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世界中が絶賛し、日本においても1979年のキネマ旬報ベスト1位に輝くなど国内外で素晴らしい賞賛を受けた映画。そして映画史に名を遺す巨匠中の巨匠であるテオ・アンゲロプロス監督の作品であり、そんな多くの名作を世に送り出してきた彼の中でも最高傑作としての評判が高いのが今回紹介するギリシャ映画旅芸人の記録だ
4時間という膨大な上映時間をかけて、1939年から1952年の14年間のギリシャの激動の時代を描き切った映画。この映画を観終わった後は誰もが長時間の疲れを忘れて、ギリシャについてお勉強した気分になれる映画だ。
ギリシャ危機のニュースを見たり、聞いたりする度にあの国のイイカゲンな国民性が明らかになっているが、そんなノン気なイメージをぶっ飛ばすぐらいのギリシャ人が味わってきた悲劇を観る者に痛感させる。
ギリシャ全土を回る旅芸人の一座が客を集めて舞台を行おうとするが、イタリア侵攻、ナチスによる蹂躙、イギリスによる政治介入、王党派と共産主義による内戦、軍事政権による独裁等の背景のおかげで、まともに芝居を演じたり、見せることが出来ないストーリー。たかが旅芸人の一座なのに飛び交う銃弾が当たりそうになったり、時には本当に当たってしまったり。または軍の検閲に引っ掛かり危うく銃殺されかかったり、一座の中には銃殺されてしまう者が出てしまったり。なんだか戦争映画の雰囲気すら漂って来る時がある。
そして個人的に面白い設定だと思ったのが、旅芸人の一座の中でも対立があること。イデオロギーの違いによって密告が行われたり、内部で復讐が行われたり、お母さんが別の男と寝ていたり。まさに旅芸人一座そのものがギリシャという国を反映しているように見えなくもない。
旅芸人の一座の人数が多く、画面が暗く、しかも遠くからのショットが多く誰が誰なのかよくわからないのが難点。そして次々起こる政変、事件、対立などの多くの出来事を全て理解するのが困難。出演している俳優がカメラに向かって長い台詞で延々と説明してくれるし、更にミュージカル風にいきなり聴こえてくる歌の歌詞でも説明してくれる超親切な設計。それでも俺の頭ではギリシャで起こった出来事を整理するのは厳しかった。
その国の政治背景が絡む映画は、何の予備知識も無く観るよりは多少の知識が無いと全くの置いてけぼりを食らうことがある。よくテオ・アンゲロプロス監督の映画は難解だと言われるが、どうやら観る側の知識不足が一つの原因としてあるようだ。
ちなみに今回紹介した旅芸人の記録はひたすら明るく、楽しい映画を求めている人、感動したい人、大してギリシャの歴史に興味が無い人、忍耐力の無い人、そしてテオ・アンゲロプロスと言う名前にまるで心当たりの無い人には全く向かない映画。しかしヨーロッパ系のアート色の強い映画を求める人にはぜひお勧めしたい映画です
テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX I (旅芸人の記録/狩人/1936年の日々) | |
エヴァ・コタマニドゥ,コスタス・パウロウ,ヴァンゲリス・カザン | |
紀伊國屋書店 |
ちなみに監督のテオ・アンゲロプロスは映画史の名を遺す名監督の誉れが高いです。最近は3週連続でこの監督の映画を観ています。まだまだ今年中に彼の映画を観ることになりそうです。個人的にはエレニの旅はお勧めです。
ちなみに彼は今年の1月に交通事故で亡くなっています。現在のギリシャの姿を描いた映画を撮って欲しいと思ったりするのですが、非常に残念です。
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