褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 生きるべきか死ぬべきか(1942) ポーランド国民への応援映画です

2018年10月21日 | 映画(あ行)
 ウィリアム・シェークスピア原作のハムレットでの有名な台詞『To Be or Not to Be(生きるべきか死ぬべきか)』がタイトル名になっているが、このタイトルが本作中でも抜群の効果を発揮するのが今回紹介する映画生きるべきか死ぬべきか
 本作は1942年という第二次世界大戦中の真っ最中に製作された映画。当時ナチス・ドイツにボロボロに蹂躙されてしまっていたポーランドに対して、ハリウッドからポーランド国民に向けてのエールを送った映画だ。しかも、エールを送っただけでなく誰が観ても笑えるコメディ映画になっているところが、当時のハリウッドの底力を感じさせる。まあ、俺が言っていることを信用してもらえないかもしれないが、古今東西の数多あるコメディ映画の中でも最も笑える部類に入る映画。しかも、笑いが洗練されているのでお笑いの勉強もできる有難すぎる映画だ。

 さて、早速だが最初から最後まで笑えるストーリーの紹介を出来るだけ簡単に。
 1939年のポーランドのワルシャワにおいて。有名女優であるマリア・トゥーラ(キャロル・ロンバート)と、その夫であり自称ポーランドの名優ヨーゼフ・トゥーラ(ジャック・ベニー)の夫妻を看板スターとする劇団があり、連日満員の盛況だった。
 ある日、ハムレットを上演中に、ハムレットを演じていたヨーゼフが、ここは一番の見せ場とばかりに、有名な台詞である『To Be or Not to Be(生きるべきか死ぬべきか)』を言うのだが、その瞬間に客席にいたイケメンの若者が立ち上がってその場を去って行く。あまりのショックにヨーゼフはすっかり自分の演技力に自信を無くしてしまう。
 実は若者はポーランド空軍に属するソビンスキー中尉(ロバート・スタック)であり、ヨーゼフの長台詞中に『To Be or Not to Be(生きるべきか死ぬべきか)』を合図に、マリアの楽屋へ行き彼女に逢っていたのだ。
 ハムレットが上演される度にソビエンスキー中尉とマリアは相変わらず逢瀬を重ねていたが、いよいよナチスドイツがワルシャワに侵攻。ハムレットの舞台劇も中止を余儀なくされる。
 その後、ソビエンスキー中尉はイギリスにいてドイツへの反撃の機会をうかがっていた。仲間たちと故郷ワルシャワの事を話している時に、その場にシレツキー教授(スタンリー・リッジス)もいた。彼は近いうちに秘密任務としてワルシャワに行くことになっていた。しかし、ソビエンツキー中尉はシレツキー教授がドイツのスパイであることを見抜く。
 ソビエンスキー中尉はワルシャワヘ戻りトゥーラ夫妻たち劇団のメンバーと一緒にシレンツキー教授の狙いを阻止しようと奮闘するのだが・・・

 色々と笑えるシーンがあるのだが、冒頭の始まり方が凄い。まだドイツがポーランドに侵攻する前なのにワルシャワの中心地にヒットラーが独りで現れる。その場にいた人々はヒットラーの出現に驚くが、当のヒットラーは何も気にせずに立っている。実は・・・なのが笑わせるし、これが最後のクライマックスの伏線になっているのに感心する。
 トゥーラ夫妻とソビエンツキー中尉が三角関係のままナチスドイツを必死で騙そうとするが、ヨーゼフが彼らの関係に気を揉んでいるために、ついつい自分の役割に集中できなくて失敗しそうになっているのが笑える。
 それとナチスドイツの描き方も笑える。特にエアハルト大佐という偉いさんがいるのだが、このオッサンが頭が悪く、自分のミスをことごとく部下に押し付ける無責任な人間。もし本当にナチスドイツの人間が、こんな奴ばかりだったらもっと早く戦争が終わっていたのにと思ってしまった。
 他にも笑える場面があるし、けっこうなスリルもあったりで本当に楽しい映画。これが第二次世界大戦中に製作されたことに多くの人が驚くはずだ。
 笑える映画を観たい人、ポーランドに興味のある人、熟練したテクニックを感じたい人、そして下ネタでしか笑わすことが出来ない人、エルンスト・ルビッチ監督と聞いて心が躍る人・・・等々に今回は映画生きるべきか死ぬべきかをお勧め映画に挙げておこう。

生きるべきか死ぬべきか [DVD]
キャロル・ロンバード,ジャック・ベニー,ロバート・スタック
ジュネス企画


 監督はハリウッド黄金期を支えたエルンスト・ルビッチ。洗練されたユーモアは多くの人を魅了した。彼のお勧めはグレッタ・ガルボ主演のニノチカ、マレーネ・ディードリッヒ主演の天使、真面目に生きようと思える天国は待ってくれる、ジェームズ・スチュアート主演で文通のやり取りが懐かしい街角 桃色の店が良いです。





 
 

 

 
 
 

 
 

 
 
 
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映画 ウォーリアーズ(1979) ストリートギャングの逃亡アクション

2018年09月24日 | 映画(あ行)
 よく夜のニューヨークは怖いと聞くが、確かに今回紹介する映画ウォーリアーズを観てたら怖い。一斉にニューヨークのストリートギャング達が集まるシーンも怖いが、夜のニューヨークの風景が怖い。顔をペイントしながらバットを持っているグループや、もちろん拳銃を持っているグループもあり、へんてこりんな衣装をしたグループが多数。夜中にこんな奴らと運悪く出くわしたらアーメンと心の中で叫んで死を覚悟しなければならない。
 それにそこら中にある壁や電車に落書きしてあるのが怖い。ニューヨークの夜にうっかり電車に乗ったらストリートギャングが乗っていたらと思うと、その後に何が起きるかを想像すると怖い。まあ、ニューヨークの治安の悪さがよくわかり、日本に居ててもなるべく夜は外出を控えようと心に決めた。

 さて、ストリートギャングがニューヨークのスラム街をひたすら逃げるストーリーの紹介を。
 ニューヨークのストリートギャング達が一斉にブロンクスの公園に集まる。ニューヨークのストリートギャングで最も勢いのあるリーフズの呼びかけでニューヨーク中から集まって来たのだ。ブルックリン・コニーアイランドを縄張りとするギャングであるウォーリアーズもやって来た。リーダーは黒人のクリオン(ドーシー・ライト)、その右腕であるスワン(マイケル・ベック)を含めて9人でやって来た。他のグループも9人一組でやって来たのだが、およそ100組のグループのストリートギャング達が集まったのだが、流石にメチャクチャ多いし、怖い。
 リーフズのリーダーであるサイラス(ロジャー・ヒル)が高い台に上って集まった全グループに呼びかける。『停戦協定を今こそ結び、ニューヨークを我々で支配しよう!そうすればマフィアも警察も怖くない』なんて演説してたら、ズドンと一発。サイラスは撃たれて高い台から落ちてしまう。その時に外で待機していた警察も乗り込んでくるわ、ギャング同士で大騒ぎ。実は撃ったのはローグスのリーダーであるルーサー(デヴィッド・パトリック・ケリー)なのだが、ルーサーは『撃ったのはウォーリアーズだ』と叫び濡れ衣を着せる。
 ウォーリアーズのリーダーであるクリオンはリーフズのメンバーたちにリンチに遭ってしまい死亡。残りのウォーリアーズのメンバーはスワンをリーダーとして、とにかくバラバラになりながらもコニーアイランドへ逃げようとするのだが、リーフズの新しきリーダーであるマサイはウォーリアーズに復讐するために全グループにウォーリアーズを全員生かして帰らせずぶっ殺せと指示をだし、ウォーリアーズをひたすら追いかける・・・

