバイクに想い入れのある人、ロックな音楽が好きな人、アメリカって自由で寛容性があると思っている人、麻薬を扱った映画を観たい人、ピーター・フォンダという名前に興味が湧いた人、既存社会に対して不満を持っている人・・・等などに今回はイージー・ライダーをお勧め映画に挙げておこう。

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映画 イノセント(1976) ルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作

2019年09月03日 | 映画(あ行)
名門貴族の末裔である名匠ルキノ・ヴィスコンティ監督。生涯を裕福な暮らしができる境遇でありながら、イタリア共産党に入党(後に離党)したり、私生活もバイセクシャルであることを公言するなど何かと二元性を抱えている人物として知られている。戦後間もなくの頃は、他のイタリア人の世界的有名な監督と同様に貧しいイタリア社会を描いたネオリアリズモから出発しながらも、元々が金持ちなので他の監督と違い次第に豪華絢爛、そして耽美的といわれる作風に変貌を遂げていき、数々の名作をこの世に遺した。
 そんなヴィスコンティ監督が遺作として辿り着いた映画が今回紹介するイノセント。ちなみにイタリア語の原題はL'innocenteであり、意味は『罪なき者』。タイトル名だけから内容を想像すると、清廉潔白な俺のような人間が主人公かと思いきや、貴族階級に属し、傲慢、我儘、女たらしであるダメ男が主人公。
 
 ヴィスコンティ監督が死を間際にして、自らの出自である貴族を容赦なく叩きのめすストーリーの紹介を。
 20世紀初頭のローマ。トゥーリオ伯爵(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は妻のジュリアーナ(ラウラ・アントネッリ)とは愛が冷めており、今は未亡人である公爵夫人であるテレーザ(ジェニファー・オニール)と不倫の真っ最中。しかしながらトゥーリオは妻とは別れたくないし、愛人とも離れたくない。誰に何と言われようと我さえ良ければ満足している。
 ある日のこと、トゥーリオが愛人テレーザと旅行に出かけている最中に、実家へ弟のフェデリコ(ディディエ・オードパン)が友人で作家のフィリッポ(マルク・ポレル)を連れてくる。そこへ出合わせたジュリアーナとフィリッポは見つめ合った瞬間から互いに惹かれていく。
 トゥーリオは愛人テレーザとの不倫旅行から帰ってきて、妻のジュリアーナの様子から不倫相手いることに気付くのだが、そのことはトゥーリオに自分が本当に愛していたのはジュリアーナだったとを気づかせる。トゥーリオとジュリアーナは再び愛し合うことになるのだが、既にジュリアーナはフィリッポの子供を妊娠しており・・・

 昔の西欧の貴族の世界は俺のような底辺の社会で生きる人間には憧れたりするが、いやいや本作を観てそんな想いは吹っ飛んだ。このトゥーリオ伯爵だが男として相当なダメっぷりを発揮してくれる。妻に対しては妹扱いで、しかも俺には愛人が居てもオッケーだと力づくで認めさせている。しかも、この男は西欧の人間には珍しく無神論者。何かと傲慢で強がりな奴だ。
 妻に近づいてくる男に対して毛嫌いするのは理解できるが、愛人に近づいてくる男でさえケンカ腰になる。そして俺は自由人だから何をしても良いんだと妻のジュリアーナに、わざわざ話すとは余計なお世話。最初から最後までこんな調子でストーリーが進む。そりゃ~、他の男との子供を妊娠してしまうジュリアーナは罪が深いかもしれないが、悪いのは罪を犯していなくてもトゥーリオ、お前だ!
 無神論者の人間に天誅が降されるだけの結末だったら観終わった後は確かにスッキリしたかもしれない。しかし、映画史にその名を轟かすルキノ・ヴィスコンティ監督は、そんなありきたりのエンディングに逃げない。この天才監督はバイセクシャルなだけあって女性の気持ち、恐ろしさをよく理解している。そして、典型的なダメ男についてもよく理解している。
 生涯にわたり駄作知らずで、名作及び傑作を撮り続けていただけに、本作は彼の監督作品の中で特に優れている方でもないと思うのだが、画面から伝わる映像は流石だと感じさせる。そして、遺作にして彼の作品の中で最もエロいシーンを見せつけられる。奥さんの役のラウラ・アントネッリだが、どこかで見たことがあるな~なんて思っていたら、何と青春エロ映画の『青い体験』、『続・青い体験』に出演していた女優さんだった。確かにあのエロシーンを撮りたいと思えば、この女優を大監督が引っ張り出してきたのも大いに納得できる。
 そして、ダメンズを演じるジャンカルロ・ジャンニーニだが、この人の目力が凄い。顔の表情だけでもアカデミー主演男優賞級の演技だと感心させられる。
 ルキノ・ヴィスコンティ監督と聞いて心が躍る人、ヨーロッパ映画の名作に触れたい人、『青い体験』を観ている人、金持ちが嫌いな人等に今回はイノセントをお勧め映画として挙げておこう

