西成区を南北にはしる、紀州街道。
その南の端に位置するのが、塚西。
帝塚山の古墳の西に位置することから、この名がある。
時折、チンチン電車(阪堺線)が往来する。
NHKカルチャーの講座「下町グルメさんぽ~天下茶屋篇」が終わったので、解禁とする。
ああ、ここに書ける日を待っていた。
昼の日中から、店は帝塚山マダムやら、西成マダムやら入り乱れて賑々しい。
おとっつぁんは社食やらコンビニ弁当などでお腹を満たしているというのに…、まぁよろし。
下町洋食というには、見事に先入観を裏切ってくれるだろう。
若い厨房スタッフたちが14~5人もいて、黙々と働いている。
ここは、住之江区の老舗「源ちゃん」出身の「Genji」。
その名前はつとに聞いていたが、ようやく来ることができた。
余裕を見て来たのに、乗り換えを間違えて堺まで行ってしまい、
慌ててUターンし、タクシーで昼営業のギリギリに滑り込む。ハァハァ・・・
無駄なカロリー使こてもた。
こっちは一人なので、カウンターに通される。
迷わず注文したのは、源氏弁当・十品。
これを頼むつもりで来た。
すっと、新聞が届けられる。
いいな、キレがある。
そんなサービスはミナミの「バー238」以来だ。
ほどなく届いたのが、これだ!
1…2…3…!
デデ~ン!! 源氏弁当(10品)¥2100 食のワンダ~ランドやぁ・・・
フレンチでいうところのムニュ・デギュスタシオン。
ちょっとずつ味見のできる小皿料理。
私みたいな口から生まれた口卑しい人間には、もう、何をかいわんや。
幸せすぎてなんだか怖い。
迷い箸も自由。こころゆくまで迷って下さい!
煮込みハンバーグのエッグソース、鱒の西京漬け・・・かな。
海老フライが2本。タルタルソースもつく。
しかも!10品揃えりゃいいってもんぢゃなく、ちゃんと熱いものは熱いことに感動した。
生春巻き、ウニのジュレ、ポテサラ、右上の小鉢はワナワナ震えながら忘れた。
熱々の海鮮グラタン、茄子の煮ものの上には新子。
説明してもらったが、これだけありゃ憶えられない・・・!
一気加勢に食べ、もちろん口の中をやけどしたグラタン。
10品と言いながら、実は11品。 一皿多くて文句言うヤツはいない。
基本、温菜5、冷菜5で構成するらしい。
オレならこれで、日本酒1合、焼酎1杯、ワイン白赤1杯ずつはいける。
下見という大義名分ゆえ、自主規制。
ごはんも美味い。
いい店はこういう小さな香の物まで大事にする。
漬物が美味い店はなんだって美味いといえる。
「おかわりお持ちしましょうか・・・」
オレの体格を見て、向こうから声をかけてくれる。
しかも! 出て来たおかわりには
ちりめん山椒が乗っかっているではないか。
不覚にも胸がジ~ンと来た。
どこの新婚家庭で、ここまで気の付くヨメがいるだろうか・・・!
食べ散らかしたあと。
ああ、洗いものが大変だ・・・と思う吾は、小物なりき。
小物けっこう。
シメはコーヒー。
これはお値打ち、満足なりき。
コースはなんと週替わり!
台北の「鼎泰豊」に負けじと、洋風の焼き小籠包を考案!
お隣のファミマの前や、日本橋オタストリートで販売もしている。
若い連中に常に刺激を与え活性化させ、チームをまとめて行く店主、元川篤さん。
まだ44歳の若さだから畏れ入る。
店主が「大阪の田舎」と言うがごとく、かなり来にくい場所ながら
誇りを持ってこういう店が頑張っていることに心強く思った。
大阪、自信喪失してる場合ではない。
うまいもんをガッツリ食って、さぁ、明日も生き抜こうではないか!!