 ストリートギャング達は馬鹿なのかもっと早く逃げれば良いのに、なぜか可愛い女の子が一人ついてきて足手まとい同然で一緒に逃げることになってしまったり、ちょっと休憩と女の子ばかりがいる部屋でエロいことでもしようかと考えていたら、実は女ばかりのギャング集団で危うく撃たれそうになったり、ウォーリアーズのメンバーの中に夜の公園の椅子に座っていた女性に気を取られてその女性にちょっかいをかけたら手錠をかけられてしまってパトカーが急に集まってきたりで、もっと必死で逃げないといけないのに、なぜか女性が現れるとそっちの方に気をとられてしまうのが笑わせる。しかし、メインはバイオレンス。逃げながも追いかけてくる奴は叩きのめす。アクション映画として見せ場はたくさんあり、けっこう燃える映画になっている。
 それと笑わせるのが情報通の黒人女性DJの存在。『どこどこのメンバーがウォーリアーズを捕まえるのに失敗しました』なんて放送してくれるのだが、ストリートギャングの世界もネットワークが凄いな~と妙なところで感心してしまった。確かにこれだけネットワークが充実していると逃げ切るのが大変だ。
 怖そうな奴らがたくさん出てくるが、残酷極まりないシーンは無いのでグロさはない。なかなかよくできたアクション映画であり、結末はちょっとさわやかに感じるぐらいだ。
 ロクな人間が登場しない映画だが、夜は独りで外出しない、怖そうな人とは目を一瞬でも合わさない、可愛い女性だからと言っていつも手を出してはいけない、電車に落書きをしない、ゴミはきちんと拾いましょう・・・等、見た目とは裏腹に人生の勉強にもなるストーリーが展開される映画ウォーリアーズを今回はお勧め映画に挙げておこう


ウォリアーズ [DVD]
マイケル・ベック,ジェームズ・レマー,トーマス・ウェイツ,ドーシー・ライト,ブライアン・タイラー
パラマウント


 監督はアクション映画に定評のあるウォルター・ヒル。犯罪人を車に乗せて逃亡する主人公を描いたザ・ドライバー、実際の兄弟が演じている西部劇の傑作ロング・ライダーズ、白人刑事と黒人の囚人が組んで犯人捜しをする48時間、ちょっとロックなアクション映画ストリート・オブ・ファイヤーが良いです。
  

 
 
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映画 アルタード・ステーツ 未知への挑戦(1979) 人類誕生の謎に迫る

2018年09月17日 | 映画(あ行)
 本作に出てくる重要な道具として人間が入れるタンクが出てくる。それはアイソレーション・タンク。どうやら色々な用途で世界中及び日本でも使われているようだが、本作ではウィリアム・ハート演じるか科学者が変性意識状態(日常的な意識状態以外の意識状態のこと)になるために、自らアイソレーション・タンクに入って、自分自身で人体実験をしている。ちなみにタイトル名のアルタード(altered)は変性意識状態の事を示している。タンクの中には液体が入っており、この科学者が何のためにアイソレーション・タンクに入るのかは、後ほど追々と説明するが、個人的には好き好んで入ろうと思わない。

 さて、あまりにも優秀過ぎる科学者であるがために、この世の最大の謎を解明しようとするストーリーの紹介を簡単に。
20歳代半ばにして博士号の資格を持つ天才科学者エドワード(ウィリアム・ハート)は自ら何時間もアイソレーション・タンクに入って研究していた。人類は古代から進化のプロセスを辿っているので、人類の細胞は原始時代からの今まで引きずっているので、細胞のもっている記憶を逆に原始時代まで遡ることによって、人類の誕生の真理が明らかになるはずだと考えていた。アイソレーション・タンクに入って、幻覚を引き起こすのだが、エドワード曰く『面白いぞ』とか言って、外で監視していた友人のアーサー(ボブ・バラバン)と話していた。
 その後にエドワードは人類学者のエミリー(ブレア・ブラウン)と結婚し、子供も生まれて研究を一時中止する。お互いに生活は順調だったのだが、エドワードはメキシコにキノコを食べて幻覚を引き起こし過去にトリップをする部族が居ることを知る。またまた研究にのめり込むエドワードに愛想を尽かしてエミリーは子供を連れて出て行ってしまう。
 メキシコへ行き、キノコの効果を自ら確かめたエドワードは、また自らアイソレーション・タンクに入る。そうするとキノコによる幻覚作用と併用すると効果が抜群。彼の頭の中には原始時代にトリップするだけでなく、他のイメージも見える。どんどん実験を重ねていくのだが、次第にエドワードの体にも変化が訪れるのだが・・・

 アイソレーション・タンクやキノコなど使って幻覚を引き起こしているが、見ていて俺自身が麻薬をを使ってラリっている気分になってしまった。トリップした時のイマジネーションがなかなか面白く、キリストを茶化したような映像も出てくる。
 けっこう笑えたシーンが実験後に口から血を流しているエドワードの体のレントゲンを撮り、それを専門家に見せると『猿のレントゲンなんか持ってくるな』と言われたりするのには笑ってしまった。
 しかし、後半はなんだかホラー映画。すっかり変身してしまったエドワードが暴れまくる。さて、そんなエドワードの暴走は止められるのか?ラストシーンは正直なところ、俺はこんな結末で良いのか?なんて思ったのだが、もしかしたら感動する人の方が多いかもしれない。
 SF映画とホラー映画が融合したような映画。エイリアンみたいなアクションシーンは全くないが、色々と見どころはたくさんある。豊かなイマジネーション、そんなこと有りえね~!なんて思わせたり、ブラックユーモア的なセンスで笑わせたり・・・。
 ケン・ラッセル監督作品と聞いて観たいと思った人、幻覚症状を味わってみたい人、何だか変わった映画を観たい人、科学者になりたい人・・・等に今回はアルタード・ステーツ/未知への挑戦をお勧めしておこう。


アルタード・ステーツ~未知への挑戦~ [DVD]
ウィリアム・ハート,ブレア・ブラウン,ボブ・バラバン
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督はイギリス人のケン・ラッセル。シュール、エロ、変態のイメージがあります。彼のお勧めは少し毒舌なミュージカル映画トミー、ちょっとエロいホラー映画白蛇伝説、男二人がスッポンポンで対決する恋する女たち、キャスリン・ターナーが綺麗だった頃のクライム・オブ・パッションが良いです。
 

 




 

 

 

 
 





 

 
 
 
 
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映画 或る夜の出来事(1934) ロマンチックコメディの傑作

2018年09月05日 | 映画(あ行)
 ロマンチックコメディの名作で誰もが知っている映画となるとローマの休日が真っ先に思い浮かぶだろう。しかし、ローマの休日に影響を与えている映画となると今回紹介する或る夜の出来事が俺の頭にはパッと思い浮かぶ。しかし、この映画はローマの休日だけでなくその後における恋愛映画において大いなる影響を今でも与え続けている傑作だ。ボーイ・ミーツ・ガール 、スクリューボール・コメディといった恋愛映画によく使われる言葉は、この映画から始まる。
 合コン、飲み会、イベント等で初めて顔を合わせた男女が、第一印象が悪くてそのまま何も発展しないことが多々ある。俺もその類で何の成果も出ない合コンを繰り返しては、電話番号もゲットできずにカネだけ無駄に浪費している今日この頃。だいたい俺の良さは出会った一瞬だけではわからない。
 まあ、俺のボヤキはどうでも良いが、本作はまさに偶然にも出会った知らない者同士の男女が、最初は言い合いばかりしながらも次第に仲良くなっていく話。ところがこの男女の2人が、かなり笑わせてくれる。マイアミからニューヨークまで世間知らずのお嬢さんと、少々態度が横柄な新聞記者との珍道中。恋愛映画でもありロードムービーの趣もあったりする。

