ワタクシ鈴木葉留彦は評論家1年生として右往左往し何が何だか分からないうちにシーズンが過ぎました。34歳の筆者としては歳の近いベテラン選手より若手選手と触れ合う方が若返る?気がします。そこで若手にスポットを当てて彼らの代弁者となりたいと思います。先ずは古巣・西武の選手から・・
小田真也(西武):左の横手投げという希少性を生かしたい
小田にとって今季は画期的なシーズンだった。阪神と日本一をかけた日本シリーズの出場登録メンバーに選ばれた。残念ながら試合には出場しなかったが現場の雰囲気を肌で感じられただけでも有意義であったろう。オリンピックではないが日本シリーズは参加することに意義があるのだから。その貴重な経験を来季に生かして欲しいと筆者は願う。それには先ず模索中の横手投げを完成させ自分のモノにしなければならない。シーズン開幕当初は未だ上手投げだった。だがしっくりこない。本人もだが周りの首脳陣も手応えを感じられずにいた。5月に入った頃、遊び半分で腕を下げて投げてみたところ見事にはまった。体の軸もブレず体重移動もスムーズになり制球力も格段に良くなった。
「横から投げた方がしっくりきました。永射さんを参考にした?いいえ自分で考えたフォームです(小田)」と永射投手を真似したと言われるのが不服のようで、投手特有の自尊心の高さ故の発言だ。投手という職業はこれくらい自我が強くないと務まらない。秋季練習の課題は一にも二にもフォーム固めだ。「今は昼・夜、関係ないっス。昼の合同練習後は夜食を摂ったら夜間練習でシャドーピッチングをみっちりやっています(小田)」と。私生活ではまだ新婚さんだが早く愛妻のもとへ帰りたい気持ちをグッと抑えて練習に取り組んでいる。
球界では左腕投手は貴重だが、それに横手投げという変則投法を加味すると更に希少価値が増す。先ずは左打者は絶対に抑えるという印象を首脳陣に植え付けることが大事。「日本シリーズでベンチ入りしてみて1球の重みを実感しました。工藤がバースに打たれた場面を目の当たりにして改めて1球で局面が変わってしまう怖さが分かりました。ただあの1球が悪いというのではなく、そこに行き着くまでの過程が大事。僕も来年こそああいった場面で起用される投手になりたいと思います。厳しい場面で抑えて初めて認められるんですから1球1球必死に投げたい(小田)」と決意を語る。" 第二の永射 " 誕生も近い。
仁村 徹(中日): " あっち向いてホイ " バッティングの魅力
私のように高校時代からプロ生活を終えるまで同じポジション(一塁)しかやってこなかった人間は他のポジションだったら違う野球人生を送っていたのでは、と時々考えてしまう。だから今回取り上げる仁村選手は実に羨ましく思えるのだ。高校・大学と投手をやり、その実力を認められてプロ入りして勝ち星も手にした。にもかかわらず投手から野手に転向するスリリングな野球人生を送っている。私からすれば何とも羨ましい限りだが本人はそんな呑気な気分ではないらしい。「初勝利もしたし投手に未練はありましたよ。簡単に野手転向なんて出来ませんよ。第一、野手の練習は本当に厳しい。それとチームプレーが大変。自分の事だけ考えてる投手とは大違いです。時間が幾らあっても足りない(仁村)」と語る。
東洋大学時代は " 東都のエース " とまで呼ばれた男。「仁村投手」にはその投手としてのプライドを捨てること以上に投手として過ごした4年間のブランクが今になって堪えるという。大学出の選手は3年がひとつの目途と言われている。来季がプロ3年目となる仁村に残された時間は余り無い。仁村は私と同じ埼玉育ち。東日本で育った人間が西日本で生活すると初めのうちは違和感がある。いわゆる " 水が合わない " というやつだ。私が太平洋クラブに入団して九州博多に行った時も食事が口に合わず体調を崩し、盲腸をこじらせて腹膜炎になるなど散々だった。その点では仁村は「大丈夫です。身体だけは自信があります。ダメなのは野球の技術だけ」と苦笑い。
食事など私生活は高校の同級生だった加代子夫人のサポートもあって万全のようだ。それはともかく1年間ファームでみっちり鍛えたお蔭もあり「守備だけなら宇野さんに負けない自信がある(仁村)」とキッパリ言い切った。しかし打撃に関しては残念ながら守備のように上達度が練習量に比例してアップしてくれないのが一般的なのだが、仁村は余人が真似できない天性のモノを持っている。それが " あっち向いてホイ " 打法だ。簡単に言うと体勢と打球方向が全く違うがヒットになる妙なバッティング。早大時代の松本選手(現巨人)がそうだった。ただしこれは球を捉える能力に問題はなく、少し矯正すれば大丈夫。三塁・仁村が一軍で見られる日は案外と近いかも。
岸川勝也(南海):ポスト門田に名乗りを上げた肝っ玉男!
若手がそれなりに育ってきた南海。次なる課題はポスト門田。南海の大砲不在の悩みは年々深刻化している。それを端緒に表したのが岸川選手の四番DH先発起用であろう。いくら門田が故障で欠場しているとはいえ、高卒2年目の岸川には荷が重すぎる。南海の大砲願望はここまで肥大化しているのだ。しかし岸川にしてみたらこれは千載一遇のチャンスで利用しない手はない。中モズでの秋季練習をする岸川に四番抜擢の感想を聞いてみた。「突然の起用?そうっスねぇ、僕は特に緊張とかしないタイプなんで当たって砕けろ精神で平気でした(岸川)」と来たもんだ。この若者は恐るべし強心臓の持ち主のようだ。
チームメイトによると「バッティングも豪快だけどそれ以上に肝っ玉が座っていて多少の事には動じない。先輩から注意されようが怒られようがカエルの面に小便ですよ」らしい。私は益々気に入ってしまった。今季は一軍で33回打席に立って安打は僅かに2本だけだったが、そのうち1本はホームラン。まさに当たって砕けろとばかり思い切りの良いスイングを披露した。「僕はちょっと変なんですよね。若いくせに変化球が得意で逆に直球に遅れ気味。バットのヘッドが体の内側に入り過ぎて一瞬遅れてしまう。今はスイングの矯正中です(岸川)」と話す。
33打席で5三振というのは長距離砲としては少ない方で、それだけ本人が言うように変化球に対応できている証拠であろう。打撃は磨けば光るモノを持っているのだから問題はやはり守り。20歳の若さで守る所がなく指名打者で試合に出るしかないようではいささか情けない。「今は一塁と三塁両方の守備練習をしています。ただ昨年に肩を痛めた影響で満足な送球ができませんでしたが今は段々良くなってきました。とにかく守りの特訓をして何処を守っても大丈夫なようにしたいです。代打じゃ4打席回ってきませんから」と本人も守りの重要さは心得ている。佐賀の実家近くには九州では有名な裕徳稲荷があり岸川も毎年お参りしている。来年の願掛けは全試合出場しかあるまい。
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