蕎麦の世界で知られた達磨・高橋邦弘氏の蕎麦会が堺であった。
伝仁徳天皇陵近くにある大仙公園内の日本庭園。茶室が舞台だ。
全国でそば会を展開する高橋氏は釜など機材一切を積み、弟子連中も乗り合わせ、このバスでやってくる。達磨の名入り。
今回は、「高橋名人のそばと夢衆を楽しむ会」。かつての酒処堺の伝統をいま一度という願いをこめて去年生まれたばかりの酒。まったりとした酒と高橋さんの蕎麦を合わせようという試み。
私は出遅れたが、大勢のお客が詰め掛けた。よく手入れされた池水庭園の緑が目にしみる。
師匠の蕎麦は二八。八の蕎麦粉に対し、二の小麦粉でつなぎ、喉ごしのいい理想の蕎麦となる。野性味のある香りがいい。するすると喉を通ってゆく、清々しい蕎麦。勧められるまま立て続けに4枚。酒を5杯もいただいた。ちょいと伸びた蕎麦には酒をパッパッとかけるとツツッと解れる。
蕎麦を打っている時は声をかけるのも憚られる厳しさだが、終わると一転してこの笑顔。一茶庵で修行して東京南長崎で翁を開業。その後、山梨長坂へ居を移し、現在は広島の豊平町の山中に蕎麦道場をひらく。蕎麦会となると、各地で一本立ちした弟子達が店を休んで馳せ参じ、一心不乱に働く。それがまぁ見事なもんで、この日も静岡小邨、山梨翁、安曇野翁、なにわ翁(は前日)などなどが集まっていた。
御大自ら掃除もする。これだから、弟子達は走らなきゃいけない。
蕎麦を打ち終えると、酒のコーナーへ自ら酒をもらいに来ていた酒好き。怖いだけではこれだけの弟子は寄り付かない。蕎麦打ちが終わったら、VTRなどを販売するコーナーでにこやかにお釣りまで渡している。師匠、元気である。
右は堺の地酒「夢衆」の蔵元、名醸さかいの西條氏。かつて河内長野の「天野酒」の蔵元だった人物。体調を崩されていたが見事に復活し、大勢の客の中をスイスイと泳ぎ回っていた。この二人のタッグでこの蕎麦会が実現した。まだまだ若いモンの追随を許さず頑張っていただきたい。