 色々な名シーン、名台詞、笑いがいっぱいのストーリーを簡単に紹介を
 富豪のお嬢さんであるエリー(クローデット・コルベール)には飛行士であるウェストリー(ジェムソン・トーマス)という名の婚約者がいた。しかし、ウェストリーの女癖の悪さは有名で、エリーの父は彼女を結婚させないためにマイアミ沖の豪華船に監禁していた。父親はエリーを何とか説得しようとするが失敗。エリーは船からダイブして逃亡してしまう。父親はさっそく探偵を雇って娘のエリーを探させる。
 エリーはマイアミからニューヨークに居る婚約者のウェストリーの所まで夜行バスで向かおうとする。そこへ居合わせたのがつい先ほど新聞会社の社長と喧嘩してクビになってしまった失業中の記者ピーター(クラーク・ゲーブル)。2人はいきなりバスの座席の取り合いで喧嘩してしまう。お互いに第一印象が悪くて何かとソリが合わないが、ピーターはエリーが富豪の令嬢だということを知ってしまい、これは大スクープになることを確信し、しばらくエリーと一緒に行動することに決めるのだが、次第にエリーはピーターに好意を寄せてしまう・・・

 世間しらずのお嬢さんの一人旅はやばい。鞄を盗まれたり、切符の買い方がわからなかったりで、もう少し勉強しろよ!なんて思ってしまう。しかし、この映画は名シーンの連発。大雨でバスが止まってしまい、2人は夫婦を装って一つの部屋で寝ることになるが、この時に二人を仕切る毛布をジェリコの壁に例えるが、聖書を少しかじっていたらけっこう笑えるし、これがラストシーンで大いなる効果を発揮する。他にも途中でバスを諦めてヒッチハイクをするシーンがあるが、ピーターが偉そうにヒッチハイクのやり方をエリーに教えるが、全く車が止まらない様子に笑える。ヒッチハイクは男性がするよりも女性にしてもらう方がすぐに車が止まってもらえることがわかる。
 それから出番は少ないがお父さんのキャラクターが良い。富豪とはいえ決してお金が大好きな人間ではなく娘のことを考えた行動が素晴らしい。これはなかなか感動した。他にもこの映画を褒めるところはたくさんあるのだが、とにかく笑い、テンポ、ストーリー展開が洗練されていて、何だか素敵な映画を観たような気分になる。
 笑える映画を観たい人、名監督の熟練のテクニックを見たい人、古典的名作映画の素晴らしさを知りたい人に今回は或る夜の出来事をお勧め映画として挙げておこう。


或る夜の出来事 [DVD]
クラーク・ゲーブル,クローデット・コルベール,ウォルター・コノリー,ロスコ・カーン,アラン・ヘイル
ファーストトレーディング


 監督はフランク・キャプラ。ハリウッド全盛期を支えた名監督。本当にどの作品も素晴らしい。ひたすら生きる気力が湧いてくる素晴らしき哉、人生!、この世の中にこういう人間は居ないのかと思わせるオペラハット、マスコミ関係の人はぜひ見て欲しい群衆、生き方に悩んでいる人は必見の我が家の楽園、キャプラには珍しいサスペンスの毒薬と老嬢などお勧め多数です。 

 


 


 

 
 

 

 
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映画 アラビアのロレンス(1963) アラブに命をかけた男のストーリー

2018年08月24日 | 映画(あ行)
 時に名作と呼ばれる映画は歴史上において英雄でもない人間にスポットを当てる時がある。例えばスタンリー・キューブリック監督の映画スパルタカス、メル・ギブソン監督の映画ブレイブ・ハート(ウィリアム・ウォレスが主人公)等がそう。両作品ともに暴政に苦しんだが故に反乱を起こす実在の人物であるスパルタカス、ウィリアム・ウォレスを描いているが結局は失敗に終わっているために、彼らには歴史上においては光を照らされていない。
 そして今回紹介する映画アラビアのロレンスも今更ここで載せなくても有名すぎるぐらいの名作である。しかし、本作の歴史上の実在の人物であるトーマス・エドワード・ロレンスだが、実はこの人物も歴史上において確たる功績を挙げているわけではないので、歴史上においてこの人も光を照らされていない。前述したスパルタカス、ウィリアム・ウォレスの2人は反乱に失敗したが、その後の歴史を振り返れば決して彼らの反乱は無駄ではなかったことに気づく。歴史をひも解けば、一番初めに改革をしようとした者は失敗するものであり、その後に現れる同じ志を持った人間によって成し遂げられるのが普通だ。
 さて、今回紹介する映画アラビアのロレンスの主人公であるトーマス・エドワード・ロレンスはどのように評価されるのだろうか?実は本作はいきなり主人公のトーマス・エドワード・ロレンスがバイク事故で亡くなるシーンから始まる珍しいパターン。その後に彼の葬式が行われた教会で多くの人が集まるのだが、彼らがロレンスを評価する言葉が次々に述べられるのだが賛否両論で極端に意見が分かれる。さて、彼は本当に英雄なのか、それとも偽善者なのか?

 アラブに広がる砂漠を背景に名シーンが連発する映画の印象が強いが、実はロレンスの人間味溢れるストーリーの紹介を。
 1916年、イギリス領エジプトのカイロの英国司令部において。何かと風変わりなことで知られているロレンス(ピーター・オトゥール)だったが、アラビア語に堪能だったことからアラブ方面へ行かされることになる。目的はオスマン帝国からの独立を目指して反乱を指揮しているファイサル王子(アレック・ギネス)と会い、現在のアラブ情勢の情報を得ること。アラブ人をガイドに付けて、ラクダものりこなせるようになるが、道中でアラブ民族同士が争うのに嫌気がさしてきた。
 ロレンスがファイサル王子の基地に向かうと、そこはオスマン帝国の空軍による爆撃を食らっている最中でアラブ反乱軍は成す術もなかった。ロレンスはファイサル王子と会談し、イギリスはアラブの独立闘争を助けることを約束する。ロレンスは一人になっていると、ある考えが浮かぶ。それはオスマン帝国軍の港湾都市であるアカバを攻撃すること。熱い砂漠を何日もかけて歩き、敵の背後をつく奇襲作戦だったが、誰も成功するとは思っていなかったが、まんまと成功を収める。しかし、ロレンスはアカバ攻略に際して、多々あるアラブ民族をまとめる難しさを痛感する様々な出来事を目にする。
 その後もロレンスはアラブの独立のために、アラブの民族衣装まで着てオスマン帝国軍と戦う。しかし、彼はアラブ独立の大義のために戦ってきたつもりが、そんな夢を打ち砕くことが裏では行われていたことを知ってしまい・・・

 よくロレンスは変人と言われることがあるが、ここで描かれるロレンスは人情に厚い。しかし、いざ戦うとなると多くの犠牲者を出してしまうし、アカバ攻撃にしても上司に連絡もせずに彼の独断の行動。時々、アラブが好き過ぎて我を忘れてしまうこともある。彼はアラブのために戦ったが結果はどうだったのだろう?それは今の中東を見ればわかる。中東に色々な国が出来上がってしまい、アラブの国同士で争い、しかもアメリカやロシアやイギリスなどの大国の思惑が絡んでいる状態が今まで続いている。よく言われるイギリスの三枚舌外交に利用されたというべきだろう。
 本作でよく語られるのは砂漠をとらえた映像美。砂漠の地平線からラクダに乗った人物がやって来るシーンはよく覚えているし、マッチの炎を消すと砂漠が現れるシーンは映画好きには語り継がれている。奥行きをかんじさせるショットの凄さなら、あらゆる映画の中でもっとも優れているいえるだろう。
 他にも戦闘シーンも印象に残るし、音楽も素晴らしい。しかし、個人的には冒頭のシーンを活かしたラストシーンに切なさと虚しさが湧き出てくる。そしてファイサル王子がロレンスに最後に出会ったときに語る台詞。これが世界の外交なんだということが理解できる。

 なぜ今の中東はアラブ民族同士で争うのかを知りたい人、世界の外交の厳しさを知りたい人、約3時間半という長時間の映画に耐えることが出来る人、砂漠の美しさと残酷さの両方を知りたい人、人間の内面も砂漠と同じで善悪があるということを理解したい人・・・等に映画アラビアのロレンスを今回はお勧めしておこう。