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 監督は前述したルキノ・ヴィスコンティ。前述したように名作ぞろいですが、個人的なお勧めはアラン・ドロン主演の若者のすべて、女の恐ろしさを思い知らされる夏の嵐、女装、幼児性愛、近親相姦、虐殺等、何でもありの地獄に堕ちた勇者ども、時間に余裕があればルートヴィヒも観て欲しいです。

 
 
 


  

 







 
 
 
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映画 愛と精霊の家(1993) 豪華スター及び多くのテーマをぶっこんでます

2019年08月08日 | 映画(あ行)
 だいたいスターがたくさん出演している映画といえば、その殆どが失敗作品と思って間違いない。しかし、映画の世界にも例外というのもあり、まさに今回紹介する映画愛と精霊の家がそれだ。本作は今でも主演級の女優として活躍するメリル・ストリープやグレン・クローズ、ジェレミー・アイアンズといった実力派が出演し、本作時には既に大ベテランの域に入っていたアーミン・ミューラー=スタール、ヴァネッサ・レッドグレイヴといった名優たちが出演しており、当時の若手としてアントニオ・バンデラス、ウィノナ・ライダー、ヴィンセント・ギャロと言った面々が出ている。そして本作の優れているのが内包するテーマの多様性が挙げられる。生と死、愛と憎悪、家族の絆、政治、そして一見どうでも良いような超能力まで描かれている。
 南米のチリを舞台にした映画だが、描かれている内容はワールドワイドに通じるテーマがあり、日本人にも考えさせられる内容が含まれている。現実の世界においても醜い対立があり、何かと争いが絶えない。本作はその辺りの描き方が、残酷かつパワフルで観ていて怠さを感じさせない。本作で見せる対立は、身分の違い、政治的イデオロギー、貧富の格差、世代間の違い等など。現実の世界でも未だにこのような対立があり、やられたらやり返すの復讐、報復が後を絶たない。お隣の国の大統領も何を勘違いしているのか報復にでるぞ、なんて叫んでいる。
現実の世界は前述した通り、あらゆる対立が生み出されたり、さらに激化したりで、俺自身がこの世に生きてて嫌になることが多々あるが、本作が導き出す世界もやはり絶望か、それとも希望か。

 チリのある一家を通して半世紀にも渡る激動のストーリーの紹介を。
 1928年のチリにおいて。政界、財界において権力を持つ名家であるトルバエ家。政界のトラブルに巻き込まれ長女のローザが毒殺される。まだ幼い次女のクララ(メリル・ストリープ)は超能力をもっており、あらかじめ予知能力で、そのような悲劇が起きることを想像していながらも助けられなかったことにショックを受け、それ以来すっかり口を閉ざしてしまった。
 ローザの婚約者であったエステバン(ジェレミー・アイアンズ)は彼女の死にショックを受けるが、それをバネに20年間働きづめて大農園を作り上げる。故郷に戻ったエステバンはすっかり大人の女性になったクララと愛し合い結婚し娘ブランカ(ウィノナ・ライダー)を授かる。しかしながら、次第にエステバンは権力を握り、横暴になっていくのだが・・・
 
