褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 邪魔者は殺せ(1947) 瀕死になりながらの逃亡

2023年08月07日 | 映画(さ行)
 タイトルから想像すると、酷い内容の映画を想像してしまう。ちなみにタイトルの原題はOdd Man Out。意味は「残りもの、余りもの」「仲間はずれ」といったところ。個人的には原題の方もおかしいと思うのだが、もっとおかしいのが邦題の付け方。この映画のどこに邪魔者が居たのか?そして、殺せなんて命令している奴も出てこない。確かに主人公のバックボーンは決して褒められないが、なかなか最後は感動できるストーリーだし、人殺しをしているシーンはあるが、観ている間は主人公がそこまで悪い奴に見えない。むしろ、自分も怪我を負ってフラフラになりながら逃亡している姿に悲しみすら感じさせるストーリーが今回紹介する映画邪魔者は殺せ。そして本作が面白いのが単なる逃亡記録のような構成になっているのではなく、主人公が逃亡中に出会う最中に偶然にも居合わせた人々の様々な反応が人生を感じさせる。散々、悪事を働いているが、そのまま放って置けば死んでしまうような人間を目の当たりにした時、人間はどの様な行動を取ってしまうのか。高い賞金目当てに警察に突き出すか、それとも出来る限りの命を助けるために最善の努力をつくしてやるのか、それとも・・・

 内容だけでなく、映像テクニックにも感心させられるストーリーの紹介を。
 北アイルランドにおいて。ある部屋においてジョニー(ジェームズ・メイソン)を首領とする5人の男たちが組織の資金集めのために銀行強盗の計画を立てている。ジョニーは獄中に8カ月、脱獄して隠れて半年。1年以上もの間、外出していなかったジョニーを今回の強盗の実行部隊から外す意見もあったのだが、ジョニーはこの中ではリーダーだということもあり、頑なに降りることを拒んでいた。
 いよいよ銀行強盗を実行する。現金は簡単に奪えたが、逃げる段階でジョニーのブランクの長さが響く。ジョニーは銀行の職員に追いつかれてもみ合うことになるが、ジョニーは銀行員を射殺するのだが、銀行員の撃った弾を左肩に喰らってしまう。
 他の仲間が乗っている逃亡用の車にジョニーも乗ろうとするが、運転手が焦ってしまっているためにジョニーは殆ど車に捕まったままの状態で発車。猛スピードで走る車に乗り込めなかったジョニーは振り落とされてしまう。逃亡用の車に乗っていた仲間達が助けに行こうかとする間に、しばらく微動だにせずに倒れていたジョニーは急に立ち上がり、走って別方向へ逃げ出してしまい・・・

 北アイルランドを舞台にしてるのでこの組織はIRAだとすぐにわかる。時間にして16時から24時に至るまでの8時間のドラマが描かれているが、主人公は17時に負傷して、それから7時間も瀕死の状態で警察の目を避けながらの逃亡。しかも天気が雨が降り出し、終盤は雪が降り出すなど、地味なストーリーだがドラマチックな演出もなされている。
 7時間の逃亡劇といっても防空壕に隠れている時間や、倒れているところを心優しき人に拾われて家に運ばれたり、意識が薄らぐ中で辿り着いたところが酒場で閉店までビール付きで休憩させてもらったりで、ずっとフラフラになりながら血を出しながら歩いている訳ではない。しかしながら、次第に死が近づいていく様子が見てとれるし、彼を慕う綺麗な女性の存在に、愛は信仰を超えるほどの尊さがあるんだよな~、なんて思えたりする。
 本作が公開されたのが1947年ということを考えるとIRAの暴力革命に対する批判が込められているのが丸わかりだし、それでいて何処かテロリストに対する優しさを感じさせるのは何故だろう。音楽はドラマ性を高めるのに充分な役割を果たしているし、主人公の意識が薄らぐ中での幻を見るシーンの映像テクニックは非常に洗練されているし、他にも褒めたりない所がたくさんあるような気がする。
 サスペンス映画でありながら、観ていて色々な想いを起こさせるドラマ性がある。唯一の欠点はタイトル名だけ。非常に洗練された映画を観たいという人に今回は邪魔者は殺せをお勧め映画に挙げておこう

 監督はサスペンス映画の名匠であるキャロル・リード。映画史に遺る大傑作第三の男、これまたサスペンス映画の落ちた偶像がお勧め











 

 

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