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督はイギリス人のデビッド・リーン。彼の映画は本作も含めて大スクリーンで見たくなる雄大さが特徴。ベニスを舞台にした中年男女の恋を描いた旅情、戦争映画でありながら日英米の軍人の違いを描いた戦場にかける橋、ロシアの大地の自然の厳しさを余すことなく描いたドクトル・ジバゴ、アイルランド独立を背景にした不倫映画ライアンの娘などお勧め多数です。




 
 
 

 
 

 


 
 
 
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映画 甘い生活(1960) 退廃したローマが見れる

2018年08月17日 | 映画(あ行)
 イタリアのローマと言えば、日本人もそうだが世界中の人が観光旅行に行きたがる憧れの都市。あの名作中の名作である映画ローマの休日を観て、ローマに行きたいと思った人は多いはずだ。ところがイタリア人の超有名監督がローマを描くと、そこには我々のイメージをぶっ壊すようなローマが現れる。退廃的、堕落しきったローマが描かれているのが今回紹介する映画甘い生活
 冒頭からローマの上空をキリスト像を吊るしたヘリコプターが飛んでいたり、主人公のイタリア男は彼女が居るのにも関わらず、セレブの美女をナンパ、ハリウッドからやってき美人女優とはトレビの泉で戯れて水遊びをしているし、上流階級は乱痴気パーティー。反カトリックやモラル崩壊を感じさせ、ローマに住む人の心の闇をえぐり取ったスキャンダラスな内容は、戦後のイタリア映画に現れたイタリアネオリアリズモ的な作品に終止符を打っただけでなく、世界中にも衝撃を与えた。

 さて、それでもやっぱりローマへ行ってみたいと思わせるストーリーの紹介を
 作家を夢見てローマにやって来たマルチェロ(マルチェロ・マストロヤン二)だったが、すっかりゴシップ記者に成り下がり、セレブな有名人が現れる高級クラブやカフェでシャッターチャンスを狙っている。しかも恋人のエマ(イヴォンヌ・フルノー)と一緒に住んでいるのに、セレブの美女マダレーナ(アヌーク・エーメ)をナンパするだけでなく、ハリウッドからやって来た美人女優シルビア(アニタ・エグバーグ)もナンパしてトレビの泉の中に入って遊んでいたりした。しかしながら彼の心はどこか満たされない。
 ある日のこと、マルチェロはエマを連れて、古い友人のスタイナー(アラン・キュニー)の自宅に行く。スタイナーは頭も良く、妻と子供二人で幸せそうに暮らしているのを見て、マルチェロは少しの安らぎを得て、自分も将来はスタイナーみたいに幸せに暮らそうと思うようになる。
 それでも、相変わらずマルチェロの女遊びは止まらず、上流階級の人の中に入り込み遊びまくる。しかし、ある日のことスタイナーが子供二人を道連れに無理心中おこしてしまう。そのことにショックを受けてしまったマルチェロは・・・

 伊達男のマルチェロ・マストロヤンニが彼女が居りながらナンパしまくるのが印象的。特にセレブな美女を口説きまくる様子は見ていて、羨ましいとは思うが、やっぱり俺には真実の愛が欲しい。そして、我々が憧れていたローマの退廃、堕落にショックを受ける。本作で描かれるローマからは、あの隆盛を極めていた頃の、ローマ帝国のプライドなんか何も感じられない。
 すっかりローマによって心身ともに疲れ切ったマルチェロが最後に見ることになる、浜辺に打ち上げらた怪魚は何を意味するのか?きっとそれは今の自分を象徴しているのだろう。それにしてもこれほど観終わった後に空虚な気分になる映画は珍しいが、これからは競馬や風俗にお金を使うのは控えようと思った。
 三時間もある長時間映画に耐えられる人、これからローマに行きたいと思っている人、人生の厳しさを知りたい人、フェデリコ・フェリーニ監督と聞いて心が躍る人、ヨーロッパの名作映画を観たい人・・・等に今回は映画甘い生活をお勧めとして挙げておこう。

甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD]
マルチェロ・マストロヤンニ,アニタ・エクバーグ,アヌーク・エーメ,イヴォンヌ・フュルー
アイ・ヴィ・シー


 監督は前述したようにイタリアと言うよりも世界の巨匠フェデリコ・フェリーニ。彼の作品は今回紹介した甘い生活から作風が変わってしまいますが、個人的にはそれ以前の作品が好き。永遠の聖女とでも言うべきジェルソミーナの純真な心に感動する、人生の崖っぷちに追い込まれている詐欺師の姿を描く、騙されても騙されても決して希望を失わずに生きようとするカビリアの夜がお勧めです。





 


 
  


 
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映画 インファナル・アフェア(2002)2人の男の葛藤が描かれています

2018年08月08日 | 映画(あ行)
 巨匠マーティン・スコセッシ監督がリメイクしたように抜群に面白い映画が今回紹介するインファナル・アフェア。香港アクション映画であり原題は無間道。この原題の意味するところは、仏教用語でいう無間地獄のこと。つまり、一度入ると抜け出せない、絶え間なく続く苦しみを指す。この原題の意味を知って本作を観れば、主人公である格好いい2人の男が善と悪の狭間で葛藤する様子に切なさが込みあがってくるはずだ。
 潜入捜査官としてマフィアの組織に入り込み、ボスから厚い信頼を得るまでになるトニー・レオン、そのマフィアの組織から警察に入り込み内部調査課の課長まで上り詰めたアンディ・ラウ。相対する境遇の2人の男。2人とも何かと優秀であるために違う世界でも出世してしまうが、それが地獄の苦しみの始まりだ。
 警察であるのに警察から追われるという矛盾に苦しみ、それ以上にいつ正体がバレてしまうかという不安から精神病院通いをする羽目になり、もう一方はマフィアの手先ながら刑事として過ごしていくうちに何時しか善人になりたいと願う気持ちが芽生えてくる。そんな2人に果たして未来はあるのか?やがて彼らは導かれるように宿命の対決を迎えるのだが。

 早速だが自らの正体を偽って生きていくことの辛さを思い知らされるストーリーの紹介を
 マフィアに拾ってもらった青年ラウ(アンディ・ラウ)は組織の親分であるサム(エリック・ツァン)によって警察学校に送り込まれる。また警察学校でその優秀さをウォン警視(アンソニー・ウォン)から認められた青年ヤン(トニー・レオン)は警察学校を退学処分になるが、それはもちろん建前。実はサムのマフィア組織へ潜入捜査官として送り込まれたのだ。それから10年後、ラウは内部調査課の課長にまで昇進し、ヤンは親分サムの厚い信頼を得ることに成功していた。
 ある日のこと、ウォン警視はヤンから麻薬の密売が行われるとの情報を得る。警察側は密売現場を押さえようとするが、警察の情報はラウによってマフィア側に筒抜けになってしまう。マフィアの組織にしてみれば麻薬の密売に失敗、警察にすれば現場を押さえることができずに検挙に失敗。そのことによりお互いの組織にスパイがいることが判明。両者がスパイ探しをしていく内に警察とマフィアの争いもエスカレート。お互いにおびただしい犠牲者が出るが、それはラウとヤンの宿命の対決が近づくことを意味するのだが・・・