 観ている最中はベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『1900年』を思い出した。内容もチョット被っているしジェレミー・アイアンズ演じるエステバンだがあの映画のバート・ランカスターに風貌が似ていると思ったのが俺だけか。しかし、このエステバンの政治家になってからの横暴振りが凄い。自らの農場で働く労働者はこき使い、逆らう人間には銃を向ける。そして、嫁が居るのに外で女を孕ませて反省もせず、一緒に暮らしていた姉は邪魔だからと追い出し、嫁や娘にも手をだしてしまう。そりゃ~、こんなに相手の言うことに耳を貸さない独裁的な人間が現れたら社会主義が台頭するのも当然だ。当たり前だがこういう人間は次第に孤独になっていく。
 しかし、一方でこんなバカ亭主に対しても愛を持って接するのがメリル・ストリープ演じるクララ。正直、こんな男をなぜ愛するのかと不思議に思ったりしたが、心の綺麗な人は相手の長所を見抜くのがうまい。全く役に立っていないような超能力を持っているのが不思議だったのだが、ここぞという時に超能力を発揮した場面は大いに感動した。俺なんかだったら超能力を私利私欲に利用してしまいそうだが、心の清い人は違う。そして、クララと横暴な夫エステバントとの距離感が抜群。ひたすら夫の暴力に耐えている女房が描かれているような映画もあるが、それはハッキリ言ってダメだ。実はこの映画には独裁者如きに立ち向かう勇気が描かれているのが気持ち良い。
 そしてこの映画の最大のテーマは赦し。この赦しというのがわかっていてもできないし、俺なんかはとっても反省させられた。そして、この赦しが次の世代へ受け継がれていく過程に大いなる希望を感じさせる。本当にこの赦しの精神は見習いたいのだが、そうは言っても永遠に許せない奴が一人だけいる。
 まあ観ている最中はメリル・ストリープのブリッコな演技にムカついたりしたが、途中からはそんなことを忘れて集中して観ることができた。他にも褒めるべき点があったように思うが、それは各自で確認してもらうことにしよう。
 スターはスターでも名優達の豪華共演に酔いたい人、重厚な人間ドラマが観たい人、南米が舞台なのにラテン系の人間が少ないことが気にならない人、多くのテーマを深く読み解きたい人・・・等に今回は愛と精霊の家をお勧め映画として挙げておこう。

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 監督はデンマーク人のビレ・アウグスト。個人的にデンマーク人の映画監督は優秀だと認識しているが、そのように思わせてくれた監督さん。北欧の大自然の厳しさを感じさせるペレ、あのヴィクトル・ユゴーの普及の名作の映画化作品のレ・ミゼラブル、偉大なる政治家ネルソン・マンデラの知られざる実話を描いたマンデラの名もなき看守がお勧めです。





 
 
 
 

 

 

 
 
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映画 暗殺の森(1970) 巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の傑作

2019年03月27日 | 映画(あ行)
 もう昨年のことになるが巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が亡くなった。日本人には坂本龍一が音楽を担当し、彼も出演していたラストエンペラーが馴染み深いか。しかし、巨匠と呼ばれるだけあって他にも傑作、問題作を連発。そんな中でも比較的お勧めしやすい作品となると今回紹介する暗殺の森ということになる。なんだか物騒な邦題がつけられているが、原題はイタリア語でIl conformista。日本語に訳すと『同調者』という意味になる。確かに本作を観ると邦題をつけた人の気持ちが、わからないでもない。しかし、根幹をなすテーマとしては原題の『同調者』がより相応しい。
 よく映画を観る時の心得として知ったからしい人が、『映画というのは何の予備知識もなく観るのが正しい見方だ』なんて上から目線で語る人がいる。しかしながら予備知識なしで本作を観ると多くの人が難解に感じ、退屈する可能性が高い。せめて本作を観る前に第二次世界大戦前後のイタリアという国家を知っておいて方が良いだろう。戦前から戦中にかけてイタリアはベニート・ムッソリーニ独裁の全体主義、軍国主義であるファシズムが台頭する。しかしながら、戦争で負け続け、ファシズムに勢いが無くなると戦争末期から戦後にかけてイタリアに大きな波が吹き寄せてきたのは共産主義。イタリアの政治的イデオロギーの変化を予備知識として持っておけば、本作のジャン=ルイ・トランティニャン演じる主人公の男性の露骨すぎる卑怯な振舞いの変化に納得するはずだ。
 
