子どもの頃には、川っ淵を歩けば、氷柱がぶら下がっていた。冬の田には、何にもなくて、広い遊び場であった。藁ぐろに登り、崖を飛んだ。この時期には冬眠している生き物がほとんどで、安心してもいられた。夕方の陽が沈むまで、靴を泥んこにし、家に入ると冷え切った体を、炬燵に潜り込ませたが、次の日は風邪で学校を休んだ。
祖母は、川の淵まで行って、イタドリの根を掘って来る。すり鉢に擂粉木で練り潰し、喉に手ぬぐいで貼ってくれた。扁桃腺を持っていたから、高熱に朦朧としていたが、不思議と夕刻には治るのだった。白いご飯のお粥に、梅干が定番であった。村の雑貨屋に、母が行き、桃の缶詰を買い、一切れを食べさせてくれたっけ。
あの頃は、無医村であったように思う。町まではかなりな距離を、大八車に乗せて運ぶか、熱のある体を負ぶわれてであった。そうでなければ、ふらつきながらも歩く。これだと寝て入る方が楽であった。祖母は、藁に包んだ氷柱を、額に当てたり、口に入れて嘗めさせてくれた。冷たく甘く、とても美味しかったなぁ。
南極の氷などとは比べられはしないが、敢えて買いたいとも思わない。現在の故郷は、激変していて面影すらない。祖母が私にしてくれたことは、返してはあげられなかったが、思いを綴ることはできる。幼い頃の想いは、脳裏に焼きついているんですね。心の映像には、実に鮮明に映し出せるものでしょうか。
孟宗竹を、鋸で挽いて、鉈で真っ二つに割り、節を取って、片方を火で焙って曲げる。スキー板を作ってくれた。縄と針金で、足が入るようにし、両手には竹箒の柄を持っている。雪の降り積もる裏山から庭までの、斜面を滑って下りた。
祖母は工夫することの名人であった。春になって遊びに厭きれば、もう一度鉈鎌で、細かく割いて豌豆の手にする。そういうことのできる祖母であった。あの頃には何もなかった、と思っていたが、今よりは遙かに、伸び伸びと大らかな一時があったように感じてしまう。
孫を相手にしながら、してやれることの少なさに淋しくなるよ。先日も、孫の通う小学校で、『昔遊び』をしたが、ありきたりの遊びの相手で、少しがっかりしたよ。まあ、雪もなかったんだ。
校庭に竹で組んだ、大きな篭を置いて新聞を貼る。その上にビニールシートを被せて、その中で遊べるような仕かけも楽しいよ。新聞やダンボールは案外、温かいから暖房器具は置かないで、遊べるのがいいようにも思うけどな。ちょっとした創意工夫は、断然面白い、って考えないのかな?
使用後の竹は、燃やして洗剤になるし、消臭剤の効果もあって、環境にはちょうど最適だよ。物を大切に使うとか。再生することってのは、そういうことだと思うの。但し、竹は刺さったりすると膿んじゃうからね。
でも、枇杷酒に浸せば、直ぐに治るんだよ。扱いはきちんと説明し、繰り返し教えていかないと、人類は破滅につながっていくね。
漆や櫨がどれやら知らないで、触って大変なことになるより、うまく使うことを学んでおく方がいい。そういうのが昔遊びだって思うなぁ。
「銀河」と呼んだら、迷惑そうに振り仰いだ。ちょっと写させてよ。に冷たく応じた。
この後、廊下を走りご飯を食べに行った。
祖母は、川の淵まで行って、イタドリの根を掘って来る。すり鉢に擂粉木で練り潰し、喉に手ぬぐいで貼ってくれた。扁桃腺を持っていたから、高熱に朦朧としていたが、不思議と夕刻には治るのだった。白いご飯のお粥に、梅干が定番であった。村の雑貨屋に、母が行き、桃の缶詰を買い、一切れを食べさせてくれたっけ。
あの頃は、無医村であったように思う。町まではかなりな距離を、大八車に乗せて運ぶか、熱のある体を負ぶわれてであった。そうでなければ、ふらつきながらも歩く。これだと寝て入る方が楽であった。祖母は、藁に包んだ氷柱を、額に当てたり、口に入れて嘗めさせてくれた。冷たく甘く、とても美味しかったなぁ。
南極の氷などとは比べられはしないが、敢えて買いたいとも思わない。現在の故郷は、激変していて面影すらない。祖母が私にしてくれたことは、返してはあげられなかったが、思いを綴ることはできる。幼い頃の想いは、脳裏に焼きついているんですね。心の映像には、実に鮮明に映し出せるものでしょうか。
孟宗竹を、鋸で挽いて、鉈で真っ二つに割り、節を取って、片方を火で焙って曲げる。スキー板を作ってくれた。縄と針金で、足が入るようにし、両手には竹箒の柄を持っている。雪の降り積もる裏山から庭までの、斜面を滑って下りた。
祖母は工夫することの名人であった。春になって遊びに厭きれば、もう一度鉈鎌で、細かく割いて豌豆の手にする。そういうことのできる祖母であった。あの頃には何もなかった、と思っていたが、今よりは遙かに、伸び伸びと大らかな一時があったように感じてしまう。
孫を相手にしながら、してやれることの少なさに淋しくなるよ。先日も、孫の通う小学校で、『昔遊び』をしたが、ありきたりの遊びの相手で、少しがっかりしたよ。まあ、雪もなかったんだ。
校庭に竹で組んだ、大きな篭を置いて新聞を貼る。その上にビニールシートを被せて、その中で遊べるような仕かけも楽しいよ。新聞やダンボールは案外、温かいから暖房器具は置かないで、遊べるのがいいようにも思うけどな。ちょっとした創意工夫は、断然面白い、って考えないのかな?
使用後の竹は、燃やして洗剤になるし、消臭剤の効果もあって、環境にはちょうど最適だよ。物を大切に使うとか。再生することってのは、そういうことだと思うの。但し、竹は刺さったりすると膿んじゃうからね。
でも、枇杷酒に浸せば、直ぐに治るんだよ。扱いはきちんと説明し、繰り返し教えていかないと、人類は破滅につながっていくね。
漆や櫨がどれやら知らないで、触って大変なことになるより、うまく使うことを学んでおく方がいい。そういうのが昔遊びだって思うなぁ。
「銀河」と呼んだら、迷惑そうに振り仰いだ。ちょっと写させてよ。に冷たく応じた。
この後、廊下を走りご飯を食べに行った。
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