 いつ正体がバレるかのドキドキ感が非常に心地いい。香港映画といえばカンフー、銃撃戦のような見た目から派手な展開で楽しませることが多いが、本作は心理戦で楽しませる。それでいてインパクトのある死人も出てきたり、意表をついた展開もあったりで、香港映画にしては脚本がしっかりしているように感じた。
 しかし、本作を観ていて思うのは悪人が善人になろうとしても決してなり切れないこと。俺には本作の結末は、それは無いんじゃないの~!?なんて思えたが、これからも自分の正体をバレずに一生を過ごさないといけないことを考えると、まさに無間地獄。本作は三部作なのでその後の展開が楽しみだ。
 主役の2人は格好良くてアジアのスターと呼ばれることはあるし、個性的な脇役陣も良い。それに待ち合わせ場所がどうしてスターバックスじゃなくて、ビルの屋上なんだ?なんて疑問も湧いたが、考えてみれば誰も目に触れない場所といえば、なるほど屋上がうってつけだと妙に感心してしまった。
 ド派手なドンパチなんか無くても、スリルを味わえる映画なんか充分に作れる見本のような映画。ガラス、エレベーター、文字、携帯電話といった道具が巧みに使われているのも演出の妙を感じることができてポイントが高い。いつも当ブログでは小難しい映画ばかり紹介しているような気がするが、今回は誰が観ても面白い映画としてインファナル・アフェアをお勧め映画として紹介しておこう。

インファナル・アフェア [DVD]
トニー・レオン,アンディ・ラウ
ポニーキャニオン




 


 

 
 

 

 


 

 


 

 


 

 

 


 
 
 


 

 


 

 



 

 

 

 

 

 
 



 

 
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映画 イヴの総て(1950) ショービジネス界の暴露ストーリー

2018年05月08日 | 映画(あ行)
 華やかな印象があるブロードウェイの舞台。しかし、外見とは裏腹にそこで繰り広げられる人間関係はドロドロ。そんなブロードウェイの裏側を描き切った名作が今回紹介する映画イヴの総て。利用できる物は何でも利用し、他人を踏み台にして成り上がっていく野心満々の女性が描かれている。
 その様子を見ていて、俺の身近にいる人間とソックリ過ぎて笑えた。古い映画ではあるが、卑劣な手段を使って成り上がろうとする人間が何時の時代にも存在することがよくわかる映画だ。
 
 早速だがショービジネスを描きながらも、他の世界でも見られるリアル過ぎるストーリーを紹介しよう。
 アメリカ演劇界の授賞式において、最高の賞を新進女優のイヴ(アン・バクスター)が受賞する。イヴは満面の笑顔を浮かべ、その場は満場拍手の嵐で埋められているのかと思いきや、数人がその授賞式の様子を不機嫌そうに見ている人たちが居た。なぜ彼らはイヴの受賞を喜ぶことができないでいるのか?それは8か月前にさかのぼる。
 女優志望のイヴは、毎日を舞台の楽屋口で大スター女優であるマーゴ(ベティ・デイヴィス)に会いたいと待ちわびていた。そんな努力のかいもあり彼女はマーゴと会って話す機会を得る。マーゴはイヴを気に入り自分の付き人にする。何かとよく気づくイヴをマーゴは信頼して、重宝していたのだが次第にイヴは本性を現していく・・・

 このイヴという女性の成り上がり方が凄い。田舎から遥々やって来たことや、マーゴの大ファンであることを話し、そして自分の不幸な生い立ちを訥々と話す。イヴの顔を見ていたら清純そうなので、マーゴだけでなく一部の周りの人も彼女に同情的になってしまう。しかし、観ている我々はやがて彼女の正体を知ってしまって唖然とする。俺なんかは嘘八百を並び立てて、大女優に近づく様子を見ていると、俺の脳裏にも心当たりのある人間が浮かんできた。
 そして、イヴの狡猾なところは自分の仲間をしっかり押さえていること。何人かはイヴの野心には気づいているのだが、それでもイヴを信用してしまって自分が気づかないうちに彼女の仲間になってしまっている人がいる。もう笑ってないと仕方がないと諦めるとするっか。
 しかし、イヴは仲間にした人間の良心につけ込んで裏切り、ついには大女優のマーゴを踏み台にして成り上がっていく。このサクセスストーリー?を見ているとショービジネスの世界の恐ろしさを知り、実はこんな奴は何処にでも居ることに改めて気づかされた。そして騙すよりも騙される人間でありたいと不本意ながら自分に言い聞かせるのだ。
 しかし、これだけのストーリーならば別に大したことはない。なぜなら俺の身近にもあるような展開なのだから意外性なんか殆ど感じない。この映画が名作たるゆえんはラストシーンにある。あまりにも意味深すぎて観ている者の想像力を掻き立てる素晴らしいシーンだ。俺もこのシーンのおかげで留飲を下げることができた。
 ショービジネスの世界に興味がある人にはもちろん観ることをお勧めするし、とにかく他人を騙したり、蹴落としてでも成り上がりたい人にはバイブル的な教科書としてお勧めできるし、素っ頓狂な映画は見飽きてリアリティのある映画が観たくなった人、名作とよばれる映画はどの様なものを言うのかを知りたい人にお勧めとして今回はイヴの総てを挙げておこう

イヴの総て [DVD]
アン・バクスター,ベティ・デイヴィス
ファーストトレーディング


 監督はジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。派手さは無いが職人気質を感じさせる映画を撮る印象がある。個人的には歴代美人女優のナンバーワンだと思っているエヴァ・ガードナーが見ることができる裸足の伯爵夫人、シェイクスピアの戯曲の映画化ジュリアス・シーザーがお勧めです。


 
 
 
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映画 オール・ザ・キングスメン(1949) 政治腐敗です

2017年11月03日 | 映画(あ行)
 衆議院選挙が終わったものの、やっぱり自公連立の圧勝。結果はさておき日本の政治家のダメっぷりが目に余る選挙として永遠に記憶に残りそうだ。いや、逆に議員のアホさが目立ちすぎて全く記憶に残らないか。
 しかし、政治家が自らの保身のために右往左往するのを見ているのは何とも気分が悪い。志が低い政治家が多すぎるのも問題だが、俗物以下の政治家を当選させてしまったり、生み出してしまう日本の国民も悪い。
 ただ目立ちたいだけで議員の職に就きたい人間を、この頃はよく目にしてしまうが、それでも政治家を志す人間の中には貧しい人を助けたい、困っている人を助けたい等、決して私利私欲のためではなく、大いなる理想を求めて政治家になろうとする人間も多いはず。
 ところが、なぜか多くの政治家は権力を握った途端に、クズ以下の人間になってしまうことがある。
 
 さて、そんな最もダメな政治家の見本のような人間を主人公にした映画が、今回紹介するオール・ザ・キングスメン。こんな奴いる?というぐらいのクズな政治家を描きながらも、骨太な政治ドラマとして見応えのあるストーリーの紹介を!
 若い記者であるハーデン(ジョン・アイアランド)は上司の命令で地方に飛び、そこでウィリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)と出会う。ハーデンはスタークが町に蔓延る腐敗、汚職、不正と戦う姿に感銘を受ける。
 ハーデンはスタークの取材をしている内に彼らには次第に友情が芽生えてくる。スタークは知事州選挙に立候補し、最初こそ敗れるものの三度目のチャレンジにしてようやく知事になる。選挙中からスタークの右腕として活躍していたハーデンだったが、スタークが知事に就いてから、権力の虜になっていくのを目の当たりにする・・・


 当初は真っ当なことを訴えるも、権力を握ってからが大悪党の主人公のスターク。自分の名前を付けた道路、大学を作り、恐喝、賄賂は当たり前。女に手を出し、人殺しにも手を染める。まるで何処かの国の独裁者を思わせる非道さ。善人から悪人に変貌するのは簡単。しかし、なぜこのような人間が民衆の支持を得て、権力者になってしまうのか。
 この映画のスタークもそうだが、弱者を煽り立てるポピュリズムからスタート。思いつくままに民衆受けすることばかり言っている政治家には気を付けないといけない。
 それに俺もそうなのだが、おだてられると直ぐに調子に乗ってしまう奴が多すぎる。私利私欲に走ってしまう政治家をその前にストップさせるのは実は民衆の責任でもある。実は本作においても、その民衆のレベルの低さが描かれている。圧倒的な権力を握ってしまった奴ににすり寄るその姿勢は、傲慢な人間を更に冗長させてしまう。

