人間の正義と良心を多くの作品で描き、観る者を気持ち良い気分にさせてくれるフランク・キャプラ監督作品群の中でも、とりわけ異色的な位置づけにある作品が今回紹介する映画毒薬と老嬢。本作はキャプラ監督にしては珍しいサスペンスであり、しかもブラックユーモアが炸裂していて、大いに笑える映画だ。
この映画に登場する2人の老姉妹のキャラクターが俺とそっくり。いつもニコニコして愛想を振りまく姿はどこから見ても善い人にしか見えず、ウィットに富んだおしゃべりは笑わせるし、訪れるお客さんには無料でワインを提供するなどオモテナシの精神を充分に備えていて、孤独で寂しそうな人間を放っておくことができない優しい性格は、何回も繰り返すがまさに俺と瓜二つ。あえて俺と異なる部分を挙げるとすれば、思いやりの度が過ぎて10人以上の人間を殺してしまっていることぐらいか。しかしながら、この老姉妹は全く反省していないどころか、悪いことをしたとも思っておらず、自分のやっていることが殺人ではなくて慈善活動だと大きく勘違いしている様子が笑える。
この老姉妹がずっと出ずっぱりだけの内容でも充分に面白いと思えるのだが、さらに次から次へと個性的なキャラをした奴等が登場する。
例えば、自分をルーズベルト大統領だと本気で信じ込んでいて、事あるごとに『突撃~』と叫んで階段を駆け上がっていく精神に異常をきたしている人、趣味に対しては熱いが仕事に対しては不真面目な警察、世界各地を放浪しているついでに人殺しをしているお尋ね者で整形の失敗を重ねてフランケンシュタインそっくりになってしまった怖~い男、その共犯者で顔の整形を担当している気弱なドイツ人医師など。そんな個性的な面々に囲まれてアタフタしてしまっている主演のケイリー・グラントだが、彼の周囲より目立とうとしているオーバーアクト振りがなかなか楽しい。
何だか変な奴ばかり登場している印象があるが、果たしてどんな内容の映画なのか簡単にストーリー紹介を。
ハロウィーンの日のブルックリンでの出来事。著名な演劇評論家で結婚することに否定的であるはずのモーティマ・ブルースター(ケイリー・グラント)はエビィ(ジョセフィン・ハル)とマーサー(ジーン・アーデア)の叔母姉妹が住んでいる豪邸の隣の住む神父の娘であるエレーン(プリシラ・レーン)と結婚、そして叔母姉妹の家を訪れる。
モーティマ(ケイリー・グラント)はその日にエレーン(プリシラ・レーン)とナイアガラの滝へ新婚旅行に行く予定をしていたのだが、叔母姉妹の家でとんでもないものを見てしまう。それは窓際においてある箱の中に詰め込まれていた死体。
実は叔母姉妹は変な理念を持っており、孤独で寂しさを抱えた老人を邸宅に誘い込んでは毒入りのワインを飲ませて殺してしまい、天国に送ってあげるという考えを持っていた。モーティマ(ケイリー・グラント)は周囲からはどれだけ褒めても褒め足りないぐらいの善人だと思われていて、自分もそのように思っていたのに人殺しをしていたことにビックリ。しかも、箱の中の死体は12人目の被害者であり、今までの殺害した死体は家の地下室に埋めているように、叔母姉妹が連続殺人鬼だったことにショックを受けて、新婚気分などぶっ飛んでしまう。
そんなショックに打ちひしがれている所に、20数年振りにモーティマ(ケイリー・グラント)の兄であり、正真正銘の狂人であり、連続殺人鬼であるジョナサン(レイモンド・マッセイ)がドイツ人医師のアインシュタイン博士(ピーター・ローレ)を伴って帰ってくるのだが・・・
なんだかおぞましい内容だが、次から次へと登場人物達が面白いことを言うので、観ている最中は怖さなど全く無い。ちょっと古かったり、いけてないギャグもあるが全編に渡って大爆笑の連続だ。叔母姉妹のすっとぼけたボケ振り、笑えるぐらい怖い顔をして登場する兄のジョナサン、そしてこの映画で唯一マトモな存在である可憐な奥さんであるエレーンなどに振り回されるケイリー・グラント演じるモーティマの大忙しの慌てぶりがとにかく笑える。
ちなみにこの映画は元々舞台劇の映画化であり、全編にわたり家の中のシーンが殆んどだが、次から次へと色々な出来事がたたみ掛けてくる展開はテンポが良くて楽しい。チョッとした意外な結末を知らされた時、実はそれってあんまり喜べないじゃん、と俺は思ったのだが、後味は悪くない。
フランク・キャプラ監督の作品でひたすら生きる気力が湧いてくる映画(『素晴らしき哉、人生』『スミス都へ行く』『或る夜の出来事』『群衆』『オペラハット』『我が家の楽園』など)しか観たことがない人にとっては新鮮な驚きを得られるし、フランク・キャプラという名前を聞いてもハァ~?としか思わない人にとってもきっと笑える。古い映画だという理由で敬遠されているとしたら本当に勿体ない映画毒薬と老嬢はお勧めです
監督はフランク・キャプラ。映画史に遺す偉大なる映画監督。彼のお勧めは上記に述べた通り。その中でも素晴らしき哉、人生!、或る夜の出来事は誰が観ても大いに楽しめる映画です。
