褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 さらば冬のかもめ(1973) ロードムービーの傑作

2024年11月12日 | 映画(さ行)
 1960年代後半から70年代前半にかけてのハリウッドの映画はよくアメリカン・ニューシネマと呼ばれるが、今回紹介する映画さらば冬のかもめはまさにその年代にあたり、アメリカン・ニューシネマの傑作と呼べるだろう。そして本作は仲の良い組み合わせではなく、非常に訳ありの3人組のロードムービーの体裁をとっているところもアメリカン・ニューシネマらしさを感じさせる。アメリカン・ニューシネマに限らず、ロードムービーなんかも多く今まで撮られてきており、多くの傑作を輩出しているが、本作もその例に漏れない。
 ところどころではコメディタッチを感じさせるのだが、それよりも偉大なるアメリカが幻想だったことをロードムービーで描くことによって閉塞感みたいなものを感じさせる。

 古き良きアメリカの価値観が壊れたことを感じさせながらも、その中でもがき苦しむアメリカを見れるストーリーの紹介を。
 アメリカのバージニア州にあるノーフォーク海軍基地において、海軍の兵隊であるバタスキー(ジャック・ニコルソン)とマルホール(オーティス・ヤング)は、上司から新米兵士で18歳の少年であるメドウズ(ランディ・クエイド)をポーツマス海軍刑務所(ニューハンプシャー州)まで護送する任務を受ける。メドウズは40ドルの万引き未遂の罪で8年間の刑期を受けることになっていた。
 当初バタスキーとマルホールは5日間のミッション完遂の所をさっさと2日間で終わらそうと考え、残りの3日間を遊びまくろうと企んでいた。ところがメドウズを連れていく内に、次第に3人の仲は深くなっていく。まだ人生の楽しみを何一つ味わっていないメドウズのためにバタスキーとマルホールは色々と羽目を外してしまうのだが・・・

 万引きをしてしまう少年のメドウズだが、体はでかいがどこか抜けていて、反抗することを知らずに何でもハイハイと返事をしてしまうタイプの人間。たったの40ドルを万引きしようとしただけで刑期8年を言い渡されても素直に従ってしまう。そんな自分の殻に閉じこもり、怒りをもたないようなメドウズに対して腹を立てるのが、チョイワル風で気が短いバタスキー。バタスキーがなんとかしてメドウズを男にしてやろうと護送中にもかかわらず、色々といかがわしい所へ寄り道する件は結構楽しめる。
 そして木偶の坊のようであったメドウズは成長するのだが、その成長の結末があまりに悲しい結末を呼ぶ。そして全編を通して家族、モラル、夢、宗教、政治などが当時の本作が公開された1970年代前半のアメリカでは既に崩壊されてしまっていることを目の当たりにする。
 夢のかけらもなく、どことなく息苦しい映画だが、異なる性格の3人組によって織りなされるロードムービーは楽しさもあり、最後にはちょっとした友情の中に希望の光も見える。暗い中にほんの少しの明かりが灯されているような内容が好きな人に今回はさらば冬のかもめをお勧めに挙げておこう

 監督はハル・アシュビー。少年とおばあちゃんの奇妙な交流を描いたハロルドとモード 少年は虹を渡る、ピーター・セラーズ主演のチャンスがお勧め。






 
 

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