 よく政治家の中には『相手のことばかり批判している!』なんて文句を言っている奴がいるが、このような狭い器量しか持てないようでは、政治家の資質があるとは思えない。
 民衆は政治家をおだて過ぎてもいけないし、政治家たるものは堂々と相手の批判、意見に対して耳を傾けることが必要だ。そもそも金持ちになっているような政治家なんか存在してはいけないし、生存中に名誉を欲するような政治家なんかは俺に言わせれば最低だ。

 現在、私利私欲にまみれ、民のためではなく自分自身のために政治家及び議員になっている奴が多すぎる。馬鹿すぎる政治家を誕生させてしまう日本、そのような地域に住んでいる人々に、今回はお勧め映画としてオール・ザ・キングスメンを紹介しておこう。

オール・ザ・キングスメン [DVD]
ブロデリック・クロフォード,ジョン・アイアランド,ジョン・デレク,マーセデス・マッケンブリッジ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督はロバート・ロッセン。この人のお勧めはポール・ニューマン主演のハスラー
です。


 

 
 

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映画 英国王のスピーチ(2010) リーダーシップの在り方がわかります

2017年07月30日 | 映画(あ行)
 二千六百年以上にわたり万世一系を貫く皇室を戴く日本人の俺からすれば、英国の王室なんかハッキリ言って見下している。しかし、そうは言ってもかつては(今でもそうだが)世界中に自治領、植民地を持ち、世界を支配した大英帝国の国王ともなれば、その威厳を自国民に見せつけなければならない。
 当然のことながら俺みたいに人の前でスピーチをするのが苦手で引っ込みがちな英国王では、多々あるそのような機会において自国民を大いに落胆させてしまうのは明らか。

 さて第二次世界大戦中において、猛烈な勢いでヨーロッパを席巻するナチスドイツと対峙しなければならない国難に見舞われることになった当時の英国王であったジョージ6世。ところが、この国王は吃音症であり、スピーチが大の苦手。彼は難敵を迎えるにあたり、自らの弱点を克服し、いかにして国民を鼓舞するようなスピーチを行ったのか。

 それではアカデミー作品賞を受賞するなど、アメリカ国民にも大いに受けられたストーリーの紹介を。
 1925年の大英帝国博覧会においてスピーチをすることになった英国王ジョージ5世の次男ヨーク公アルバート王子(後のジョージ6世)(コリン・ファレル)だったが、吃音症のおかげで大失敗。
 彼の妻であるエリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)は夫の吃音症を治すべく様々な専門医を探している内に、植民地オーストラリア出身の言語療法士であるライオネル・ローグジェフリー・ラッシュ)に行きあたる。
 ローグは平民でありながらも王族に対して全く臆することなく、しかもアルバートに対してニックネームで呼んだり、少々型破りな指導法を実践するなどで、当初はうまくいかなかった二人の関係だが、徐々に吃音症が治っていくにしたがい友情が芽生えだす。
 そして英国王に即位したばかりの兄エドワード8世(ガイ・ピアース)は、その座を捨てて少々問題ありのアメリカ人女性の元に走り、アルバートは否応なくジョージ6世として英国王に就くのだが・・・

 本作の主人公はジョージ6世だが、実はその兄のエドワード8世の王冠を賭けた恋の方が題材としては興味が惹かれるし有名なのだが、時に映画は大して知られてないような史実が取り上げられる。
 正直なところ、ジョージ6世が吃音症を克服して国民に向けて立派にスピーチできるようになるまでのストーリーと聞いても、スピーチぐらいで大げさな!というのが恐らく多くの人が思うところ。しかしながらダメ男が立ち上がる姿を見ているとハートが熱くなれる。
 世界中を見渡してもリーダー不適格な人間が、その国のトップに就いているのを多く見かけるが、本作を観ればどのような人間がリーダーとして国民の上に立つべきなのかが理解できる。更に、リーダーとして君臨することの大変さも理解できる。この映画を観終わった後に真っ先に思ったことは、俺にはリーダーとしての資質が無い、と言うこと。
 本作は歴史劇の部類に入るのだろうが、そのジャンルにありがちな堅苦しさはなく、なかなかユーモアがあったりする。
 最後のスピーチは俺が聴いている限りでは、それほど大したことを言っているようには思えなかったのだが、イギリスはその後にナチスドイツのヒットラー、ソ連の共産主義のスターリンといった独裁者と対決することになる。そのことを考えれば、スピーチの内容はともかくリーダーの強いメッセージを国民に伝えることの大切さを感じる。
 どこかの国の首相のようにミサイルを近隣に打ち込まれる度に、ほとんど同じ言葉の繰り返しでは、本当に国を守る覚悟があるのか?と思わざるを得ない。

 観る人によってはウヨクチックに感じる人もいるかもしれないが、英国王と平民との友情に色々と共感できるし、リーダーを支える人物の存在がいかに重要であるかも納得できるような描き方がされている。
 我こそリーダーに相応しいと思っている人、人前でも堂々とスピーチが出来るようになりたいと思っている人に今回は英国王のスピーチをお勧め映画として挙げておこう

英国王のスピーチ スタンダード・エディション [DVD]
コリン・ファース,ジェフリー・ラッシュ,ヘレナ・ボナム=カーター,ガイ・ピアース,ティモシー・スポール
Happinet(SB)(D)





 

 
 

 

 
 
 

 

 

 

 
 

 




 

 
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映画 オルフェ(1949) ギリシャ神話の現代版 

2017年06月10日 | 映画(あ行)
詩人、小説家、劇作家、画家としての顔だけでなく映画監督としても名が知られているジャン・コクトー。「天は二物を与えず」なんて言葉があるが、彼の前ではそんなデタラメな表現は通用しない。
 イケメンなだけが長所の俺にとって、多才でマルチな彼の才能は本当に羨ましい限り。映画監督としてはその作品数は少ないながらも、そんな中でも今でも名作として誉れ高い作品が今回紹介するオルフェ。幻想的かつマジックを見せられているような映像表現は観る者の心を魅了する。

 ストーリーはタイトル名から想像できるが、ギリシャ神話オルフェウスを下敷きに、現代版(そうは言っても昔の映画ですが)に舞台を置き換えた。
 そのギリシャ神話のストーリーに少しだけ触れておくと、愛する妻を亡くしたオルフェウスは黄泉の国から妻を連れて地上へ帰ろうとするが、黄泉の国の支配者であるハデスから戻る途中で絶対に妻を見てはいけない、と条件を出されるが・・・。

 まあ、絶対に見てはいけないと言われると必ず見てしまうもの。本元のギリシャ神話では、オルフェウスは悲惨な末路をたどってしまうが、コクトー版オルフェウスの結末は?それでは本作のストーリーの紹介を。
 文学青年たちが集まるカフェにおいて、詩人であるオルフェ(ジャン・マレー)も居た。その場に王女と呼ばれる女性(マリア・カザレス)と詩人セジェストがやってくる。しかし、程なくしてセジェストはバイクに轢かれて死亡。オルフェは王女に無理やり死体のセジェストを運ばされ、一緒に車に乗せられる。そして到着した場所でオルフェは驚くべく光景を目の当たりにする。なんと、セジェストは生き返り、王女と一緒に従者を連れて鏡の中に入っていく。
 オルフェは愛する妻ユウリディウス(マリー・デア)が待つ自宅に帰ってくるが、オルフェの心は妻よりも王女の方へ傾いていた。
 そして、ある日のことユウリディウスはバイクには轢かれ死亡。なぜかいつも附いてくる車の運転手のウルトビイス(フランソワ・ペリエ)のアドバイスを受けて鏡を通り抜け、ユウリディウスに会うために死の国へ行くのだが・・・

