平成24年5月 靖国神社社頭に掲示された遺書
富山県西砺波郡石動町出身 陸軍衛生軍曹 向川 敬昌 様 (26歳)
昭和20年5月17日 比島郡島ルソン島ラクラワン町にて戦死 合掌
お母様に遺されたお歌をご紹介させて頂きます。
ちりほどに心に残る何もなし今日限りの夕暮れのそら
今はただ怒りに燃へて夷(えみし)らを根こそ攘(はら)はむいのち捧げて
ご覚悟のお歌にお母さまのお気持ちはいかばかりかと心が痛みます。
今号にも全国から鎮魂の歌が寄せられておりますので、お目を通して頂けましたら幸に存じます。
藪入りは妹背の母を追ひのぼる山坂遠き日の道 奈良市 遺児男性
靖国の標準木まだ咲かず今年は春の訪れ遅し さいたま市 遺族女性
桜咲き靖国の春喜びの父も友との盃交せり 甲州市 遺児女性
靖国の遺児と呼ばれし遠き日よ老いて南の島を慰霊す 富士吉田市 遺児男性
黒潮の深く澄みたる海底に父いくとせも艦と眠るか 佐世保市 「鳥海」 艦長ご子息
戦争にほんろうされしを伝ふれば児らのどの目もうるみてをりぬ 青森県 遺児女性
戦場の父への思ひ重ね見る放映さるる歩兵の様を 大阪市 遺児女性
ビルマにて果てし夫へと杖をつき川越えゆきぬ九十九の母は 名古屋市 遺児女性
家族みな愛せし梅の老木に戦死の兄の面影の立つ 篠山市 遺族女性
戦死せし兄をひと目合ひたしと在りし父母偲び桜ながめて 京都市 遺族男性
朝あさに夫の写真を仰ぎつつ湯気たつ飯を供へて米寿に 常滑市 妻
南海に眠れる父へわが手持て白米のおにぎり一つを捧ぐ 千葉市 私