褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 霧の中の風景(1988) テオ・アンゲロプロス監督の映画です

2015年04月23日 | 映画(か行)
 今回紹介する映画霧の中の風景はギリシャが生んだ偉大なる映画監督であるテオ・アンゲロプロス監督の作品だ・・・と聞いて心が躍らない人には眠たいだけの映画かもしれない。実は俺も数年前に映画館でリバイバル公開されるのを聞きつけ、電車で1時間以上かかるところを駆けつけて観たことがあるのだが、我慢しきれず爆睡してしまった。そして、今回改めてDVDで観ることになったのだが、もちろん事前準備としてたっぷり睡眠をとってから観たことは言うまでもない。

 さて、この映画についてだがストーリーは実に単純。ギリシャのアテネからドイツへ、まだ幼い姉弟が見たことのない父親を探しに行く旅映画(ロードムービー)。観ている最中『あれっ、ギリシャとドイツって隣同士の国だったけ?』とずっと疑問に感じていたのだが、観終わってから地図帳を引っ張り出して調べたが、案の定と言うべきか隣同士の国であるはずがない。
 姉さんの方ですら、まだ小学生の高学年ぐらいの年齢(弟の方はまだ小学校にも行ってないか?)。そんな幼い姉と弟が2人だけで母には内緒で、いきなり国外へ出て行くとは無謀すぎるチャレンジであることが誰の目にも明らかであり、『可愛い子には旅をさせよ』という有名な諺を思いついた人もビックリしてしまうような旅。なんせ、金なんか持っているわけが無いので、タダで国際列車に乗ってしまうような褒められるチャレンジ旅行でもない。
 そもそも、なぜそこまでして見たことがない父親に会おうとするのか、ただ母親が鬱陶しいだけで父親に会いたいと思うのか、しかも父親が本当にドイツに行ったのかどうかも怪しいことが示される。とにかく旅がもたらす過酷な出来事は幼い姉弟にどのような経験をもたらすのか。そして姉弟は最後に父親を見つけることができるのか、それとも・・・、それでは簡単にストーリー紹介を。

 ギリシャ、アテネにおいて。母子家庭に育っていて、父親を見たことがない姉ヴーラ、弟アレクサンドロスは、母親から父はドイツに行ったと聞かされる。ヴーラとアレクサンドロスは父親を一目で良いから見たいと思っており、毎日の如く駅へ通いつめるのだが、流石に電車には乗れないでいた。
  しかし、ついに2人はある日のこといつも通り駅へ通っていたのだが、父親に会いたいという想いを我慢できずにドイツ行きの国際列車にタダ乗りしてしまう。2人は寝ているところを乗務員に見つかってしまい、途中の駅で降ろされてしまう。しかも、2人は警察に連れて行かれるのだが、それでも父親に会いたいという熱い気持ちは、幼き2人をひたすらドイツへ向かわせるのだが・・・

 見ていると2人の姉と弟は、まだ幼いからこそ無謀なチャレンジができたことがわかる。国境を越えるのにパスポートが必要なことも知らなかったのだ。そんな2人が旅の途中で出会う人間には悪い人間も居れば、良い人も居る。しかし、そんな出会いは2人の心理に様々な影響を与える。実はこの映画は、父を訪ねて何千里?というようなロードムービーの形態をとっているが、本当のところは2人の成長物語だと観る方が感動を得られるだろう。
 電車に揺られながら、本当にドイツに居るのか居ないのかわからない父親に語る台詞はなかなか感動させる。そして良い人代表として2人が出会う旅芸人一座の若者と姉ヴーラのやりとりも感動させる。かつて俺が本作を映画館まで観に行ったときに、寝てしまっている間にこんな感動的なシーンがたくさんあったのかと思うと何だかショックを受けた。
 そして、この映画は観ている最中も、観終わった後も考えさせるシーンが出てくるのも特徴だ。幼き姉弟が警察署を脱出するシーンは何だかお伽噺を見ているような気分に少しだけさせるし、結婚式らしき行いがされているところで馬が引きずられているシーン、海からでかくて指が欠けている手の彫刻が引き上げられるシーンなど非常にメタファー的な要素が入っていたりして、思わず作り手の意図するところはなんだったんだ?と悩んでしまいそうになる。

 そして美しくも儚さを感じさせるのがラストシーン。現実と夢想の境界線が非常に考えさせられるシーン。この世の中には相対するものがあくさんある。善と悪、生と死、子供と大人・・・等など。しかし、それらの区別する基準は実はハッキリしているものではなく、非常にボヤけている。生と死について述べると、昨日出会った時はあれほど楽しそうにしていた人が、翌日には自殺していたなんてことを考えると、生と死の境界線は実は難しい。
 現実なのか夢なのかハッキリわからないような結末から、前述したあらゆる対比がこの映画に描かれていたことに気付いた時に、俺はこの映画は傑作だと感じた。

 映像的にはギリシャって海が燦々としていて天気が良いと思っている人が多いと思うが、本作は全編にわたって天気が悪い。いつも足場が泥だらけで綺麗な靴で歩きたくない場面ばかり出てくる。なんでこんなに天気が悪いシーンばかりなの?と感じる人がいると思うが、これがこの監督のスタイルとしか答えようが無いと言ったところか。
 アンドレイ・タルコフスキー監督の映画で、どうして家の中なのに雨が降っているの?と聞くのと同じ類の質問だ。

 テオ・アンゲロプロス監督の映画が好きな人ならば、もちろん旅芸人の記録エレニの旅ぐらいは観ているだろう。そんな人が観れば、なかなか本作は彼の中でも異色的な作品として興味が持てる。たまにはハリウッドの娯楽色の強い映画よりもヨーロッパの芸術的映画を観たいと思っている人には、充分に睡眠をとってから観ることをお勧めしておこう

霧の中の風景 [DVD]
タニア・パレオロゴス,ミハリス・ゼーケ,ストラトス・ツィオルツォグロス,エヴァ・コタマニドゥ,アリキ・ヨルグリス
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


 この映画はBlu-rayもあったんですね
霧の中の風景 Blu-ray
テオ・アンゲロプロス,トニーノ・グエッラ,タナシス・ヴァルティスト
紀伊國屋書店


 監督は一昨年の交通事故による死が本当に惜しい世界を代表する映画監督テオ・アンゲロプロス。政治的背景を描くこの監督の映画は難解であり、ときどき普通の内容なのに3時間を超える作品もあったり、突拍子もなくビックリするようなシーンが現われたり、出演者に無名な人や素人を使ったりする時もあれば、有名な俳優を使う時もある等、非常に個性的な監督さん。お勧めは4時間を超える大作旅芸人の記録、3時間の大作エレニの旅は眠たくなりそうな時に、歌や掛け声が流れてきたり、でかい怒鳴り声が響いてきて、心地良く寝させないのでお勧めです。もちろん内容もいいです

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