英国BBC主催で毎年行なわれるのがPromenade Concert。
通称PROMSを初めて観た。ロンドン、ロイヤル・アルバートホールで6週間にわたって行なわれるクラシック音楽の祭典らしい。深夜TVでやってたLast Nightの模様に釘付けになってしまった。いやぁ~音楽を愉しんでるなぁ。
年に1回のPROMSの歴史は112回にもなる。初代指揮者のヘンリー・ウッドは低価格で最高の音楽に提供しようと、立ち見にしたそうな。
グランド・フィナーレを飾るLast Nightは羽目を外した乱痴気騒ぎをすることで知られる。会場はユニオンジャックの旗やウェールズなどの旗が振り回され、サッカー場のようなホーンも鳴らされ、口笛、歓声…なんだこりゃと思ったが、聴衆は体を上下させながら音楽を楽しみ、オケやコーラス隊も実に楽しそうである。
クラシックというと、きちんと座り静かにマジメに聴かねばならんという日本のファンに比べ、なんと自由でなんと成熟した聞き手なんだろうか。こうでなくてはクラシックの裾野は広がっていかない。日本の音楽教育は道を間違えた。
もう一つ、PROMSとはなんとすごい英国のナショナリズムの場だろうか。エルガーの「威風堂々」に、「希望と栄光の国よ、自由の母よ、いかに褒め称えよう、自ら生まれた国を」と声をそろえる何万という聴衆。「ブリタニア」であり「エルサレム」であり、建国の精神に満ち溢れる歌。ラストは腕を組んでの「Auld Lang Syne(蛍の光)」となる。自国の名前にGreatとつける感覚はわからぬが、国威発揚大いに結構ぢゃないか。この国には国民歌謡ともいうべき歌が多い。「ホームスイートホーム」「ロンドンデリーの歌」もそうだ。「全ての労働者を呼び集めて」という行進曲も初めて聴いて、胸が熱くなった。
ひるがえって、日本には国民が一つになれる歌がない。誰も作ろうとしてこなかった。そのことに悄然とする。やっぱり町人国家なのだ。国連常任理事国なんてなるべき国ではない。君が代…?国家はまぁよしとしよう。英国国家だって大体同じようなことを歌っている。その他に第二国家と呼べるようなものがあるか?
米国にはアーヴィング・バーリンの「God Bless America」や「Beautiful America」などがある。ウッディガスリーには「This Land Is My Land」がある。フランスには革命時の「ラ・マルセイエーズ」がある。
日本には国民統合の象徴となるものがない。そういうものを戦後の民主主義は反動の名の元に見向きもしてこなかったではないか。守るべき国土、変わらぬ故郷の山河、父祖…そういうものがあったはずだ。Promsを観て感じたのは、その根幹に微動だにしない宗教観が貫かれているということだ。我々は強大な力を持つ…神よさらに力を与え給え。我々は立ち上がる、神のご加護の下…たえずこうなる。
そこが何にもない日本はどうすればいいのか。単純に国家神道を復活せよと言うのではない。ああいうのは勘弁してほしい。だが根幹が空疎、統合の象徴がスカスカでは国民の歌なぞ持ちようがないぢゃないか。いや、暗澹たる気持ちになってきたぞ。
ここに、PROMSの模様が。
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