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この映画に登場する2人の老姉妹のキャラクターが俺とそっくり。いつもニコニコして愛想を振りまく姿はどこから見ても善い人にしか見えず、ウィットに富んだおしゃべりは笑わせるし、訪れるお客さんには無料でワインを提供するなどオモテナシの精神を充分に備えていて、孤独で寂しそうな人間を放っておくことができない優しい性格は、何回も繰り返すがまさに俺と瓜二つ。あえて俺と異なる部分を挙げるとすれば、思いやりの度が過ぎて10人以上の人間を殺してしまっていることぐらいか。しかしながら、この老姉妹は全く反省していないどころか、悪いことをしたとも思っておらず、自分のやっていることが殺人ではなくて慈善活動だと大きく勘違いしている様子が笑える。
この老姉妹がずっと出ずっぱりだけの内容でも充分に面白いと思えるのだが、さらに次から次へと個性的なキャラをした奴等が登場する。
例えば、自分をルーズベルト大統領だと本気で信じ込んでいて、事あるごとに『突撃~』と叫んで階段を駆け上がっていく精神に異常をきたしている人、趣味に対しては熱いが仕事に対しては不真面目な警察、世界各地を放浪しているついでに人殺しをしているお尋ね者で整形の失敗を重ねてフランケンシュタインそっくりになってしまった怖~い男、その共犯者で顔の整形を担当している気弱なドイツ人医師など。そんな個性的な面々に囲まれてアタフタしてしまっている主演のケイリー・グラントだが、彼の周囲より目立とうとしているオーバーアクト振りがなかなか楽しい。
何だか変な奴ばかり登場している印象があるが、果たしてどんな内容の映画なのか簡単にストーリー紹介を。
ハロウィーンの日のブルックリンでの出来事。著名な演劇評論家で結婚することに否定的であるはずのモーティマ・ブルースター(ケイリー・グラント)はエビィ(ジョセフィン・ハル)とマーサー(ジーン・アーデア)の叔母姉妹が住んでいる豪邸の隣の住む神父の娘であるエレーン(プリシラ・レーン)と結婚、そして叔母姉妹の家を訪れる。
モーティマ(ケイリー・グラント)はその日にエレーン(プリシラ・レーン)とナイアガラの滝へ新婚旅行に行く予定をしていたのだが、叔母姉妹の家でとんでもないものを見てしまう。それは窓際においてある箱の中に詰め込まれていた死体。
実は叔母姉妹は変な理念を持っており、孤独で寂しさを抱えた老人を邸宅に誘い込んでは毒入りのワインを飲ませて殺してしまい、天国に送ってあげるという考えを持っていた。モーティマ(ケイリー・グラント)は周囲からはどれだけ褒めても褒め足りないぐらいの善人だと思われていて、自分もそのように思っていたのに人殺しをしていたことにビックリ。しかも、箱の中の死体は12人目の被害者であり、今までの殺害した死体は家の地下室に埋めているように、叔母姉妹が連続殺人鬼だったことにショックを受けて、新婚気分などぶっ飛んでしまう。
そんなショックに打ちひしがれている所に、20数年振りにモーティマ(ケイリー・グラント)の兄であり、正真正銘の狂人であり、連続殺人鬼であるジョナサン(レイモンド・マッセイ)がドイツ人医師のアインシュタイン博士(ピーター・ローレ)を伴って帰ってくるのだが・・・
なんだかおぞましい内容だが、次から次へと登場人物達が面白いことを言うので、観ている最中は怖さなど全く無い。ちょっと古かったり、いけてないギャグもあるが全編に渡って大爆笑の連続だ。叔母姉妹のすっとぼけたボケ振り、笑えるぐらい怖い顔をして登場する兄のジョナサン、そしてこの映画で唯一マトモな存在である可憐な奥さんであるエレーンなどに振り回されるケイリー・グラント演じるモーティマの大忙しの慌てぶりがとにかく笑える。
ちなみにこの映画は元々舞台劇の映画化であり、全編にわたり家の中のシーンが殆んどだが、次から次へと色々な出来事がたたみ掛けてくる展開はテンポが良くて楽しい。チョッとした意外な結末を知らされた時、実はそれってあんまり喜べないじゃん、と俺は思ったのだが、後味は悪くない。
フランク・キャプラ監督の作品でひたすら生きる気力が湧いてくる映画(『素晴らしき哉、人生』『スミス都へ行く』『或る夜の出来事』『群衆』『オペラハット』『我が家の楽園』など)しか観たことがない人にとっては新鮮な驚きを得られるし、フランク・キャプラという名前を聞いてもハァ~?としか思わない人にとってもきっと笑える。古い映画だという理由で敬遠されているとしたら本当に勿体ない映画毒薬と老嬢はお勧めです
毒薬と老嬢 [DVD] | |
ケイリー・グラント,レイモンド・マッセイ | |
ファーストトレーディング |
監督はフランク・キャプラ。映画史に遺す偉大なる映画監督。彼のお勧めは上記に述べた通り。その中でも素晴らしき哉、人生!、或る夜の出来事は誰が観ても大いに楽しめる映画です。
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