 一人の男を通して、歪んだ思想、恋愛が描かれているストーリーの紹介を。
 第二次世界大戦前のイタリアにおいて。すっかり大人になった青年マルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)だったが、彼は幼いころに大人の男性から性的虐待を受けそうになり、相手を射殺してしまったことに、ずっとトラウマを抱えていた。そんな悩みを払拭するためにファシズムにのめり込んでしまい、組織の一員となる。
 そんなマルチェロにファシズムの幹部から命令が降りる。それは、今はパリに亡命している大学での恩師であるクアドリ教授(エンツォ・タラシオ)を見張ること。クアドリ教授は反ファシズム運動の活動家として動きを活発化させていた。マルチェロはちょうど若くて可愛いジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と結婚したところであり、新婚旅行を口実に彼女と一緒にパリへ向かう。マルチェロは久しぶりにクアドリ教授と出会い、会話も交わす。しかし、マルチェロはクアドリ教授の妻で若くて、妖艶な美貌をしているアンナ(ドミニク・サンダ)の虜になってゆく。
 マルチェロはジュリアに内緒でこっそりとアンナと楽しんだりしていたが、マルチェロに上司からクアドリ教授を殺害しろとの命令がくだり・・・

  政治、サスペンス、人間ドラマがドロドロに描かれており重厚な雰囲気が漂う映画であるが、何気にそんなシーン居る?見たいな場面も随所に見られる。唐突に同性愛、幼児性愛、不倫といった歪んだ性描写が出てくるが、そういうシーンを何の恥ずかし気もなく描くところが、ベルトルッチ監督らしいところ。本作が公開された1970年は、まだベルトルッチ監督の年齢が29歳の若さだったことを考えると、天才は常人にはない発想があることを思い知らされる。
 出番はそれ程多くないのだがドミニク・サンダのエロい雰囲気のインパクトが強くて映画のテーマを忘れそうになってしまうが、あくまで本作の主人公はジャン=ルイ・トランティニャン演じる素っ頓狂な理由でファシズムに傾倒する男性。しかしながら、何かとこの男が優柔不断のダメ男。政治信条のブレっぷりは凄いし、女性関係もだらしないし、自ら責任を取らないどころか他人のせいにしてしまう卑怯者。こういうような奴は本当に何処でも居るんだということを思い知らされる。しかし、映画は観ている者に訴えかける。果たしてお前はこの男を非難する資格があるのか?と。
 ダメ男のストーリーを延々と見させられることに退屈さを感じる人もいるかもしれないが、重厚な映像は流石はベルトルッチ監督。タイトルの名前にもある暗殺場面のシーンは残酷でありながら美しさを感じさせるし、セットの美術的エッセンスはなかなかの見所で良い映画を観た気分にさせる。
 ヨーロッパの名作に興味がある人、ベルナルド・ベルトルッチ監督と聞いて心が躍る人、綺麗な女性を見たい人等に今回は暗殺の森を紹介しておこう。

暗殺の森 [DVD]
アルベルト・モラヴィア,ベルナルド・ベルトルッチ
紀伊國屋書店


 監督は前述した通りベルナルド・ベルトルッチ。5時間を超える長い映画だがイタリアの現代史が理解できた気分になれる1900年。当時は芸術か猥褻かで議論の的になったラストタンゴ・イン・パリ、すっかり冷めきったアメリカ人夫婦が愛の絆を確かめようとする姿が痛々しいシェルタリング・スカイがお勧めです。






 
 
 




 

 

 
 
 
 







 
 

 
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