 なかなか笑えるのが黒ずくめ衣装の王女のドエスっぷり。命令口調で、いちいち男どもに指図する様子は混迷を続ける民進党の代表であるレンホーさんを思い出させる。
 鏡を通り抜けるシーンは本作が公開された1950年ということを考えると、けっこう驚けるし、死体が起き上がるシーンは今でもよく見られるトリックを使っているが、なぜか新鮮に感じた。
 そして死の国の場面は今見ても幻想的で、流石はジャン・コクトー。そのイマジネーションは同じ人間として嫉妬すら感じてしまう。
 コクトー自身が詩人なだけに、素敵なセリフがたくさん出てくるし、どうせ最後は悲劇で終わるんだろうと観ている最中もそのように思いながら観ていたのだが、良い意味で期待を裏切ってくれる結末は、喜びと悲しみ両方を感じさせる。
 ジャン・コクトーに興味を持っている人、ギリシャ神話に興味がある人、夢心地の気分になりたい人・・・等に今回はお勧め映画としてオルフェを挙げておこう

オルフェ [DVD]
ジャン・マレー,マリア・カザレス,フランソワ・ペリエ,マリー・デア,アンリ・クレミュー
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督は前述しているようにジャン・コクトー。今でも映画化されたりミュージカル化されている美女と野獣がお勧めです。






 

 
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映画 アメリ(2001) 幸せな気分になれます

2017年05月07日 | 映画(あ行)
 DVDのパッケージなどで見ると女の子の絵面がちょっと不気味に感じるが、実際に映画を観たらなかなか可愛いフランス娘。そんなパリジャンヌが周囲の人々を幸せにするために、パリ中を奔走するのが、今回紹介する映画アメリ
 今、気づいたのだが実はこのパリジャンヌと俺には共通点があった。それは自分が幸せになることを忘れて、周囲の人が幸せになるために行動していること。
 滅私奉公をモットーに生きている俺だが、時々俺の生き方って損しているよな~なんて思うことがある。しかし、本作を観終えた後、俺のような人間もこの世の中には必要だと実感することができた。

 さて、ちょっと生まれた環境が悪かったために人とのコミュニケーションが苦手になり、空想することが大好きな可愛いらしい女性主人公であるアメリ。そんな彼女がショボいいたずらを駆使しながらも周りを幸せな気分にするおとぎ話のようなストーリーの紹介を。

 フランスのモンマルトが舞台。両親の冷淡な性格や大きな勘違いのおかげで、学校に登校することもできなかったアメリ(オドレイ・トトゥ)。おかげで少女時代はひたすら孤独で、いつしか現実よりも自分が想像する空想の世界を好むようになり、そのまま大人になってしまった。たまに気晴らしですること言えば、近くのサン・マルタン運河で石を投げて水切りをすることぐらい。
 そんなある日のこと、ひょんなことをきっかけにアメリの運命を変えるようなことが自宅で起きる。それ以来アメリは、悩んでいたり、悲しんでいたり、いじめられている人々を人知れず喜ばすことに生きがいを感じるのだが・・・

 可愛らしい外見、ピュアな気持ちを持っているオドレイ・トトゥ演じるアメリを見ているだけでも俺なんかは胸がキュ~ンとなってしまうのだが、独特な映像表現、カメラワーク等のビジュアル面でも惹きつけられるし、時々放たれるギャグも、この監督らしいブラック・ユーモアが炸裂していて、かなり笑える。
 アメリが手を差し伸べる人といっても、自殺しそうになるほど困っている人を助けているわけではない。そのまま放っておいても今まで通り生活できる人ばかりであり、実は何の助けも要らない人ばかりに手を差し伸べている感すらある。しかもアメリの行っている事は決して自分に恩返しとして返ってこないことを彼女は知っている。でも、本作を観終えた後に幸せな気分になるのはなぜだろう。

 実は幸せって小さな喜びから得られるものであり、ごく日常的な出来事の中にも幸せを見つけることができるのだ。ちなみに本作はフランス本国では大ヒットしたが、日本でも大ヒットした。このような映画がヒットするということは、まだまだ日本という国には希望があるということだ。
 そうは言っても私利私欲にまみれた人間が日本にもたくさん存在する。すぐに恩返しを求める人間を多く見てきたが、そういうのを露骨に目の当たりにすると、本当に嘆かわしい。
 本当に困っている人を助けるのならば、恩返しを求めるのではなく、誰かが言っていたが恩送りでなければならない。
 自分の善意ある行動がなぜ報われないのかと悩んでいる人、金持ちになることが幸せだと思っている人、笑いと感動の両方を求めている人、何だかとっても素敵な気分になりたい人・・・等に今回はフランス映画のアメリをお勧め映画として挙げておこう

アメリ [DVD]
オドレイ・トトゥ,マチュー・カソヴィッツ,ドミニク・ピノン
パンド


 監督はジャン=ピエール・ジュネエイリアン4の監督でもあるが、独特の世界観のストーリー展開を見せてくれる監督。ロスト・チルドレンデリカテッセンミックマックがお勧めです。 


 

 


 
 
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映画 アメリカン・スナイパー(2014) 伝説の狙撃手の自伝映画

2017年04月23日 | 映画(あ行)
 イラク戦争でアメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズの狙撃手として160人もの敵を射殺し、伝説と呼ばれた男であるクリス・カイルの自伝映画が今回紹介するアメリカン・スナイパー。伝説と呼ばれるだけあってその腕はピカイチ。2キロ先の相手でも狙い撃つ凄腕だ。
 それだけに戦場では味方にとっては非常に頼りになる英雄として崇められ、俺がアメリカを守るんだという使命感からせっせと敵を撃ち殺す。ところがある日のこと、今日もいつも通りに照準を定めて狙撃銃を構えていると、ふと自分の行動に疑問が生じる。果たして俺のしていることは本当にアメリカを守るためなのか?と。
 父親から教えられたことを信念として行っていたことが、音を立てて脆くも崩れ落ちていくその姿から、そこには伝説も無ければ、英雄も存在しない。伝説と呼ばれたアメリカンな男であるクリス・カイルの精神崩壊は、古き良きアメリカの価値観そのものを問いかける。

 善悪の境界線を明確にする難しさを、あらゆるテーマで描き続けるクリント・イーストウッド監督。そのテーマ性は本作でも遺憾なく発揮され本国アメリカでは保守とリベラルで論争が起こった。観る人によっては賛否両論真っ二つに別れ、また人間の二面性を考えさせられるストーリーの紹介を。
 愛国心に駆り立てられ海軍に入隊し、厳しい訓練をクリアしたクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)はやがて特殊部隊ネイビー・シールズの狙撃手としてイラク戦争に派遣される。戦闘場面で味方が撃たれそうになっているのを、いち早く察知して逆に敵を狙撃し、多くの仲間を救ってきたクリス・カイルは伝説と呼ばれるようになる。その一方で、敵からは悪魔と呼ばれ、彼自身の首に18万ドルの賞金を掛けられる。
 しかし、彼には戦場での大活躍とは別にアメリカ本国に置いてきている家族との間に次第に溝が出来はじめ、四度に渡るイラク派遣において次第に精神を病んでいき・・・

 父親から『羊を襲ってくる狼から守る番犬になれ!』、すなわち弱き者が襲われていたら助けられる人間になれ!と言われるのだが、クリス・カイルはその言葉を実行し、俺もこのオヤジ良いこと言うね~なんて思った。しかし、ストーリーが進んでいくうちに、カイルだけでなく観ている我々も気付く。アメリカを守る使命感が強すぎて、すっかり家族を守ることを忘れてしまっていること。そして番犬どころか狼になってしまっていること。一人のスナイパーを描きながら、アメリカが抱えている問題を同時に描き出してしまうクリント・イーストウッド監督の手腕は凄い。
 人間の内面を辛辣に描くだけでなく、砂塵に巻き込まれながらの戦闘シーンもそこら中にあるようなアクション映画を凌ぐ出来栄え。緊迫感、悲壮感、迫力を大いに感じる。さらにはアメリカのテロ対策がドロ沼にはまってしまっている理由がなんとなくわかる。
 そしてこの映画の価値を更に高めているのがエンディング。こんな結末が待っていることは作っている側もわからない。時に映画は時代を先読みするが、さすがにこれは読めない。そして、このエンディングのおかげで本当に奥が深い映画になったし、俺個人としてだが感動させられた。
 80歳を超えても楽々と大傑作を世に送り出す映画監督クリント・イーストウッド。観終わった後も余韻に浸れる映画として今回はアメリカン・スナイパーをお勧めとして挙げておこう

