偏見なのは先刻承知だが、コニャックやアルマニャックはどうも成金趣味みたいな気がして距離を置いてきた。味そのものよりも、応接間でガウン着て、葉巻くゆらせ片手でブランデーグラスをコロコロ転がしてる小金持ちのイメージがそうさせるのだ。そこへ行くとカルバドス、林檎のブランデーというのもなんか幸薄そうで、可愛いではないか。
寺町二条にある「バー・カルバドール」。ここでカルバドスを飲み較べさせてもらった。今までは、バーで仕上げに一杯さくっと頂いて帰る程度で、林檎の酒である以外、まったくもって認識不足。
まずは心地よく冷えたシードル。りんごジュースを発酵させた微発泡酒で、英国ではサイダーと呼ぶ。なんか甘ったるいお子ちゃまな味を想像していたが、キリッとドライで美味かった。爽やかな酸味があり、アペリティフねたに詰まったら、狙い目である。
最もポピュラーなカルバドス、ブーラール。フランスの北西にあるノルマンディ地方で採れる食っても美味くないりんごで作られるのがシードルであり、それをば蒸留し、樽で寝かせたものがカルバドスだ。中でもラベルにあるペイ・ドージュという地区のが別格。味わうならばストレートで、悪うはずがない。
こちらは同じノルマンディでもドメーヌもの。大規模でなく、りんご畑を持つカルバドス生産家の一本。マグナムボトルは日本ではなかなかお目にかかれない、バーテンダーの高山氏がフランスから抱きかかえて帰ってきたもの。香り豊かだった。
カルバドスにりんごジュースを足して寝かせたリキュール「ポモ・ド・ノルマンディ」。けっこう甘口なので、スキッとソーダ割りやオンザロックもよし。これならブランデー苦手という女性方にもいいだろう。
続いて、先ほどのドメーヌの40年ものというのを頂いた。コクと味わいが深い。咽喉の奥から鼻腔へヒリリと香りが抜けてゆく…
ノルマンディというと先の戦争で「史上最大の作戦」が行なわれた軍事的拠点でもあるが、葡萄がとれず林檎ばかりという、りんご追分のお岩木山みたいな処。誰もが知っているカマンベールチーズがここの特産なので、カマンベールと林檎をアテにカルバドスやるのもバッチグー。
バー・カルバドールには現在カルバドスが約110本。もちろん他の酒もあり。ジントニックなど丁寧な仕事だし、どの酒でも間違いない特選バーである。ぜひカルバドス、まずはストレートでお試しを。
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