アメリカン・スナイパー [DVD]
ブラッドリー・クーパー,シエナ・ミラー,ルーク・グライムス,ジェイク・マクドーマン,ケビン・ラーチ
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント




 
 
 

 
 
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映画 エンゼル・ハート(1987) オカルト風サスペンス映画です

2017年04月13日 | 映画(あ行)
 ビックリ仰天の結末と謳われるサスペンス映画は現在に至るまでたくさんあるが、正直なところ俺自身がそのような映画を観て驚いたことは殆んどない。なぜならそのようなオチはもう既に今回紹介する映画エンゼル・ハートで見せてくれているからだ。本作を初めて観た時はヘェ~!と驚いた。しかし、この映画を観てからは、他の映画でラストのどんでん返しを期待させられても、ア~、やっぱりね!で終了してしまう。しかし、今でもこのようなオチの作品が懲りずにドンドン出ているから、これから本作を観る人にとっては逆に驚けないかもしれない。だが本作には、西洋人の宗教観、悪魔崇拝、ブードゥ教の儀式、占いなどが薄気味悪さを感じさせるうえに、名優ロバート・デ・ニーロが登場時間は短いものの不気味な雰囲気を醸し出す。

 早速だがオカルト風なサスペンスであり、ホラー的な要素も感じさせるストーリーの紹介を。
 1955年、ニューヨークのブルックリンでしがない私立探偵をしているハリー・エンゼル(ミッキー・ローク)のもとに、弁護士を通じてルイ・サイファー(ロバート・デ・ニーロ)から調査依頼を受ける。それは失踪した戦前の人気歌手だったジョニーの行方を調べること。
 少ない手掛かりをもとにしてジョニーのかつての知り合いを訪ねて行くのだが、なぜか出会った人間が片っ端から殺害されてしまい、迷宮入りへ追い込まれそうになるのだが・・・

 水戸黄門が行くところに必ず事件が起きるように、ミッキー・ローク演じる私立探偵が出会う人物がことごとく殺されてしまう。また、殺され方がエグイ。しかも、ミッキー・ローク自身が何者かに追いかけられたりして、叩きのめされたりもする。
 それでもダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーの推理小説に登場する私立探偵ならば、真相を知るまでトコトン追求するが、この私立探偵は途中で降りようとする。いかがわしさを感じさせる宗教、占いが絡み、やっと見つけたぜ!と思った人が、次に出会う時はひどい姿で死体になってばかり。そりゃ~降りたくなる気持ちもよくわかる。
 しかし、笑えるのがロバート・デ・ニーロ演じる依頼人が、降りようとするミッキー・ロークに、頼むからジョニーを見つけてくれよ!と言いながら報酬金をドンと引き上げると、結局はカネに目が眩んでジョニー探しを続行してしまう。まあ、俺だったらどれだけカネを渡されてもやらんな。

 なかなかストーリーは複雑で、日本人には理解し難い宗教が絡んだりするので、ちょっとややこしく感じられるかもしれない。でも、途中で話についていけなくなってもラストで思い出させてくれるから、意外にわかった気分になれる。そして、結末だが驚くだけでなく、当時人気絶頂で格好良くて、俺もよく似てると言われたミッキー・ロークが泣き叫ぶシーンを見ると哀切も感じさせられる。
 音楽の使い方も印象的で、にわとり、扇風機、螺旋階段、エレベーターの使い方が巧みで不気味さを感じさせるし、エロシーンにおける描写も容赦なく血の雨を降らすように妥協というものが一切ない。戦前と現在、ニューヨークとニューオリンズ、俺とお前。時間、場所、人間が違うのに実はどこかでつながっていることを感じさせる構成もテクニックを感じさせる。
 ありきたりのサスペンス映画には飽きた人、ちょっと不穏なムードが漂う作品が見たい人、私立探偵の仕事に憧れている人、全盛期のミッキー・ロークを観たい人等にお勧めしたい映画として今回はエンゼル・ハートをお勧めしておこう。

エンゼル・ハート [DVD]
ウィリアム・ヒョーツバーグ
パイオニアLDC


 監督はアラン・パーカー。名作、傑作を多く残しているが、ここでは死刑制度をテーマにしたサスペンス映画ライフ・オブ・デビッド・ゲイルをお勧めとして挙げておこう。





 
 

  
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映画 泳ぐひと(1968) 海パン一丁で出ずっぱり

2017年03月17日 | 映画(あ行)
 変な奴を主人公にした映画は多いが、その中でもかなり突出しているのが今回紹介する映画泳ぐひと。この映画の主人公のオジサンは最初から海パン一丁の姿で登場し、最後までその格好で出ずっぱり。そりゃ~、タイトルが泳ぐひとだからと思いきや、確かにプールで泳ぐシーンは多いが、山の中や野原や自動車の通る道をその格好で走っているシーンが出てくる。一目変な奴だと感じるが、思いつきで言い出すことが更に周囲をドン引きさせる。さて、この主人公は海パン一丁で何をやらかそうとするのだろうか?

 さっそく単純ながらも非常にシニカルな内容に富んだストーリーの紹介を。
 ある夏の郊外にある高級別荘地において。海パン一丁の姿でネッド(バート・ランカスター)が林から現われる。そこはネッドの友人夫婦の別荘であり、夫婦は前夜のパーティーで疲れていて、夫の方はプールの側で横たわっていた。
 ネッドは友人夫婦と少しばかり会話をした後に、その場所から眼下に見渡せる景色を眺めて、アホらしくなるようなことを言い出す、「友人の家のプールを全て泳いで、自分の家に帰ろう」。自分の家にたどり着くまでに様々な人と出会うのだが・・・

 もっと簡単にストーリーの紹介をすると、知り合いの人の家に勝手に入って、勝手にプールを泳いで、自分の家まで帰るだけ。極めてシンプルなストーリーだが、隠されたテーマは非常に奥が深い。海パン一丁だけで現われる主人公が家に帰るまでに様々な人に出会うのだが、彼らの態度の様子が観ている我々になんだかおかしいぞ!と感じさせる。最初に出会った友人夫婦とは好意的に話しているのだが、後の方になるにつれて出会う人の態度が威圧的になってくる。この展開が意味するところは、欺瞞に満ちた今までの主人公の人生が音を立てて崩れていく様子だ。最後には恐ろしい現実を突きつけられるのだが、これが切ないというか、怖い。海パン一丁の姿でいるのが何を意味するか何となくわかる気がしてくるだろう。
 時々自らを成功者のように見せる人間を見かける。しかし、そういう人こそ案外幸せの仮面を被っているだけで、実際はボロボロだったということがバレている時が多い。実際に俺だって周りからは聖人君子のように思われているが、今までの人生を振り返るとまさに偽善者としての自分が浮かび上がってくる。まあ、最近は逆にアホなふりをして生きてる方が楽に感じているのだが。
 この主人公は年がいも無く女の子と一緒に走って嬉々としているのが気持ち悪く感じたり、どうでもいい様な目標を思いついて実行したり、偽りに満ちた人生を過ごしていたり、かなり痛い人間。しかし、コレって実は俺も大して変わらないじゃんと思い反省させられた。
 メンタルが弱っている時にお勧めできる映画ではないが、何時までも余韻に浸れる映画として今回は泳ぐひとをお勧めとして挙げておこう

泳ぐひと [DVD]
バート・ランカスター,ジャネット・ランドガード,ジャニス・ルール
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント





 
 
 
 
 

 










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